大ヒットシューター『Space Marine 2』開発者、「PvPvEはちゃんと作るのが至難の業」なので作りたくない。PvPとPvE別々の今のままでいく

『Warhammer 40,000: Space Marine 2』のゲームディレクターがインタビューにて、本作に「PvPvEモード」を実装する予定はないことを明かした。ゲームデザインにおいてPvPvEを上手く形にするのは至難の業だという。

Warhammer 40,000: Space Marine 2』(以下、Space Marine 2)のゲームディレクターを務めるDmitry Grigorenko氏は海外メディアMP1stのインタビューにて、本作に「PvPvEモード」を実装する予定はないことを明かした。同氏によると、ゲームデザインにおいてPvPvEを上手く形にするのは至難の業だという。

『Space Marine 2』は、9月9日にリリースされたアクションTPSだ。Games Workshop社が展開するミニチュアウォーシミュレーション『Warhammer 40,000』を題材としている。舞台となるのは、宇宙進出を果たした人類がエイリアンや混沌の異次元から現れる悪魔などとの苛烈な生存競争を強いられる遠い未来。プレイヤーはパワーアーマーに身を包んだ人類のエリート戦士「スペースマリーン」として人類の帝国を守るための戦いに身を投じていくことになる。

本作にはストーリーを楽しめる「キャンペーン」のほか、最大3人までの協力プレイが可能な「PvE」、最大6対6の対人戦が行われる「PvP」の3つのモードが用意されている。なお本作を手がけるSaber Interactiveは協力プレイ対応のゾンビTPS『World War Z』などの開発元として知られる。本作のPvEモードなどでも、同スタジオの「Swarm Engine」によって描かれる敵の大群との戦いを楽しめる点も持ち味となっている。


本作は先行アクセス時点から高い人気を博しており、リリース後にはSteamでの同時接続プレイヤー数が20万人を突破(関連記事)。発売後1か月で売上450万本を記録したことも報告されている人気作だ。シーズン制での運営が計画されており、今後もマップや武器などさまざまな新要素が実装される見込みとなっている。


PvPvEを上手く作るのは「至難の業」

ただ、少なくとも現時点では本作に「PvPvEモード」や、PvPマッチの途中で敵NPCが出現したりする、といった要素が実装される計画はないという。MP1stのインタビューにて、ゲームディレクターのDmitry Grigorenko氏が語っている。同氏によるとゲームデザインにおいてPvPvEは、多くの開発者が求めるものの、上手く実現するのが非常に難しい「聖杯(holy grail)」のようなものだという。同氏は多数のスタジオがPvPvEを追求しているものの、その多くは失敗しているとの考えを示している。

Dmitry氏によれば、PvPvEというアイデア自体は聞こえが良いものの、上手く形にするには困難な作業になるという。というのも同氏は、他プレイヤーと戦っているのに、NPCの敵に背後から襲われるのは大きなストレスを伴うと考えているようだ。そのため同氏によれば、PvPvEを採用するほとんどのゲームではPvPの戦闘とPvEの戦闘があまり同時に起こらないように調整されているとのこと。たとえばNPCの敵をマップ上の特定の場所にのみ出現させるといった工夫がとられているそうだ。そうした仕様のPvPvEモードは実装作業が複雑で、かつゲーム体験が大きく変わるため、現時点で『Space Marine 2』に実装する計画はないという。


人気ジャンルでありつつも

PvPvE要素を売りにするゲームは近年増加を見せているものの、Dmitry氏の指摘したようにバランス面で苦戦を見せる作品もある。たとえば直近ではカプコンが2023年7月にリリースした恐竜シューター『エグゾプライマル』において、恐竜の大群と戦うPvE面は評価を受けつつも、勝敗を決める後半戦(ファイナルミッション)がPvPvEの戦闘がおこなわれる点に不評も寄せられた。ベータテスト段階でPvEとPvPの分離を望む声が寄せられ、結果としてPvP主体のルールを除外できる「ファイナルミッション優先設定」が実装されることとなった(関連記事)。Dmitry氏が述べるように対人の真剣勝負が敵NPCによる不意打ちで台無しになりうる、あるいは逆にPvEの戦闘を敵プレイヤーに邪魔されうるといった点は、PvPvEゲームにおいて賛否を招きうる要素になっているようだ。

ただPvPvEの要素を持つジャンルの中でも、脱出型シューターは特に人気のジャンルとなっており、FPS『Escape from Tarkov』やダンジョン探索ゲーム『Dark and Darker』のフォロワー的作品もさまざま展開されている。いずれも物資を獲得して無事に持ち帰れるかどうかといった緊張感などが特徴になっており、ストリーミング配信でも人気のジャンルだ。

ほか、フロム・ソフトウェアが手がける「ソウル」シリーズや『エルデンリング』においては、オンライン要素である「侵入」により、敵NPCとプレイヤーキャラクター同士が入り乱れて戦う一種のPvPvEのような戦闘が発生する点も特徴といえる。そうしたPvPvE要素が持ち味になっているゲームもあるわけだ。


上述したような脱出型のジャンルや「ソウル」シリーズのようなPvPvEでは「NPCあるいは他プレイヤーに背後から襲われるストレス」なども前提とした、緊張感のある対人バランスが想定されているとみられる。そのため戦闘が別の敵を呼び寄せうるといった点も戦略に繋がっているほか、ハードコアな作風のゲームでは理不尽な不意打ちさえ持ち味として受け入れられている側面もあるだろう。

一方の『Space Marine 2』は、先述した『エグゾプライマル』と同じく敵の大群と戦う爽快感あるPvE要素が特徴。そうしたPvEの持ち味も活かしつつPvPの面白さとうまく融合したPvPvEモードを実現する難しさも、実装が見込まれていない背景としてあるかもしれない。いずれにせよ開発者によっては、上手く実現する難しさから「PvPvE」要素をあえて避ける場合はあるようだ。ジャンルによっては流行も見せる「PvPvE」要素でありながら、本作においては形にするのが至難の業であるといった開発者の見解が示されたのは興味深い。

『Warhammer 40,000: Space Marine 2』はPC (Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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