X(旧Twitter)社、利用規約変更で「ユーザーのコンテンツをAIの学習に利用しうる」ことを明記。ゲームのスクショなど“不特定多数が投稿するコンテンツ”の扱いがどうなるかを巡り、波紋広がる


X(旧Twitter)社は10月17日、利用規約を一部変更し、11月15日より発効すると発表した。新たな規約のなかで、X社がユーザーの投稿したコンテンツを機械学習や人工知能モデルのトレーニングに利用しうる、と明記されたことが注目されているようだ。

今回の利用規約変更にて、注目されているのはXのサービス利用規約における「ユーザーの権利およびコンテンツに対する権利の許諾」の項目だ。Xユーザーが、同サービスを介して自ら送信、投稿、または表示するあらゆるコンテンツ(以下、ユーザーのコンテンツ)に対する権利を留保することを求める規約となっている。コンテンツの所有権は基本的にはユーザーにあるものの、たとえばX社がポストを通してユーザーのコンテンツを全世界のほかのユーザーから閲覧可能にしたり、サービス改善のために利用したりといったことを投稿者が認めるという取り決めだ。


今回の主な変更点としては、X社がユーザーのコンテンツに対して、どのような権利を有するのかについての記載がより詳細化されている(Xのサービス利用規約より一部抜粋):

■規約変更前
ユーザーは、このライセンスには、当社が、コンテンツ利用に関する当社の条件に従うことを前提に、本サービスを提供、宣伝および改善させるための権利ならびに本サービスに対しまたは本サービスを介して送信されたコンテンツを他の媒体やサービスで配給、放送、配信、リポスト、プロモーションまたは公表することを目的として、その他の企業、組織または個人に提供する権利が含まれていることに同意するものとします。ユーザーが本サービスを介して送信、ポスト、伝送またはそれ以外で閲覧可能としたコンテンツに関して、当社、またはその他の企業、組織もしくは個人は、ユーザーに報酬を支払うことなく(ユーザーは、ユーザーによる本サービスの利用がコンテンツおよびコンテンツに関する権利の許諾に対する十分な対価であることに同意するものとします)、当該コンテンツを上記のように追加的に使用します。

■規約変更後
お客様は、このライセンスに、当社が(i)お客様によって提供されたテキストやその他の情報を分析し、その他の方法で本サービスを提供、促進、改善する権利(生成型か他のタイプかを問わず、当社の機械学習や人工知能モデルへの使用やトレーニングなど)、および(ii)当社のコンテンツ利用規約に従い、サービスにまたはサービスを通じて送信されたコンテンツを他の企業、組織、または個人が利用できるようにする権利(サービスの改善、および他のメディアやサービスでのコンテンツのシンジケーション、放送、配信、リポスト、プロモーション、公開など)が含まれることに同意するものとします。ユーザーが本サービスを介して送信、投稿、伝送またはそれ以外で閲覧可能としたコンテンツに関して、当社、またはその他の企業、組織もしくは個人は、ユーザーに報酬を支払うことなく(ユーザーは、ユーザーによる本サービスの利用がコンテンツおよびコンテンツに関する権利の許諾に対する十分な対価であることに同意するものとします)、当該コンテンツを上記のように追加的に使用します。

このなかでも、ユーザーのコンテンツを、X社の機械学習や人工知能モデルのトレーニングなどに利用する権利を同社が有すると明記された点については大きな注目が集まっている。たとえばアーティストがコンテンツを投稿する場合に、機械学習・人工知能モデルの学習に用いられうるのではないかといった懸念が寄せられている。またプレイヤーがゲームのスクリーンショットをシェアするときのように、権利者以外が投稿したコンテンツがそのままX社の機械学習・人工知能モデルのトレーニングに利用される可能性がある点も、波紋を広げているようだ。

なおXにおける投稿は、現時点でもユーザーの設定次第でX社の機械学習・人工知能モデルに利用されている。というのも、Xのプレミアム/プレミアムプラス加入者向けには、xAIが手がける大規模言語モデルを利用した検索機能「Grok」が用意されている。新規約発効前となる現時点でも、デフォルト設定ではX上のポスト、およびGrokとのユーザーのやり取りが、Grokのトレーニングや調整の目的で利用される仕組みとなっている。またxAIと情報が共有される可能性もあるという。

この仕組みについては、ユーザー側が設定でオフにする、いわゆるオプトアウトも可能。一方新規約では、X社の機械学習や人工知能モデルのトレーニングなどにユーザーのコンテンツが利用されうる点が明記されたこともあり、引き続きオプトアウトが可能となるかどうかも注目されているようだ。


なお今回のサービス利用規約の変更とあわせて、プライバシーポリシーも一部変更され、「第三者の協力会社」とする項目が追加。ユーザーの設定に応じて、またはユーザーがデータを共有している場合、X社はユーザーの(プロフィールやコンテンツといった公開)情報を、第三者と共有したり第三者に開示したりすることがあるとされる。

そしてオプトアウトしない場合、情報の受信者は、Xのプライバシーポリシーに記載されている目的に加えて、たとえば、生成型か他のタイプかを問わず、人工知能モデルのトレーニングなど、独自の独立した目的のために情報を使用する場合があるとのこと。オプトアウトも可能と明示されているものの、新たにユーザーのコンテンツがX社以外の機械学習などに提供されうることを示す規約となるようだ。なお先述のとおりX社は現時点でも、Grokのサービスに関してxAIに情報を提供しうる仕組みをとっている。今回追加された「第三者の協力会社」とする項目は、従来のxAIへの情報提供について明示する新規約、といった可能性もあるだろう。

ユーザーのコンテンツが機械学習や人工知能モデルのトレーニングに利用されうるといった規約への懸念が生じた例としては、Adobeの規約変更が記憶に新しい(関連記事)。大きな波紋を広げた結果、Adobeはユーザーのコンテンツの機械学習データとしての利用について、画像生成などが可能な同社の生成AIモデル「Adobe Firefly」のトレーニングには用いないことを明言するに至っていた。

今回のX社のサービス利用規約およびプライバシーポリシーの変更でも、ユーザーのコンテンツが機械学習や人工知能モデルのトレーニングに利用されうる点に懸念が集まっている格好だ。第三者への提供についてはオプトアウトが可能と明示されているものの、先述したように権利者以外がコンテンツを投稿する場合もあり、個々のユーザーの設定だけでコントロールは難しいだろう。そうした点にも懸念は寄せられており、11月15日の新規約発効日までにX社側から規約変更について詳しい説明がおこなわれるかどうかも注目される。