『FF』シリーズ作曲家・植松伸夫氏、「ゲーム音楽はやめない」と明言。“引退宣言報道”にアンサー

Image Credit: 植松伸夫 conTIKI(コンチキ)プロジェクト〜『アカリガタリ』 on Campfire

『ファイナルファンタジー』シリーズの作曲家として知られる植松伸夫氏は10月16日、自身のXアカウントにて「ゲーム音楽の仕事から引退するわけではない」と強調した。この投稿の背景には、海外メディアによる“植松氏がゲーム音楽から引退するのではないか”との報道があるようだ。

植松氏は、『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめさまざまな楽曲を手がけてきた作曲家だ。スクウェア・エニックスにてさまざまなゲーム音楽を担当したのち、2004年に同社を退職。同年にSMILE PLEASEを設立し、2006年からはレーベル「DOG EAR RECORDS」からゲームに限らない音楽出版やコンサートの企画をおこなってきた。

一方で2021年にApple Arcade向けに配信された『FANTASIAN』において植松氏は、サウンドトラックの作曲を担当。同作は『FANTASIAN Neo Dimension』として、PS4/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch向けに12月5日に、PC(Steam)向けに12月6日に発売予定だ。このほか同氏は今年2月29日に発売された『ファイナルファンタジーVII リバース』のテーマソング「No Promises to Keep」の作曲を手がけるなど、引き続きゲーム関係の楽曲も手がけている。


今回、植松氏は自身のXアカウントにて「ゲーム音楽の仕事から引退するわけではない」と強調するポストを投稿。日本語と英語の両方に向けて投稿されており、“みんなの誤解”を晴らす意図があったようだ。同氏によると「自分の作りたい音楽を作る時間がほしいからゲーム音楽の仕事をちょっと減らす」とのこと。ゲームのサウンドトラックをすべて引き受けるのは拘束時間が長くなるため、主題歌1曲といったかたちで今後も(ゲーム音楽の)仕事を引き受けていくそうだ。


植松氏が上記のポストを投じた背景には、昨晩からおこなわれていた海外メディア報道があるようだ。報道においては、『FANTASIAN Neo Dimension』の海外公式Xアカウントにて投じられた動画での、植松氏のコメントが引用。「僕のゲーム音楽としての最後の作品となります」との発言が海外メディアを中心に“引退宣言”として受け取られたようだ。

ただ、植松氏は2021年の『FANTASIAN』完成時のインタビューでも、同作がサウンドトラックをすべて制作する最後のゲームになる可能性があり、ゲーム楽曲だけでなく人前で演奏する機会をもっと増やしたいと伝えていた(IGN)。ほか、今年2月にドイツのメディアZEIT ONLINEに向けて「ゲーム(サウンドトラック)全体の楽曲を作曲することはもうないと思う」と明かしていた(関連記事)。つまり先述の動画でのコメントでも、あくまでサウンドトラックすべてに携わるゲームとして『FANTASIAN』が“最後の作品”と表現されたのだろう。

*東京ゲームショウ2024にて9月28日におこなわれたトークステージでも、植松氏は『FANTASIAN』について「頭から最後まで携わる最後の作品になる」といったコメントを伝えていた

一方、動画でのコメントを受けて“ゲーム音楽からの引退宣言ではないか”といった記事が複数の海外メディアにより報道。そうした状況を受けてか、植松氏自身が「ゲーム音楽の仕事から引退するわけではない」とXアカウントにて強調するに至った。

なお植松氏は今回の投稿にて、同氏が率いるプロジェクトcon TIKIについて「お仕事くださーい!」とちゃっかり宣伝。con TIKIとしては今月10月6日および7日に、昨年に引き続き有観客でのライブが開催された。ほか植松氏は、音楽と朗読とイラストをあわせた作品「アカリガタリ」に向けたクラウドファンディングキャンペーンで大成功を収めるなど、幅広く活動を続けている。そうした活動と両立できるように、サウンドトラックとは違うかたちで今後もゲーム音楽に携わっていくのだろう。