販売不振が報じられたサバイバルホラー『The Callisto Protocol』の開発期間は、予定より「3か月半」も短くされていた。元開発者が厳しいスケジュールを振り返る
YouTubeチャンネルDan Allen Gamingは8月5日、ゲームクリエイターのGlen Schofield氏へのインタビュー映像を公開。この中で同氏は、自身が手がけたサバイバルホラーゲーム『The Callisto Protocol』の開発背景に言及し、当初の想定よりも開発期間が短縮されていた事実を明かした。
Glen Schofield氏は、業界歴30年以上になるベテランクリエイターだ。EAにて『Dead Space』などを手がけたほか、Activision傘下スタジオSledgehammer Gamesを共同設立し『Call of Duty』シリーズ作品の開発を指揮。その後Striking Distance Studiosを設立して『The Callisto Protocol』を手がけ、発売後の2023年9月に退職している。
『The Callisto Protocol』は、2320年の木星の衛星カリストに存在する刑務所を舞台にするSFサバイバルホラーゲームだ。カリストでは謎の感染病が発生し、その影響で刑務官も囚人も怪物に変異。この刑務所に服役する主人公ジェイコブは自身の生存を賭けて、またこの混乱の背景にある黒い秘密を暴くため戦う。
本作はPC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに、2022年12月2日に海外で発売。『Dead Space』シリーズを彷彿とさせる激しい残虐表現が含まれ、結果として日本ではCEROレーティングを取得できず、PC版を含め国内発売が全面的に中止されたことで当時話題になった(関連記事)。
本作の評価はというと、ホラーの空気感が表現され作り込まれたビジュアルなどはおおむね好評を得た一方で、ゲームプレイにおける単調さや目新しさの欠如などが指摘され賛否両論に。レビュー集積サイトMetacriticのメタスコアも68(PC版)と振るわず、“『Dead Space』の精神的続編”として期待された大型タイトルとしては物足りない結果となった。
今回YouTubeチャンネルDan Allen Gamingのインタビューに答えたGlen Schofield氏は、『The Callisto Protocol』の開発においてStriking Distance Studiosは、親会社KRAFTONから「やりたいことがあるならすべて取り入れて構わない」とし、余裕のある開発期間が与えられていたと振り返る。これを受けて同氏は、2021年のクリスマス休暇中にゲームデザイン上のアイデアを練っていたそうだ。
ただ翌2022年1月になって、その年の12月に発売すると突然告げられたという。Schofield氏は、当初想定していた作品に仕上げるには3か月半足りないうえ、期日までに完成させるにはより多くのコストがかかると指摘。こうした開発上の内部事情が、先述した本作の評価の低迷につながったのかどうかは分からないが、同氏にとっては苦い思い出として心に残っているようだ。
Schofield氏というと2022年に、スタッフに過酷な労働を強いているとも受け取れるSNS投稿をし批判されたことがある(関連記事)。結果的に同氏は謝罪したが、背景には上述した厳しい開発スケジュールがあったのかもしれない。ちなみに、本作の発売翌月にはリメイク版『Dead Space』がリリースされており、一部ゲーマーの間では、『Dead Space』よりも先に発売するために開発を急ぎ、その結果クオリティが犠牲になったのではないかと囁かれた。
KRAFTONは2022年度の業績発表にて、『The Callisto Protocol』はPC/コンソール分野での売り上げに寄与したと言及。ただ、地元韓国の各証券会社は本作の不振を指摘し、KRAFTONの営業利益予測を下方修正。また、本作の売り上げ本数は公表されていないが、KRAFTONは当初500万本を想定していたものの、2023年内にその半分以下の水準に届くかどうかとの分析も報じられた。その後開発元Striking Distance Studiosではレイオフが実施され(関連記事)、Schofield氏はスタジオを離れた。
今回のインタビュー(英語)ではこのほか、『The Callisto Protocol』ではオリジナル版『Dead Space』のおよそ4倍の開発費がかかったことや、コロナ禍が開発にも影響し一部コンテンツをカットしたこと、またSchofield氏が温めていた『The Callisto Protocol』の続編のアイデアなども語られている。