売上苦戦のサバイバルホラー『The Callisto Protocol』開発元にて32名のレイオフ実施。スタジオの優先順位を見直すため

 

サバイバルホラーゲーム『The Callisto Protocol』の開発元Striking Distance Studiosにて、32名のスタッフを対象にしたレイオフが実施されていたという。同スタジオ親会社KRAFTONが、米IGNを含め複数メディアを通した声明で明かしている。


『The Callisto Protocol』は、サバイバルホラーゲームだ。プレイヤーは木星の衛星Callistoを舞台に、刑務所からの脱出を目指しつつ恐ろしい秘密に迫っていく。本作は韓国のKRAFTONがパブリッシングを担当。開発は米国を拠点とするStriking Distance Studiosが担当している。

同スタジオCEOであるGlen Schofield氏は、過去にサバイバルホラーゲーム『Dead Space』にエグゼクティブ・プロデューサーとして携わった人物だ。そんな同氏が手がける『The Callisto Protocol』は、ホラーゲームファンからの大きな期待を集めつつ、昨年12月2日に発売された。なお日本国内では全面発売中止となった(関連記事)。

今回、Striking Distance Studiosのスタッフにレイオフがおこなわれたことが伝えられている。先日よりビジネス向けSNS であるLinkedInにて、元同スタジオの複数のスタッフらがレイオフを受けたことを報告。シニア環境アーティストだったMatthew Smith氏、プロダクションコーディネーターだったSebastian Marlow氏、アソシエイトプロデューサーを務めていたNora Falcon氏などが退職したことを報告しており、担当役職を問わず幅広いスタッフが対象となったようだ。


その後Striking Distance Studiosの親会社KRAFTONの広報担当者は、米IGNなどに対して本件に関する声明を明かした。声明によると、同スタジオでは今回32名を対象にレイオフが実施されていたという。また声明ではKRAFTONとStriking Distance Studiosは現在および将来のプロジェクトを成功に導くため、スタジオの優先順位を見直すことになったと伝えられている。その結果32名のスタッフがレイオフされることになったようだ。離職するスタッフに対しては再就職支援や退職手当の給付がおこなわれるといい、各スタッフの貢献に報いることが最優先事項とされている。

『The Callisto Protocol』はSchofield氏が手がけたこともあり、発売前から注目を集めていた。一方で発売後、本作には賛否両論の評価が寄せられている。レビュー集積サイトMetacriticでは本稿執筆時点でPC版のメタスコアが100点満点中68点、ユーザースコアが10点満点中5.4点。SteamDBで確認できるSteamユーザーレビューステータスは約2万8000件中好評率が約62%の「賛否両論」となっている。

レビュー内容としては、作り込まれたグラフィックや演出面はおおむね好評を受けている一方で、主に戦闘を中心としたゲームプレイについて“退屈である”といった批判の声が散見される。本作は傑作とされる『Dead Space』の再来としても大いに期待されていた。その高い期待値と実際のゲームプレイの落差も、低評価の一因かもしれない。そのほかPC版は発売当初に最適化不足も課題とされ、不評が寄せられていた。


さらに今年1月には韓国メディアK-ODYSSEYが、本作の売上が低迷していると各証券会社が報告しており、KRAFTONの目標株価までもが下げられる状況にあると報じた。同誌によれば、大信証券やサムスン証券など韓国の大手証券会社6社が先月から今月始めにかけて、KRAFTONの将来的な株価水準予測を下方修正していたという。中でもサムスン証券はレポートのなかで、売上の具体的な数字について分析。「KRAFTON側は500万本の売上を期待していたものの、現在の販売パフォーマンスから分析するに、今年中にその半分以下の水準に届くかどうかだろう」と伝えていたとされる。

K-ODYSSEYは、『The Callisto Protocol』の開発にあたっては約2000億ウォン(現在のレートで約220億円)と3年の期間が費やされていたとしている。多額の予算をかけて開発された本作ながら、評価の低迷のほか、売上不振に悩まされていた可能性も指摘されていたわけだ。本作に向けては6月28日にDLC「Final Transmission」が発売。ストーリーの完結を描く内容であり、現状告知されているロードマップにおける最後の追加コンテンツとなった。


つまりロードマップにおいて発表されていた展開を終えた節目に、Striking Distance Studiosのスタッフらのレイオフが実施された格好となる。ちなみに同スタジオでは、開発スタッフが不当に本作のクレジットから除外されたとの報告や、労働環境に問題があったとの指摘も報道されている(関連記事)。今後同スタジオが本作での“つまずき”を挽回し、スタジオを取り巻く懸念を払しょくできるかも注目されるところだろう。