韓国発・感情切り替えパズル『MONOWAVE』はかわいいだけじゃない。感情というテーマとパズルが合致している、若きアイデアに溢れたプラットフォーマー

『MONOWAVE』はパズルプラットフォーマーだ。“モノ”が感情を切り替え、周りに伝播させるシステムが特徴。開発を務めるBBBのメンバーは、なんと現役大学生なのだという。BBBのお二人にお話を伺った。

『MONOWAVE』はパズル型2Dアクションだ。感情の守護精霊である“モノ”が感情を切り替えたり、周りに伝播したりするシステムが特徴だ。韓国のインディースタジオBBBがPC(Steam)向けに制作しており、2025年上半期の発売を予定している。

本作はTOKYO SANDBOX 2024にブースが出展されており、試遊することができた。モノは4つの感情をつかさどる守護精霊。主にステージ中に生えている“源泉植物”に触れることで、それぞれの感情を切り替えることができる。そして感情ごとに色が設定されており、それぞれで異なる能力が解放される。黄色がジャンプの高さが上がる”幸福”、青色が縮こまって狭い所が通れる”悲しみ”、赤色が壁を蹴って登れる”怒り”、緑色がダメージを与えるトゲの上を歩ける(不安)、といった具合だ。

さらにモノは歌うことで、現在抱いている感情をフィールド上の他キャラクターに伝えることができ、その感情が更に他の動物キャラクターに伝播する場合もある。感情によってキャラクターの行動パターンが変わるため、自身と他者の感情を変えながらパズルを解いていくこととなる。また、キャラクターたちは現在の感情に基づいて色や表情が変わるため、感情というテーマでありながらも、直感的で分かりやすいビジュアルが特徴的な作品となっている。

感情の切り替えはもちろん、動物キャラクターとの相互作用も本作のゲームプレイを支えている。ワニは怒っていると攻撃してきて、悲しんでいるとモノを上方向に投げるため高台にのぼることができる。そして、悲しんでいるカメレオンは水を吐くが、喜んでいるとモノを飲み込み、反対方向に吐き出して長距離飛ばすのだ。感情がキャラクターにおよぼす作用はバラエティ豊かで、プレイヤーの想像力を刺激するような楽しさがある。

さらに、ステージ中にはモノが歌えず、他の動物を利用して感情を伝える必要のあるエリアや、触れると感情が強制的に切り替わってしまう霧などがあった。周りのキャラクターや環境に自身が左右されてしまうというのは、“感情”という本作のテーマに合ったギミックだと感じられた。


プレイ中は詰まることなく、サクサクと進むことができた。ステージ中は、感情を切り替えなければ進めない場面が多く出てくる。そのため、先に進むにあたってはどの感情が必要か、それはどこから得られるか、あるいは誰に感情を渡せばいいのか、という点を考える必要があり、”感情”が本作のプレイの軸となっている。軽いアクション要素はあるものの、主に移動や探索のためのものでシビアなジャンプは要求されなかった。

また、とにかくスケッチブック風のグラフィックがかわいく、この世界の中を歩いているだけでも楽しかった。ネオンのような色合いでありながら見づらさはなく、黒い背景が目にも心にも優しい印象を受けた。

本作ではモノと感情にまつわるストーリーも展開されるとのことだが、試遊版ではストーリーまで体験することはできなかった。本作はワールドマップから次のステージを選ぶステージクリア方式で、試遊できたのはワールド1のみ。難易度も控えめだったが、感情の切り替えというアイデアと、それを駆使してパズルを解くという本作のゲームプレイの土台は十分体験することができた。いかにこのアイデアが膨らまされ、プレイヤーの頭をひねることになるのか、製品版が楽しみな内容となっていた。


『MONOWAVE』を製作しているBBBのメンバーは、なんと韓国の西江大学知識融合メディア学部、アート&テクノロジー学科の現役大学生なのだという(Indie Freaks)。なぜ本作を作ろうと思ったのか、そして在学中に作ることの苦労は何か。本作の出展のために日本に訪れていたというBBBのお二人にお話を伺った。

──自己紹介をお願いします。

チェ・ジンヨン(以下、チェ)氏:
私はチェ・ジンヨンと申します。ゲームのシステム、およびレベルのデザインをしています。

イ・エギョン (以下、イ)氏:
私はイ・エギョンと申します。私はチームの中では主にマーケティングを担当してます。

──BBBのメンバーについて教えてください。

チェ氏:
メンバーは全員、西江大学でアート&テクノロジーを専攻している学生です。芸術と技術の融合を学ぶ学科で、ゲーム以外にも演劇や映画、現代美術などさまざまな題材を扱っています。テクノロジーの部分にも重きを置いているため、アートスクール(芸術系の大学)というわけではないです。

メンバーはほかにプログラミングと全体統括、音楽、コンセプトデザイン、アートにそれぞれ1人ずつ担当者がいます。メンバーの総人数としては現在6人体制で開発を続けています。

イ氏:
勉強と製作を同時並行でするのはあまりに大変だったので、主要メンバーは休学をしながら製作しています。ですので卒業制作などではなく、あくまでメンバーの趣味で開発を続けています。BBBは「ゲームを作ってみよう」という思いを持った、仲良しな人同士が集まって作ったサークルのような感じです。ちなみに、スタジオの名前にはAAA(トリプルエー)級ではなくともBBB(トリプルビー)級のゲームを作りたい、という意味がこめられています。


──『MONOWAVE』を作ろうと思ったきっかけはなんですか。

イ氏:

私たちは以前にも二つゲームを制作したのですが、いずれも小規模な作品でした。ですので、一度大規模なプロジェクトでゲームを作りたいという思いがありました。それがきっかけとなり、同じ大学で同じ専攻の人たちを集めて、本作を作ることになりました。

──『MONOWAVE』は感情とパズルプラットフォームを組み合わせていますが、そのアイデアはどこから来たのでしょうか。

チェ氏:

最初は火や水など、科学的な要素の変化を操って進んでいくパズルでした。ですが、開発の途中で「科学よりも感情の方が人に馴染みがあるのではないか」という意見が出てきました。そこで、ゲームシステムはなるべくそのままに、感情を切り替えるシステムに変更しました。

──本作に出てくる感情は喜び、怒り、悲しみ、不安の4つです。ネガティブな感情の方が多いですが、これはなぜですか。

チェ氏:

私たちの所属する学科での基本的な教えとして、何かを製作する際はテーマに関する先行研究や作品と接するのが大事、というものがあります。ですので、ゲームのテーマを感情に切り替えた時、まず感情について調べ物をいろいろとしました。そうして調べていくうちに、心理学者ポール・エクマンに関する論文を見つけました。エクマンは感情を悲しみ、 喜び、不安、怒り、恐れ、驚き、嫌悪の6つに分類しています。ほかの学者の資料を見ても、おおむね感情が3つから5つぐらいに分類されていたので、エクマンの議論から4つを選んでゲームに実装しました。その4つを選んだ理由についてですが、チームメンバーと話し合って「ネガティブな感情も大事なものだ」ということを本作のテーマにしたいという思いができたからです。

──最後に日本のユーザーに向けて何かメッセージはありますか。

イ氏:

日本に進出してまだ1ヵ月ぐらいですが、多くの方々に関心を頂けて嬉しく思っています。韓国国内よりも国外で多くの反響を得ており、本当にありがたいです。

チェ氏:

大学の友達同士で集まって作ってる小さなゲームですが、外国でも関心を持っている方がいることがとてもありがたいです。ぜひ日本のパブリッシャーさんと協力をして日本でも販売できればと思います。

──ありがとうございました。


『MONOWAVE』はPC(Steam)向けに開発中で、2025年に発売予定。

Rikuya Melichar
Rikuya Melichar

ゲームだいすき。独特の世界観や没入感があるゲームが好きで、気付いたら流行りのゲームを尻目にずっと遊んでたりします。

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