旅人交流まったりゲーム『たき火のそばで』開発者インタビュー。当初“過酷サバイバルローグライク”だった本作がなぜ“ほっこりゲーム”になったのか、開発経緯などを訊いた

Nordcurrent Labsは6月4日、『たき火のそばで(Fireside)』をリリースした。本稿では本作の開発元へのメールインタビューの内容をお届けする。

パブリッシャーのNordcurrent Labsは6月4日、『たき火のそばで(Fireside)』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/Nintendo Switchで、ゲーム内は日本語表示に対応している。

『たき火のそばで』は旅と休息をテーマとしたアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは旅の商人となり、魔法の存在する不思議な世界を探検。キャンプファイヤーに集まる人々とおしゃべりをしながら、物々交換を繰り返して旅を続けていく。手に入れたアイテムはたき火で料理したり、あるいは困っている人に渡したりすることができる。頼みごとをこなして人々の感謝の気持ちを集めるとソウルエナジーが手に入り、不思議な異空間にある壊れた家を再建していくことが可能。家を直せば、仲良くなった旅人を招くこともできる。そうして、たき火のそばや家で仲間と過ごす、穏やかな時間を楽しむ。


このたび弊誌は、本作の開発を手がけたEmergo Entertainmentにメールインタビューを実施。本作が誕生したきっかけやゲームシステムにこめられた狙い、開発陣がキャンプに抱く思いなどを伺うことができた。以下にその内容を紹介する。

──スタジオの紹介をお願いします。

開発チーム:
こんにちは、我々はEmergo Entertainmentです。Emergo Entertainmentはドイツ・バイエルン州の小さな町バイロイトに拠点を置くスタジオです。Carl-Philipp HellmuthとPaul Redetzkyが共同で創設し、2021年4月より同作の開発をおこなっています。本作『たき火のそばで』が我々のデビュー作となります。

──開発チームのメンバーについて教えてください。

開発チーム:
スタジオの共同創設者のCarl-Philippがデベロッパーとして開発をおこない、Paulがプロデューサーを務めました。またアーティストのLinus Gärtig、サウンドエンジニアのMatthias Meeh、ライターのIlona Tremlもチームの一員として本作の開発に取り組みましたが、Ilona は本作のストーリーを完成させたあと、今年1月からチームを離れています。

──本作『たき火のそばで』の特徴を教えてください。

開発チーム:
本作の特徴は、穏やかでゆったりとした空気感が楽しめるところです。かわいらしいキャラクターたちとストーリー、リラックスできる音楽とアートスタイルなどが織りなす穏やかな雰囲気が、本作の最大の特徴となっています。本作ではプレイヤーは、ヒーローとして壮大な戦いをおこなったりはしません。かわりに旅の商人として新たな友人を作り、たき火のそばで静かな時間を過ごすことになります。また、物々交換・料理・アップグレードといった要素が絡み合うゲームプレイもユニークなものとなっています。


──本作はたき火がテーマとなっていますが、たき火をゲームのモチーフとするアイデアはどこから来ましたか。開発チームは実際にキャンプでたき火をするのがお好きなのでしょうか。

開発チーム:
ええ、開発メンバーはみんな実際にたき火を囲んでくつろぐのが好きですね。実は本作のアイデアは、コロナウイルスのパンデミック中に開催されたGame Jam(ゲーム制作イベント)から生まれました。外出規制下の不自由な状況で抱いた、たき火の前で平和な時間を過ごしたいという願望が制作のきっかけとなったのです。またイベントのテーマが「結束(solidarity)」だったことから、ひとりではなく仲間とキャンプファイヤーを囲めるような作品を作ろうと思いました。

──開発当初、本作はサバイバル要素の強いローグライクゲームとして制作されていたそうですね。どのような経緯があって、今のかたちにたどり着いたのですか。

開発チーム:
開発初期段階の本作は現在よりもサバイバル要素が強く、食事や水をとらなければ旅が悲劇的に終わってしまうような作品でした。ですが開発を進めると、そうしたサバイバル要素はたき火のそばで過ごす心温まる時間とは相性がよくないと感じるようになりました。

そのため我々は本作を世界観から見直して、サバイバル要素をオミットしていきました。設定に魔法などの要素を取り入れ、たき火のそばでいろいろな人々と出会う穏やかな物語に焦点を当てることにしました。最終的に、当初構想していたサバイバル・ローグライクゲームとはかなり違う作品となりましたが、よりリラックスできるゲームを追求した結果です。

──旅とキャンプがコンセプトの本作に、家づくり要素があるのは興味深いです。どのような狙いがあるのでしょうか。

開発チーム:
プレイヤーには単にストーリーを進めるだけでなく、ゲームプレイ上でも物事が進展している感覚を得てほしいと思いました。自分の家を作っていくことは、本作のリラックスした雰囲気にあったかたちで、そうした達成感をプレイヤーに与えられる要素だと考えたのです。また友人たちが訪れ集まることができる場所を作るのは、旅のキャンプとはまた違う魅力を本作に加えることになりました。


──本作の主人公の商人はお金はあまり使わず主に物々交換を繰り返しますが、物々交換がゲームのメインとなっている意図は何ですか。

開発チーム:
個人的に、お金を使うのはあまり心温まる穏やかな体験ではないと思ったので、かわりに物々交換をゲームシステムのメインにしました。お金と違い、物はそれぞれ人によって価値が違うためキャラクターの内面を表現できますし、天秤にいろんな物を乗せて揺れ動く様子を見るのが楽しいと思いました。

──アート面ではどのようなことを意識されましたか。また、影響を受けている作品はありますか。

開発チーム:
『たき火のそばで』は、子どもの頃のよい思い出を再体験できるような作品にしたいと思いました。子どもの頃に、お気に入りのアニメやゲームをゆったりと楽しんでいたときの、あの穏やかな感覚を思い出せるようなゲームです。そのため本作では、懐かしさを感じられるようなグラフィックを意識しました。影響を受けた作品としてはアニメの「怪奇ゾーン グラビティフォールズ」「リック・アンド・モーティ」などがあげられ、またゲーム作品でいうと『Don´t Starve』『Castle Crashers』なども参考にしましたね。


──開発にあたって特に苦労した点はありますか。

開発チーム:
本作は当スタジオにとって初めてのタイトルですので、すべての点が挑戦となりました。ですがそのなかでももっとも大きな挑戦となったのは、ストーリーの執筆とローカライズですね。本作の英語で書かれたオリジナルのテキストは8万ワードを超えており、小説一冊分と同等以上の文量があります。そうしたテキストを書き上げながらも、一度の会話が長くなりすぎないよう全編にわたって配慮をしていくのは大変でした。

ローカライズにあたっては、翻訳だけでなく、ゲーム内への実装も苦労しましたね。日本語などいくつかの言語はゲームに新しくフォントを組み込む必要があったのですが、違うフォントはUIに影響を与えるため、表示が崩れないように調整する必要がありました。

──本作にはさっそく多くの好評レビューが寄せられています。プレイヤーからの反応についてはどのように感じていらっしゃいますか。

開発チーム:
正直にいって、デビュー作からこれほど高い評価を得られるとは予想していませんでした。プレイヤーのみなさんに楽しんでいただけているようで、本当によかったです。本作はユニークなコンセプトの作品で説明が難しく、魅力が伝わる一番よい方法は実際に遊んでいただくことだと感じています。ユーザーに受け入れられるかどうか不安でしたが、ポジティブな評価をたくさんいただけてとても嬉しく思っています。

──最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

開発チーム:
『たき火のそばで』に興味をもっていただきありがとうございます。皆さんが本作で、楽しくリラックスした時間を過ごしてくれることを願っています。ドイツの小さな町に拠点を置く我々にとって、遠く離れた国に住んでいる人たちが本作に興味を示してくださるのは、大きな喜びです。特に日本は我々もプレイしてきた多くの偉大なゲームを生んだ国ですから、喜びもなおさらです。これからも皆さんに楽しんでいただける作品を作れるよう、せいいっぱい取り組んでいきたいと思います!

──ありがとうございました。

『たき火のそばで(Fireside)』はPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/Nintendo Switch向けに発売中だ。ゲーム内は日本語表示に対応している。

Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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