『エノトリア:ザ ラスト ソング』はとにかくソウルライクのルールに忠実、でもいろいろ個性もあり。体験版で見えたもの

『Enotria:The Last Song(エノトリア:ザ ラスト ソング)』体験版を一足先にプレイ。本稿では先行体験版にてわかった『エノトリア』の特徴について紹介させていただこう。

デベロッパーのJyamma Games は日本時間9月19日、ソウルライクアクション『Enotria:The Last Song(エノトリア:ザ ラスト ソング)』(以下、『エノトリア』)を発売する。対応プラットフォームはPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam/Epic Gamesストア)。

『エノトリア』は、イタリアの伝承や文化に基づいた、陽光に満ちた危険で美しい世界を舞台としたソウルライクアクションRPGである。物語の舞台は「カノヴァッチオ」と呼ばれる世界。ここは世界そのものを停滞させる邪悪な演劇に囚われており、プレイヤーは「変化の仮面」としてこの世界を開放することとなる。

そんな『エノトリア』について、弊誌では先行体験版をプレイする機会をいただいた。体験してまず感じたことは本作がソウルライクの元祖たる『ソウル』シリーズの基本に忠実に、お約束を守って制作された堅実なタイトルであるということだ。しかし没個性なソウルライクかというとそういうわけではない。丁寧な作りのうえに、『エノトリア』らしさを加えて新しい体験を生み出しているのである。

本稿では先行体験版にてわかった『エノトリア』の特徴について紹介させていただこう。なお、先行体験版は英語のみの対応だったため、本稿のスクリーンショットは英語である。製品版は日本語ローカライズ+日本語フルボイスのため、英語が苦手な方もご安心いただきたい。


基本に忠実なソウルライク

筆者が『エノトリア』を遊んでまっさきに抱いた印象は、非常に堅実に作られたソウルライクであるという点だ。キャラクターが死亡したらその場に経験値を落とし、再度死亡するまでに回収しないと経験値を失ってしまう点や、道中はショートカットを開通させつつ、セーブポイントに到達しながらマップを進んでいく点は、ソウルライクのお約束を踏襲したフィールドデザインといえる。

レバーを引いてやってくるエレベーター(真四角で、中央には踏んで押すボタンがついている!)がある点などは、本家『ソウル』シリーズおよび『エルデンリング』を強く意識していると言って差し支えないだろう。本作は『エルデンリング』DLCのリリース日が公開されるにあたって発売日を2か月ほどずらす対応を取ったが(関連記事)、直球のオマージュがふんだんに含まれる本作をオマージュ元の発売とかち合わせるのは確かに得策ではないと筆者は納得した。


戦闘はじっくりと相手を見て、時には雑魚敵は無視して進むことも大事になってくる。パリィや回避で敵の攻撃をいなし、的確に攻撃を入れることで敵を倒す必要がある点や、攻撃や回避にはスタミナを消費するのでリソース管理を意識しないと敵に勝てない点、強敵はモーションを覚えて有効な対処を重ねていくことが大切となってくる点など、こちらもソウルライクの定石を押さえた作りになっている。

グラフィック面では、屍人的な雰囲気の敵やモーションは『ソウル』シリーズを彷彿とさせる。とはいえ、一面のヒマワリ畑やカラフルな旗のかかった街など、色鮮やかで生命力を感じさせるフィールドはソウルライクにありがちな暗鬱さとはかけ離れた雰囲気である。基本的な手触りはかなり『ソウル』シリーズや『エルデンリング』の影響を感じられる本作だが、そのうえで『エノトリア』らしさを加えようという気概が感じられるのだ。次項にて、『エノトリア』ならではの要素を挙げていこう。

仮面を切り替えて瞬時にビルドチェンジ

『エノトリア』では、強大な敵を倒すとその敵の仮面を手に入れることがある。演劇の中の世界で唯一「役割」が与えられていない主人公が、舞台上のキャラクターの仮面をかぶることでその特性を活かした能力を得ることができるのだ。仮面は最大3つまで設定しておき、戦闘中に十字キーの下を押すことで瞬時に切り替えることができる。


本作には「革新者の道(パス・オブ・イノベータース)」というスキルツリーが存在する。ツリーから取得したパークは仮面ごとに設定できるので、たとえば近接攻撃してくる敵には物理防御特化ビルド、状態異常攻撃をしてくる敵には状態異常対策ビルドを用意しておき、状況に応じて切り替えることで戦闘を有利に進めることができる。後述するリポスト攻撃も仮面ごとにセットできるので、多種多様なアクションを瞬時に切り替えながら敵を翻弄することができるのだ。

ビルド制のソウルライクにおいては、新しいビルドを試したいときは別キャラクターを作成して育成し直す必要があるものも少なくない。しかし、『エノトリア』の場合は用意しておいたビルドを瞬時に切り替えて、その時々の戦況に合わせて臨機応変に使い分けることができるのである。ビルドの幅が広いうえに付け外しが容易なため、さまざまな戦法を気軽に試せる点も個人的には高評価であった。

ゲージを溜めて使う強力な「リポスト」攻撃

ソウルライクといえば、敵の攻撃をよく観察し、ちょうど良いタイミングでパリィや回避をする戦い方だろう。がむしゃらにボタン連打をしているだけでは勝てないし、相手の攻撃を見切り、攻勢に転じるときの気持ちよさこそがソウルライクの醍醐味といっても過言ではあるまい。

『エノトリア』では、敵の攻撃をジャストタイミングでパリィしたり、攻撃によって敵の体勢を崩したりといった要因でゲージが溜まっていき、強力な「リポスト」攻撃を発動することができる。「リポスト」攻撃をすることで強力なバフを得ることもできるのだが、この効果は付けている仮面によって異なってくる。どの仮面に装着するかを悩むことでも、『エノトリア』ならではのビルドの楽しさを感じることができるだろう。他にもアクションでは、敵を攻撃することで魔法“科白”がチャージされて使えるようになる。使い勝手のよいステップや敵がひるむ斬りかかりなどを確認できた。

現実改変で先に進む

一見して先に進めないような場所でも、主人公は「アルドーレ」の力を操ることで足場を作ることができる。進行に困ったときは、魔法陣のある場所を探してみよう。そこで「アルドーレ」の力を使って“現実を改変”してみれば、新たな進路が見つかるかもしれない。フィールドにあるパズルを解くような感覚で先に進めるのは、『エノトリア』ならではの要素といえるだろう。


以上、『エノトリア』の先行体験版のプレイレポをお送りした。筆者は最初の大ボスを倒すところまでプレイしたが、歯ごたえのある戦闘はまさしく良質なソウルライクであり、「こういうのでいいんだよ」という感想がぴったり当てはまるタイトルであると感じた。そのうえでオリジナリティが光る部分もあり、要素をクローンしただけではない作品を制作しようというスタジオの気概のようなものも感じることが出来る作品であった。

デジタル版の『Enotria:The Last Song(エノトリア:ザ ラスト ソング)』は日本時間9月19日に、PS5/Xbox Series X|S/PC(Steam/Epic Gamesストア)向けに発売予定だ。

“Enotria” is a trademark of Jyamma Games S.r.l. All rights reserved.
“Jyamma Games” is a registered trademark of Jyamma Games S.r.l. All rights reserved.
©2024 Jyamma Games ©Enotria: The Last Song.
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Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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