人気宇宙SFゲーム開発元、“パブリッシャーが見つからず”苦渋のレイオフ実施。新作を40社に売り込んだものの、契約締結できず

KeokeN Interactiveは4月30日、スタジオのスタッフをレイオフすることを発表した。理由としては、同スタジオの手がけるプロジェクトのパブリッシャーが見つからなかったことなどが原因だという。

『デリバー アス マーズ(Deliver Us Mars)』などの開発元であるKeokeN Interactiveは4月30日、スタジオのスタッフをレイオフすることを発表した。レイオフの理由としては、同スタジオの手がけるプロジェクトのパブリッシャーが見つからなかったことなどが原因だという。


KeokeN Interactiveはオランダ・ホーフトドルプに拠点を置くインディーゲーム開発スタジオだ。Koen Deetman氏とPaul Deetman氏のふたりによって創設された。同スタジオは『Deliver Us the Moon』『デリバー アス マーズ(Deliver Us Mars)』の開発を手がけている。

両作は近未来を舞台とした、アクションアドベンチャーゲームだ。作中世界では地球の資源が枯渇してしまっていた。そのため世界は月をコロニー化し、月からエネルギーを確保していた。しかしある日地球との通信が途絶えてしまう。『Deliver Us the Moon』では、プレイヤーは宇宙飛行士となり、その事故の原因を調査し、地球を救うためのミッションを遂行することとなる。

同作はKickstaterでのクラウドファンディングキャンペーンを経てSteam向けにリリースされたのち、PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けにも展開されるなど人気作となった。そして続編となる『デリバー アス マーズ』が2023年にPC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けにリリース。前作の10年後を舞台に、主人公キャシー・ヨハンセンが盗まれたコロニー船「アーク」の奪還任務に臨む物語が描かれた。


そんな両作を手がけたKeokeN Interactiveの公式Xアカウントは4月30日、Koen氏の声明として開発チームのレイオフを実施したことを発表。声明によると、スタジオは開発予定のプロジェクトのパブリッシャーを見つけることができず、請負契約や共同開発などの別の選択肢もない状況にあるという。そのため苦渋の決断として、チームをレイオフせざるを得なくなったようだ。

レイオフにあたっては、過去10年にわたって同スタジオに勤めていたスタッフも対象となっているという。レイオフ対象となるスタッフについては、次の就職先を探す手助けもおこなっているようで、プログラマー、レベルデザイン、オーディオ、アニメーションなど複数分野の職種について、求人中であれば連絡してほしいとしている。


もともとKeokeN Interactiveは、3月13日にスタジオの現況を伝える動画を公開していた。投稿によれば、過去2年で200回を超えるプレゼンをおこない、同スタジオが手がけている5つのゲームタイトルを40社のパブリッシャーに売り込んでいたものの、契約を締結できなかったという。この5作品の中には、『Deliver Us』シリーズの新作となる『Deliver Us Home』も含まれていた。3月13日の投稿で同スタジオは、パートナーを探し続けてきたものの見つからなかったために、今後はSNS上でユーザーの拡散力を頼るとして、パブリッシャー探しを手伝って欲しい、と伝えていた。

その後KeokeN Interactiveは3月18日から3月22日にわたって開催されていたGDC(Game Developers Conference)にも参加。しかし今回の投稿ではGDC後にも何の成果も得られなかったとしており、スタッフを解雇せずスタジオを存続させるためのパートナー探しはうまくいかなかったかたちだろう。とはいえ声明ではKoen氏とPaul氏は「でも打ちのめされてはいない(but far from beaten)」との想いも伝えており、スタジオをまた少しずつ再建していくと表明。『Deliver Us Home』の資金調達のために、間もなくKickstarterでのクラウドファンディングキャンペーンに向けた準備を進める予定とのこと。

海外ゲーム業界では特に2024年に入ってから大規模なレイオフが続いており、Activision BlizzardやElectronic Artsといった大手企業・傘下スタジオでのレイオフが後を絶たない。そして今回のKeokeN Interactiveのように、新作のパブリッシャーが見つからなかったことにより、過去作で一定の実績をもつインディー(独立系)スタジオでもレイオフや新作開発の一時停止を余儀なくされた事例も見られる(関連記事)。パブリッシャーが新たな契約を締結することに慎重な傾向も垣間見え、企業やスタジオの規模に関わらず、レイオフの波はゲーム業界全体に波及しているようだ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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