レイオフ相次ぐゲーム業界で「親会社を離れる」スタジオも出現。独立したり、出資を受けて離脱する報道があったり
Toys for Bobは2月29日、同社が親会社であったActivisionから独立したことを報告した。また海外メディアBloombergはSaber Interactiveが親会社Embracer Groupを離れ、非上場企業となることを報じている。業界ではレイオフやスタジオ閉鎖などが相次ぐなかで、“親会社離れ”を見せる会社も現れているかたちだ。
Toys for Bobは米国のデベロッパーだ。1989年に設立され、1993年にCrystal Dynamicsにより買収。2000年に独立したのち、2005年からはActivision傘下のスタジオとなった。Activision傘下では「スパイロ・ザ・ドラゴン」が登場する『スカイランダーズ スパイロの大冒険』を皮切りに、アクションADVゲーム『スカイランダーズ』シリーズを開発。また2020年発売の『クラッシュ・バンディクー4 とんでもマルチバース』の開発を担当していた。
本日2月29日、Toys for Bobの代表であるPaul Yan氏およびAvery Lodato氏はActivisionから独立したことを報告した。今後は小規模ながらも身軽なスタジオとして原点に立ち返るといい、新作の開発も発足しているという。またActivisionからは独立するものの、同社および現在同社の親会社となったマイクロソフトはToys for Bobの独立方針に非常に協力的であったそうだ。またマイクロソフトとはパートナーシップの可能性も検討されているとのことだ。
なおマイクロソフトは1月に、Xbox 部門、ならびにActivision Blizzard、ZeniMax Mediaの従業員1900名をレイオフすることを発表。San Francisco Chronicle紙によると、この際にToys for Bobでも86名のスタッフが対象になったとみられる。親会社の方針による、大規模レイオフを受けてからのスタジオ独立となった。
そして本件のほかに、本日にはEmbracer Group傘下のゲーム会社2社の“親会社からの離脱”に関する報道が伝えられている。Embracer Groupは2023年6月、従来のビジネス戦略からの転換を掲げ、組織再編プログラムを発表。事業リスクの低減と収益性の向上を目指すとし、傘下のスタジオの閉鎖や売却を進めてきた。
今回海外メディアBloombergが匿名の関係者証言として伝えるところによると、米国のデベロッパー兼パブリッシャーSaber Interactiveは、個人投資家グループにより5億ドル(約750億円)の出資を受けて親会社Embracer Groupを離れ、非上場企業になる見込みだという。
そしてKotakuは、Gearbox Entertainment(以下、Gearbox)でも、同グループからの離脱が近づいていることを報じている。昨年には、Embracer Groupが同スタジオの売却を検討していることが報じられていた。当時GearboxのCCOであるDan Hewitt氏が社員に送付したとされるメールによれば、他社傘下への移管や独立を含めた検討がおこなわれていたという(関連記事)。
Kotakuによると、今回GearboxのCEOのRandy Pitchford氏が従業員向けに「スタジオの将来についての決定が下された」ことを伝えたとされる。従業員向けに3月中に詳細が発表されるとのことで、他社への売却あるいは独立が近づいているようだ。
なお同誌によればGearboxでは2023年、Embracer Groupからの予算の不足を受けて複数の新規プロジェクトが棚上げになり、『Borderlands』の次回作に注力する方針が決定されたという。また昨年にはGearbox傘下となっていたVolitionが、Embracer Groupの組織再編プログラムの影響で閉鎖となっていた(関連記事)。Gearboxは傘下入り以降、同グループの方針に振り回されてきた側面もありそうだ。
今年に入ってからもゲーム業界ではレイオフやスタジオ閉鎖のニュースが相次いでおり、親会社の決定に基づき、苦渋の決断としてレイオフを余儀なくされたというスタジオも見られる。たとえば先日2月27日には、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが同社の人員全体のおよそ8%にあたる約900名の削減に着手すると発表。PlayStation Studiosを含む世界中の社員が対象だという。Insomniac Gamesは声明でレイオフについて「スタジオにとって前例のない瞬間である」として無念さを伝えていたほか、London Studioは閉鎖となった。そうして業界全体が苦境にある中で、今回のToys for Bobのように親会社からの“独立”を選ぶ会社も現れた格好だ。