ある個人ゲーム開発者、「1人のユーザーレビューで過去最高の売上記録を達成した」と喜ぶ。約7000字の熱意たっぷりレビューは口コミ効果絶大
個人ゲーム開発者のBrent Arnold氏は、自身が開発しSteam上で販売しているショップ経営RPG『Final Profit: A Shop RPG』の売上について報告。Steamユーザーレビューおよび海外掲示板Redditにて本作の細やかな感想を述べるユーザーレビューが投じられた後に、本作は過去最高の売上を記録したという。
『Final Profit: A Shop RPG』はお店を経営しつつ探索していくショップシムRPG。オーストラリアの個人ゲーム開発者Brent Arnold氏が開発し、2023年3月7日にリリースされた。対応プラットフォームはPC(Steam)。
本作の舞台となるのはFaeという王国。この国の女王は、国の金融を食い物にしてきたものたちを金融面での競争で打ち負かして国の財政を守るという過激な計画を立てていた。しかしそのために実の娘に女王の座を追放されてしまう。プレイヤーはそんな元女王として、かつて立案した計画を実行するために、ビジネスの世界に入り、財を築き上げることとなる。
そんな本作について1月2日、Steamユーザーレビューおよび海外掲示板Redditに1件の感想が投稿された。投稿したOneHalfSaint氏は本作がもつ自動化要素に着目。本作は序盤は店舗経営が主体となるが、進行に応じて収入を自動的に得られるようになりサイドクエストなどの探索をおこなうことが可能となる。こうした特徴について同氏は、本作では自動化要素を別のジャンルのゲームに上手く組み込んでいると評価している。
一方で自動化要素を実際に体験するには時間がかかるという。そこでレビューで強くおすすめすることによりそうした要素を知り、魅力を感じる人や購入を決断する人もいるだろうと思いレビューを投じるに至ったとのこと。
7000字近くあるOneHalfSaint氏のレビューでは、先述の点のほかにもさまざまな要素について紹介されている。同氏は登場人物の行動や、プレイヤーの取りうる選択について、資本主義の論理が高度に反映されていると評価。全体的に魅力的なゲームプレイが体験できるといった好評を述べている。
このレビューには、本稿執筆時点でReddit上に60件ものコメントが寄せられ、一定の反響を受けている。投稿者と同様に経営シムとして評価する声や、レビューに“説得”され、実際に本作を購入した人も見られる。
そしてこの詳細なレビューの効果は売上に反映されたようだ。本作の公式Xアカウントは、レビューが投稿された日本時間1月2日の売上本数が発売日の1.5倍となり、過去最高を記録したと報告した。投稿ではレビューを残したユーザーに感謝を述べつつ、「Word of mouth is powerful(口コミは強力だ)」とコメントしている。
このように、ユーザーのレビューや反応によってゲームの売上が伸びる現象は、本作に限った事例ではない。たとえば昨年12月6日には、デベロッパーのinkleが手がけたスコットランドを舞台とした横スクロールアクション『A Highland Song』のプレイ映像をインフルエンサーのロッズ氏がX上に投稿。同作の山上を駈け抜ける疾走感や音楽面での魅力を述べた投稿が日本国内で広く拡散され、バイラル化を見せていた。
そして同作は日本語対応していないにもかかわらず、翌12月7日にSteamの日本での売上ランキングの38位にランクイン。英語のみ対応の本作ではあるが、日本での売上増加に伴い日本語対応についての要望が多く寄せられた。こうした反応を受けて同スタジオの公式Xアカウントは日本市場に関心を示したほか、弊誌に対しても日本語ローカライズを真剣に検討していると伝えていた。テキスト量の多さや作中のギミックなどによりローカライズには高いコストがかかり複雑になるものの、多くのサポートを受けており、どうにかやり遂げたいとのことだ(関連記事)。
特にインディーゲームは開発規模の大きいゲームに比べて、費用面などから大きなプロモーションを打ち出しづらい傾向があるだろう。そうしたタイトルにとって、作品の内容や魅力を広めてくれるSNS上のレビューや感想は、頼もしい宣伝となってくれるようだ。好きなゲームに出会った場合は、SNSなどでその魅力を伝えてみるのもいいかもしれない。
『Final Profit: A Shop RPG』はPC(Steam)向けに発売中だ。