ローカライズのLQAって、結局なんなの?LQAしなければゲームはどうなるの?

LQAとは一体なんなのでしょうか。LQAをしなければゲームはどうなるのでしょうか。いろいろと解説します。

アクティブゲーミングメディアの坂本です。普段はHPのブログや、Twitter、LinkedInの運営などを担当しています。AUTOMATONの運営会社である当社アクティブゲーミングメディアは、ゲームローカライズを軸にさまざまなサービスを展開しています。また、当社ではローカライズされたゲームの社会的な品質向上を目指しており、LQAの認知と理解を広げるため、開発者様やユーザー様に向けてさまざまな取り組みを行っています。今回はその一環としてこの場をお借りし、LQAについてご紹介したいと思います。

実は以前、AUTOMATONでもLQAを取り上げた際、反響が寄せられていました。
国内翻訳者が「ゲームのLQAの重要さ」語り反響呼ぶ。ゲームの“届き方”を左右する言語的品質保証とは

また、当社Twitterでも、度々LQAについて投稿しています。このツイートでは、実際のテスト項目を再現したクイズ形式を用いており、ゲーム開発者様や、一般ユーザー様、個人翻訳者様から回答をいただきました。業界内でのLQAへの関心の高さがうかがえます。ではLQAとは一体なんなのでしょうか。


LQAとは何か?


LQAはLinguistic Quality Assuranceの略語で、ローカライズのクオリティ(品質)の保証をするために重要な工程です。ローカライズのクオリティにおいては、ユーザー目線での判断が重要となります。不適切な翻訳や文法の間違い、文字化けやはみ出しなどは、満足度やレビューを大きく低下させる危険性があります。LQAはこれらの問題を特定し、修正するための重要なフィルタリングプロセスです。また、 LQAでは、対象言語のユーザーがいかにゲームを自然に楽しめるかを念頭に置いた、ユーザー視点での作業が不可欠になります。そのためには、実際にプレイしながらテストするLQAが必要です。

LQAの重要性

翻訳されたテキストをただ組み込んだだけでは、さまざまな問題が発生する可能性があります。たとえば「会話ウィンドウからテキストがはみ出している」「翻訳漏れ」「別言語の組み込みミス」などの問題が起こりかねません。勿論、そういった視覚的に判断ができる項目は、誰が見ても一目瞭然な問題だと言えます。

しかしながら、そんな問題を抱えたままのゲームが、ユーザーの手に渡ってしまっていることも度々見受けられます。プロダクトの評価に大きく関わってくるため、予算が少ない場合や個人開発者様の場合でも、せめて自身で簡易的なテストプレイを行うことが極めて重要かと思います。

一方、当社のLQAは簡易的なチェック項目のみならず、多彩な視点や文化面を踏まえたテストプレイが可能です。また、我々のLQAにおけるテスターの採用基準としては、第一に「各言語のネイティブであるか」。次に「ユーザー視点の有無」および「ゲームが好きであるか」と定めています。

なぜならば、当社のLQAでは対象言語の誤字脱字や、キャラのトーンの整合性、ゲーム用語の適否を判断するなど「言語的なテスト項目」と、対象地域で不適切になりうる文章や、表現の確認など「文化的なテスト項目」を実施しているからです。ローカライズ後のゲームには、これらの微妙なニュアンスの違いや、違和感を感じることのできるネイティブがテストプレイを実施することを当社では推奨しています。

言語的なテスト項目


普段ゲームをプレイしている上で、この日本語が妙だなと感じる機会があると思います。そんな項目をチェックしているのがこの項目です。文章での説明は理解し辛いため、ゲームのスクリーンショットを模した上記参考画像を用意しました。

画像内の言語的なテスト項目の例を挙げると「簡体字フォントの誤植による(戻る)の表記揺れ」「バッグかポーチか用語の統一性」「Left(残り)が(左)など誤訳」「翻訳漏れ」など、目に見えて分かるようで意外と見落とす項目です。

その他にも、力強いキャラのトーンがか弱いトーンに誤植されていたり、海だった地名が突然ビーチになっていたり、小文字が大文字になっていたり、送り仮名のミス(下記画像参照)など、細かい点でも言語的なバグがないかテストしています。

また、英語のLQAでよく見かけるのは、”U”が”A”に、”R”が”L”になってるなどのスペルミスです。どんなに言語能力が高いネイティブだろうと、ミスが起きないとは限りません。しかし、英語ではスペル一つ違うだけで大きく意味が変化するため、大問題に発展する可能性があります。不適切な表現による批判を避けるには、ちょっとした違和感を察知できるネイティブテスターによるLQAが必要だということです。

ちなみに、英語で面白いという意味である”Funny”の”U”を”A”とされたスペルミスは、スラングなどに用いられる危うい表現になります。それほど、たった一つのスペルミスが大きなトラブルを招きかねないのです。


文化的なテスト項目


次に、対象地域のネイティブ以外では気づきにくい文化の違いや、表現規制に抵触していないかをチェックするのがこの項目です。画像内の文化的なテスト項目の例を挙げると「飲酒の表現」「肌の露出」など。また、画像内では学生に思えるキャラの飲酒と記載していますが、外での飲酒も地域によっては表現規制対象になる場合があります。その他にも、攻撃時VFXの血しぶきなどの「流血表現」、手を真っ直ぐに挙げる「ハンドサイン」は一部地域で規制されています。有名な例を挙げると、某有名海賊アニメの海外版でシェフの喫煙シーンが、棒付きキャンディーに修正されているケースではないでしょうか。

また、表現規制以外での文化の違いでは、首をふる否定の「モーション」が一部地域では、肯定の意味になったり、日本では一般的なシチュエーションである家族風呂は、性的虐待で逮捕される地域もあります。これらの例はたった一部分であり、思ってもみない文化の違いは世界中に溢れています。これらの文化や意識の違いにおいても、ネイティブによるテストプレイが極めて重要だということです。

LQAリードへのインタビュー


当社が展開しているLQAはゲーマーによる、ゲーマーのためのLQAです。ということで、実際に現場で働いているLQAリードに経験談や、ゲームへの愛について質問してみました。

質問:LQAをする上で困ったこと/困難なことは?

日本語スタッフ回答:
各言語のネイティブテスターが感じる不自然さを、クライアントに言葉で説明することです。LQAリードとしてクライアントに報告する際には、問題点を日本語に置き換えて説明する必要があります。さらにその言語の知識が求められるため、上手く伝えることが難しい場合があります。言葉選びを間違えると、主観的な表現の修正箇所になりうる可能性もあります。このような状況は、LQA作業において最も困難なポイントです。

質問:普段から作業で心がけていること(日本語スタッフと英語スタッフの回答)

日本語スタッフ回答:
私たちはクライアントの希望に可能な限りすべてお応えするために努めています。そのためには、まずクライアントが求める品質の方向性をしっかりと確認することを重要視しています。表現の確認が最重要であるならば、各シーンで登場するテキストが意図通りであるかを確認し、テキスト表示エリアからはみ出していないかなどをチェックします。これら最低限のチェックでLQAを進める場合は、通しプレイでの確認に重点を置きます。その後、テキストのはみ出しがある場合など、元の翻訳を調整する必要がある場合は、テキストボックスを拡大できるか、改行の位置を考えるなどの対応策を検討します。ただし、テキストの修正が必要な場合には、テスターや翻訳者と協議した上でクライアントに修正案を提案する流れを組んでいます。

英語スタッフ回答:
すでに日本語でリリースされてるタイトルなどでは、海外ファンのコミュニティーがいる場合、非公式で使われている名称や単語に出来るだけ合わせることによってリリース後の違和感を減少させることです。日本語にしかない表現など直訳じゃないようにローカライズし、意味が伝わるように修正案を出しています。 ゲームのスタイルや各キャラクターに合わせ、統一性を目指して確認を行う事を普段から心がけています。

質問:
プライベートでゲームしている時に見てしまうところは?

日本語スタッフ回答:
昨今のゲームで、おそらく一般のユーザーさんも感じる部分だとは思いますが。フォントが一番気になってしまいます。特にアジア言語の中でも漢字は同一視されますが、日本で使われる漢字と中国等で使われる漢字の中では、形が違うものから、一つの点が無い程度のもの、一部分の書き方が違うものまで多くあります。そんな、フォントや漢字の違いが一番気になってしまいます。

質問:
ゲームへの愛を詰まったエピソードはありますか?

日本語スタッフ回答:
幼少期からゲームが好きで、レトロゲームからAAAタイトル、インディーゲーム、FPS、MOBAなど普段から幅広いジャンルでプレイしているため、自分が知っているタイトルやIPに携われることが嬉しく思うことでしょうか。何よりも、スタッフロールに自分の名前を載せて頂いた事があり、仕事で何度もプレイしたのにそれが嬉しくて、プライベートで何周もクリアしたこともあります。また、この仕事では幅広くゲームが好きな事を活かせられるので、昔からゲームが好きで良かったと思ってます。

その他にも、個人的に気になる点や、ご質問などがある場合はこちらから気兼ねなくお問い合わせください。可能な範囲で、回答させていただきます。

そして、当社では7月25日から9月25日までの期間限定で、LQAの無料お試しキャンペーンを実施いたします。キャンペーンの詳細はこちらで確認することができます。

※ブースイメージ(仮)


最後に、キャンペーン期間中に開催予定である東京ゲームショウ2023では、アクティブゲーミングメディアとして出展することが決定しました。当ブースでは今回ご紹介したLQAをより詳しく展示する予定です。しっかりと内容を聞いてみたい場合は、こちらから事前予約することが可能です。また、ローカライズされたゲームの社会的な品質向上を目指しているアクティブゲーミングメディアでは、LQAの認知と理解を広げるため、一般ユーザー様も気兼ねなくお立ち寄り頂きたく思います!ぜひ、お気軽にビジネスソリューションコーナーまでお越しくださいませ。

Mion Sakamoto(AGM)
Mion Sakamoto(AGM)

アクティブゲーミングメディアの坂本です。普段は会社ホームページのブログや、Twitter、LinkedInの運営などを担当しています。

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