ゲームのリマスター時の「オリジナル版の表現をどう見せるか」問題に対し、各社アンサー。『ロックマンエグゼ』や『龍が如く』から見える苦労
カプコンは4月14日、『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)およびPS4/Nintendo Switch。本作はオリジナル版をリマスターしてオンライン機能などの新要素も実装。一方で一部テキストを除き基本的なゲーム内容はオリジナル版と同様で、「制作当時の表現のままの内容」が収録されているとの注意書きがある。
昨今では、リマスターにあたって同様の注意書きがおこなわれる作品がゲームに限らずさまざまな媒体で見られる。オリジナル版の表現をそのまま残すかどうかや注意書きの内容など、各社のリマスター方針の違いが見られる部分といえるだろう。
『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』はVol.1とVol.2で構成されており、『ロックマンエグゼ』シリーズのバージョン違いを含むナンバリング6作品、計10タイトルをリマスターしてまとめた作品だ。『ロックマンエグゼ』シリーズは、データアクションRPG。舞台となるのは、ネットワークが高度に発展した社会。それぞれの作品で、主人公が現実世界と電脳世界を行き来しながら冒険する。リマスター版での大きな変化としては、オンラインでの対戦やトレード機能が実装。ほか、イラスト・設定画を収録した「ギャラリー」や、BGMを収録する「ミュージックプレイヤー」などが用意されている。
『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』にはそうした変化が盛り込まれた一方で、シナリオなど一部テキストを除く基本的なゲーム内容はオリジナル版と同様となっている。ゲーム起動時の画面には、「本作は、作品のオリジナリティを尊重し、制作当時の表現のままの内容を収録しております」との記載も表示。英語版ではさらに「カプコンは多様性と包括性を尊重している」との説明もあり、ゲーム内には「無神経な文化的描写」が含まれている部分もあるとの注意書きがなされている。本コレクションに含まれる作品内では、現代の価値観においては人種に関わるステレオタイプであると捉え得る描写が一部存在。そうしたオリジナル版の内容をほぼそのまま収録する本コレクションには、現代の社会通念や人権意識からすれば不適切な表現があると配慮された結果だろう。
リマスターにあたってそうした注意書きが盛り込まれる例はほかの作品にも見られる。たとえば『龍が如く3』は時代設定が発売年と同じく2009年頃であり、2018年発売のリマスター版では法令や一部の表現などは当時のものに基づいているとの旨が起動時に表示される。『龍が如く3』リマスター版にはオリジナル版の内容から、ジェンダー/同性愛に関わる一部要素などに変更があるものの、ほかの部分への配慮もあってか注意書きが盛り込まれているかたちだろう。
こうした注意書きはゲームのほかの媒体でも見られ、アニメ「星のカービィ」のHDリマスター版では、ストアページ上に「現代の社会通念や今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現」が一部含まれると記載。制作当時の時代背景と作品のオリジナリティを尊重して、原版のまま収録されていることが伝えられていた(関連記事)。
またディズニーの動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」でも一部作品に注意書きは存在。こちらの注意書きでは、人々や文化に対する否定的な表現や横暴な振る舞いを描写したシーンが含まれる点が明記されている。そうした固定観念が現代だけでなく、作品制作当時でも誤りであると説明。当該箇所を削除せずにおくことで、社会に与える悪影響を認識し、そこから学び、議論を促すことで多様性あふれる社会の実現につなげていきたいとしている。
昨今ではゲームやアニメ、映画などさまざまな媒体が現代向けにリマスターされている。当時からの社会の人権意識の変化によって、オリジナル版での不適切な表現が浮き彫りになるケースも多くあるわけだ。そうしたかつての表現について、現在のユーザーに違和感ないよう調整していく方針もあるだろう。一方で、リマスターにあたってのオリジナル版の表現の変更では、当時の表現が失われることも事実であり、修正するにあたってはコストも多大に要する。オリジナル版での表現を残すか、あるいは一部を変更するか。また表現を残す場合にも、注意書きから垣間見える各社の方針には違いが見られる。
【UPDATE 2022/4/19 0:47】
『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』の一部テキストに変更がある点を明確化