リアル志向FPS『Squad』が方針転換し、初の有料DLC配信を決断。お金がないと開発していけない
デベロッパーのOffworld Industriesは1月19日、『Squad』に向けた将来のアップデートにて、エモート(Emotes)機能を実装すると発表した。エモートは、本作初の有料DLCとして販売されるという。
『Squad』は、マルチプレイヤーFPSだ。最大50対50のチーム戦で、拠点(フラッグ)の確保などを目指して戦う。プレイヤーは最大9人の部隊を組むことが可能で、勝利のためには部隊内での連携も必要だ。ゲーム内ボイスチャット機能が搭載されており、これも連携に重要な要素となる。また、さまざまな兵科が用意され、多彩なビークルも登場する。プレイヤーたちによる陣地構築や兵站の要素などもあり。リアル志向かつバリエーション豊かな戦闘体験を味わえるタイトルだ。
本作は当初2015年配信の早期アクセスから始まり、正式リリースに至ったのは2020年のこと。その間、精力的なアップデートを重ね、大規模な拡張が続けられてきた。正式リリース後もアップデートは続いており、数か月に1度のペースでさまざまな要素が追加されている。そのいずれもが、無料アップデートとして配信されてきたわけだ。本作はSteamユーザーレビューにおいては約9万2000件中89%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。2022年7月には売上が300万本を突破していたことが伝えられた(関連記事)。
今回、本作に向けたv4.2アップデートの配信に先がけて、本作Steamストアページにて開発元ニュースが公開。そのなかで、v4.27にてエモート機能(Emotes)が実装されることが発表された。同アップデート配信時にはすべてのプレイヤーに無料のエモートパックが配信されるとのこと。そのほかゲーム内でSteamストアへのリンクが用意され、2種類の有料エモートパックが販売されるという。
エモートは、プレイヤーがほかの人と交流したり、ゲーム内で喜びや落ち込みを表現したりできるアニメーション機能になるとのこと。本作にとって完全なオプション機能であり、ゲームプレイを変化させるアイテムではないとされている。また本日1月21日には、実装予定のエモートおよびジェスチャー(Gestures)について発表。スクリーンショットとともに無料パックと2種類の有料パックの内容が紹介されている。
なおエモート機能は本作にとって初の有料追加コンテンツになる。さらには、本作はかつて「有料追加コンテンツは配信しない」との方針を伝えていた。そのため、ゲームプレイには関連しないコンテンツとされているものの、1月18日の発表はユーザーコミュニティに波紋を広げていた。
海外掲示板Redditでは主に、リアル志向な本作の雰囲気をエモートが損ねてしまうのではないかとの指摘が散見される。同掲示板には「エモートを買うな!」「これは罠だ!」といったスレッドが投稿。そうしたスレッドには、ダンス系の派手なエモートが登場するのではないかとの憶測や、倒した相手を煽るようなエモートの登場を不安がる意見が寄せられている。またエモートの登場を皮切りに、派手な装飾アイテムの登場を危惧する声も。一部ユーザー間では、リアリスティックな本作の戦闘の雰囲気がぶち壊されるのではないかとの懸念が渦巻いているわけだ。
一方で「エモート」という記載が不必要な懸念を生じさせている可能性はあるだろう。ゲームにおいてエモートといえば、ダンスや大げさなアニメーションが用意されることも多い。しかし発表において開発元は、(エモートはサーバー設定で無効化できないものの)できるかぎり控えめな表現にとどめたとしている。ダンスのように作品の雰囲気を大きく損ねるエモート実装は避ける方針が伝えられているわけだ。本日発表されたエモートのスクリーンショットを見ても、少なくとも本作の雰囲気に大きく差し障るモーションにはならないことが確認できる。
また、本作開発元Offworld Industriesの体制の変化と絡めて、不安を抱くユーザーもいるようだ。同スタジオは2022年1月に、CEOかつスタジオ創設者のひとりであるWill Stahl氏と交代し、新CEOとしてVlad Ceraldi氏が就任。続く3月には、中国のIT大手テンセントから出資を受けて同社からGram Xu氏を重役陣に迎え入れたことが報じられた(GamesIndustry.biz)。一方で同月に掲載された公式Q&Aにおいて、有料DLCの発売が計画されていないことが明かされていた。一部ユーザーが否定的な反応を見せているのは、そうした過去の発表と相反する方針が打ち出された点も関係しているだろう。
一方でスタジオ側の今回の発表においても、スタジオ体制の変化について言及されている。同声明では、「以前のリーダーシップにおいては、『Squad』に有料コンテンツを絶対に追加しないとしていた」重役陣の変化について触れた。スタジオのトップが交代したことで、新たな取り組みとして今回のエモート実装に至ったということだろう。開発元は有料コンテンツ実装に対して賛否が分かれる点も認識していると伝えている。
そして、コンテンツを有料とした理由についても説明されている。本作には2023年以降もアップデートが実施され、サポートも継続されるという。そのためには継続的に開発資金の調達も必要になり、その施策のひとつとしてエモートのような有料コンテンツの販売に踏み切ったそうだ。同発表では「『Squad』の開発資金をどうにか補わないといけないと気づいた」との旨が痛切に語られている。以前の発表に反する方針をとったのは、正式リリースから3年目を迎え、さらなる展開をおこなうためのマネタイズに苦心した結果とも考えられるだろう。
なお将来の新たな武器スキンやコスチュームの有料での実装の可能性については、現時点では明かされていない。エモートへのコミュニティの反応を注視していくとのことで、ユーザーの反応を受けて実装が検討あるいは中止されることもあるだろう。時が来れば、ほかの装飾アイテムが実装されるかどうかについて、さらなる案内がおこなわれるそうだ。
初の有料DLC発売が告知された『Squad』。コミュニティ内では賛否が分かれており、上記のように懸念を示すユーザーもいる一方で、開発元をサポートできることを好意的に受け入れる声も散見される。いずれにせよ、今後Offworld Industriesがコンテンツによるマネタイズをどのように進めていくのかが注目されそうだ。