ダーク三國死にゲー『Wo Long: Fallen Dynasty』プロデューサーインタビュー。『仁王』ではない「本作ならでは」の戦闘の醍醐味とは
東京ゲームショウ2022のコーエーテクモゲームスのブースでは、2023年上旬に発売予定である『Wo Long: Fallen Dynasty』の世界初プレイアブル出展が行われていた。これに際して、弊誌では試遊体験ならびに、本作のプロデューサーを務める安田文彦氏と、山際眞晃氏の両名に対し、インタビューを実施した。本稿では、インタビューの内容、および試遊版・体験版に関するプレイレポートをお届けする。
――東京ゲームショウ2022の御社ブースにて試遊体験版をプレイしたところ、アクションが大立ち回りである印象を受けました。これは武士らしい差し合いを旨とする『仁王』シリーズとの差別化や、中国武術らしさを演出するためでしょうか。
安田氏:
そうですね。『Wo Long: Fallen Dynasty』は三国志を作品のテーマとしているので、もちろん日本の戦国時代を舞台としていた『仁王』シリーズから演出は大きく変わっています。
中国武術をアクションゲームという型へいかに落とし込むか、という部分は制作のなかで一番意識しているので、そこを感じていただけたのかなと。体感的なゲームスピードの高速化を通じて、ゲームプレイの激しさや、密度の高い体験を提供したいと考えています。
Team NINJAは元々『NINJA GAIDEN』シリーズというアクロバティックなアクションゲームを作ってきた経験があります。『仁王』シリーズを経て、『Wo Long: Fallen Dynasty』はまた『NINJA GAIDEN』シリーズに寄っているというか、スピーディーでアクロバティックなアクションゲームを目指して制作しています。
――印象としては、敵の攻撃を受け止めるのではなく、回避行動がゲームの中で目立つ要素になっているように思えました。これも中国武術らしさを意識した部分でしょうか。
安田氏:
敵の攻撃を受け流してからのカウンターというのは、もちろん刀と刀をぶつけ合うことでもできますが、中国武術らしいアクションでそれを体験していただくのであれば「力を受け流すようなやり取り」や、「攻守が一瞬で逆転する演出」を要素として組み込むことが重要だと考えています。こういった要素の表現手段として、回避行動を作中における重要なアクションのひとつに位置づけています。
――本作は使用する武器によって攻撃アクションの内容が異なりますが、製品版ではどれくらいの種類が用意されていますか?
山際氏:
武器については10種類以上の実装を予定しています。中国の武術から連想されるものを中心に取り揃えています。試遊・体験版では双剣や大刀といった武器が実装されていましたが、製品版ではよりヘビーな武器であったり、逆により素早いアクションが可能な武器も登場する予定です。また、本作は三国志を題材としていることもあって、名だたる武将が携えていた武具も実装したいと考えています。
――製品版における仙術のバリエーションについてはいかがでしょうか。
安田氏:
試遊・体験版では仕様上、プレイヤーごとの創意工夫を楽しめるRPG部分のすべてを触っていただくことはできず、実装されている仙術の内容、組み合わせもわかりやすく特定の方向性に特化した形になっています。ですが製品版ではプレイヤーのスタイルに合わせた仙術の組み合わせが可能になっています。
山際氏:
製品版では仙術も豊富に用意されています。試遊・体験版では五行のイメージに合わせたプリセットが用意されていましたが、製品版では自由に組み合わせることが可能です。
――RPG要素に関連して、試遊・体験版におけるステータス強化要素は『仁王』シリーズよりもシンプルになっている印象を受けました。これは本作がRPG部分よりもアクション面を強めたいという認識で合っていますか。
安田氏:
そこは両面あると思っています。敵の攻撃を避けて反撃する反射的なアクション部分と、プレイヤーごとの緻密な戦略構築に関する部分ですね。本作はこの両面をフルに活用して困難を乗り越えていくことが面白いゲームであると考えているので、どちらかに偏らせたいというわけではありません。
ただおっしゃる通り、本作はステータスに関連したシステムに関して、『仁王』シリーズと比較すると省かれている部分があります。これはプレイヤーが煩雑なRPG要素に気を取られることなく、アクション要素に集中してもらうという設計意図によるものです。
――本作には「士気ランク」が実装されていますが、これはどういった意図で実装されていますか。
山際氏:
まずは「士気ランク」の仕組みについて説明しますね。本作にはステージ中の自分と敵の強さを表す数字として、士気ランクが設定されています。ステージ中の敵を倒すほどに上昇し、自分の数字が高ければ高いほどプレイヤーに恩恵が与えられます。逆に自分が倒されると数字は低下します。そのため、数字の小さい敵から倒すなど、敵を倒す順番などを考慮する必要があります。また、士気ランクの上昇値は倒す敵が強いほど大きくなります。強い敵からはレアドロップが見込めたりもします。士気ランクには「ステージのどこから攻めるか」という選択を通じてプレイヤーの試行錯誤や戦略構築を促したいという狙いがあります。
また本作は中国を舞台にしていることや、ジャンプをアクションとして用意しているのもあって、よりスケールの大きいステージで立体的なアクションを楽しんでほしいという思いもあります。士気ランクを通じて、いろんな攻略ルートを試してほしいです。
――士気ランクは敵を倒せば倒すほど有利になっていくシステムですが、敵を上手く倒せないプレイヤーに対するフォローアップは何か用意されていますか。
山際氏:
本作には士気ランクのほかに「不屈ランク」というものがあります。士気ランクがこれ以上下がらなくなる最低値に相当し、これはステージの各所にあるポイントで標旗・軍旗を立てると上昇します。単純に敵と戦っていくこともできますし、敵が強いのでステージの各所に旗を立てることを優先するといった遊び方もできます。『Wo Long: Fallen Dynasty』におけるテーマの1つに「逆境に立ち向かう」というものがあり、旗を戦場の各所に立てることによる、プレイヤーの勢力図の拡大を通じてこれを感じてほしいなと思います。
――RPG要素に関する質問に戻りますが、仙術の強化要素や、強力な技を放てる神獣のバリエーションも用意されていますか。
安田氏:
仙術についてはステータスの値を基準とした使用制限のほかに、「士気ランク」による制限も設けています。「士気ランク」が一定の値にならないと、あらかじめ用意してもステージ攻略中には使用できないというものです。自分の構築したいビルド、パラメーターの割り振りだけではなく、攻略したいステージ中の敵との相性も考慮する必要がある仕組みになっています。
神獣についても同様に、プレイヤーにバフを与えるものから、目の前の敵を一掃するものまで、さまざまな効果を用意しています。これらを組み合わせてプレイヤーひとりひとりのやり方で本作を攻略していただければと思います。
――製品版におけるステージのバリエーションはどうなっていますか。
安田氏:
本作は中国が舞台ということで、自然にしても建造物にしてもスケールが圧倒的に大きいステージが多いです。たとえばとんでもなく大きい黄河の流域は歴史上何度も戦場になっていたりしますよね。それぞれのステージについて、新しい印象や刺激を感じてもらえればと思います。
山際氏:
東京ゲームショウ2022向けに用意した試遊版は15分しか体験時間がない都合上、戦闘アクションをまず楽しんでほしいという狙いのもと、ギュッと絞った作りになっています。製品版ではより立体的な構造を通じたアクションと、ルート選択を楽しんでいただければと思います。
――キャラクタークリエイトの話になりますが、本作は『仁王2』と比較してどういった仕様になっていますか。
安田氏:
『仁王2』の内容をそのままイメージしていただければと思います。くわえて中国風の髪型や化粧についても、実装が期待されていると認識しています。三国時代に生きた人間になりきるための要素は可能な限り用意しようと考えています。
――では最後に読者の方へお二人からメッセージをお願いします。
安田氏:
Team NINJAは今回はじめて三国志を題材とした作品にチャレンジします。コーエーテクモ史上、もっともダークな三国志作品に仕上げるべく、アクション部分を含めてしっかり作っています。まずは配信される体験版をプレイしていただいて、ぜひ遊んだ感触を教えていただければ幸いです。来年の発売に向けて、ゲーム内容の調整の参考にさせていただきます。
山際氏:
今回世界ではじめて試遊版を出させていただきました。皆さんが試遊している姿を拝見すると、我々も思っていなかった気づきや遊び方の発見につながる部分がありますね。また、9月16日から9月26日にかけては体験版が配信されます。厳しい意見もあるとは思いますが、より多くの意見をいただくことで、来年の発売に向けた、ゲーム内容の調整に活かすことができます。まずはゲームを楽しんでいただければと思います。
――ありがとうございました。
『Wo Long: Fallen Dynasty』の体験版は、9月16日から9月26日15時59分までの期間限定で、PlayStation 5/Xbox Series X|S向けに配信中。
ここからは、東京ゲームショウ2022で出展されていた試遊版、ならびに前述した体験版の感想について簡単に述べていく。まず試遊版については15分の制限時間があり、『Wo Long: Fallen Dynasty』の基本的な戦闘アクションと、それに追随するシステムを、ザコとの戦闘やボス戦を通じて体験できる内容となっていた。敵の攻撃を受ける直前に回避行動を行うことで攻撃を受け流せる「化勁」(かけい)を通じ、「氣勢」という敵味方共通のリソースを管理。化勁で溜めた氣勢を用いて、武器によって異なる大技「武技」や、「仙術」といった搦め手を発動。一気に敵の氣勢を削ぎ、無防備なところに、強力な一撃「絶脈」を打ち込んで大ダメージを与える。
プレイした感覚としては、ケレン味ある派手さと爽快感を両立した独自のアクションが成立しており、気力管理が重要だった『仁王』シリーズのアクションとは似て非なる体験を提供するものだった。武器ごとのアクションは、中国武術をイメージしているためか『仁王』シリーズとはまったく異なる内容ではあったが、大技を発動できる「神獣」の存在など、一部『仁王』シリーズを彷彿とさせる部分も確認できた。だが、15分という限られた時間の中では、氣勢の仕様やプレイヤーの強化状態を示す士気ランクの存在理由など、作品の全体像を掴むことは難しかった。
そこで筆者は、安田氏と山際氏とのインタビューのあと、PlayStation 5向けの体験版をプレイしてみた。この体験版は、東京ゲームショウ2022の試遊版とは違い、より作品の全体像を掴める内容になっている。「士気ランク」の変動をベースとした広大なステージ散策と戦略構築。流れるような中国武術らしい戦闘といった、『Wo Long: Fallen Dynasty』の総合的な魅力をゆっくりと楽しむことができる。
中国における山岳地帯をイメージした美しく広々とした戦場を舞台に、目の前の橋を渡るか。崖下の道を進むのか。遠目に見えるチェックポイントを優先するのか、周囲を散策するのか。どの順番で敵を倒していくか。報酬目当てで広大なフィールドを駆け回った経験は数あれど、ゲームから指示されずにプレイヤーが敵を倒す順番を考慮して戦場を周遊するアクションゲームはユニークだ。勢力を広げるという点でシミュレーションゲームライクな試みであり、レベル上げに似た士気ランクの上昇はRPGのような試みでもある。どこか『三國志』シリーズの意匠を感じさせる部分がある。
試遊版ではチュートリアルがなかったこともあり、とりあえず化勁を優先すれば良いという認識が先行していた。だが体験版を経た今ならその認識が間違っていたことが分かる。本作の戦闘における肝は、回避行動ではなく、回避行動を通じた氣勢ゲージの管理である。
本作には氣勢というゲージが敵味方共に用意されている。0を値の基準として、攻撃を与えたり、化勁を発動することによって自分のゲージがプラス方向に伸び、敵のゲージはマイナスに向かう。敵から攻撃を受けるとこれが逆になる。敵のゲージをマイナスの最大まで伸ばすことができれば、絶脈という大ダメージ攻撃を行うことが可能。これには相手の士気ランクを下げ弱体化を促し、同時にこちらの士気ランクを上昇させる効果がある。逆にこちらの氣勢マイナスに振れている際に攻撃を受けると一定時間無防備になってしまう。
また、武技や仙術については、使用すると氣勢がマイナスに向かう。単に回避行動をするだけでもマイナスに向かってしまう。無駄なく敵の攻撃に対して化勁を発動し、自分の氣勢をプラスに保つ。そして多彩な技を打ち込むことで絶脈に持っていき、敵の弱体化と自身の強化を同時に行う。これはボス戦にて特に重要である。無駄な行動を廃し、鮮やかに敵の攻撃をさばきながら時期を見て一転攻勢を決める。流れるように攻防を繰り返すその様相は、まさにインタビュー中の言及通り、中国武術らしいケレン味あふれるアクションである。上述した広大なステージ探索と合わせ、『Wo Long: Fallen Dynasty』は、気力を管理しながらボスへ向かって突き進む『仁王』シリーズとは似て非なる体験を提供するものであると理解できた。
このほか、体験版には他プレイヤーだけでなく、三国志の名だたる武将をNPCの同行者として召喚する「援兵」や、オンラインを通じて攻略の手助けを募集する「求賢」、こちらが攻略の手助けに向かう「出征」の機能が使用可能となっていた。他プレイヤーとの協力要素はTeam NINJA開発の死にゲーにはお馴染みのシステムではあるが、ラインナップの中から任意で好きな武将を召喚できる援兵はファンにとってたまらない機能ではないだろうか。キャラクタークリエイトの設定もある程度可能であり、インタビュー中の言及通り、『仁王2』をベースとした内容になっていることが確認できた。
『Wo Long: Fallen Dynasty』は2023年上旬に発売予定。体験版は9月16日から9月26日15時59分までの期間限定で、PlayStation 5/Xbox Series X|S向けに配信されている。体験版を遊んだプレイヤーに対し、製品版の品質向上に向けたアンケートも同時開催中だ。プレイの中で湧いた疑問点・改善点はぜひ開発陣へ提案として送ってみてほしい。
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