『オーバーウォッチ2』PvPベータを『オーバーウォッチ』復帰勢が遊んだ感想。新作というよりバージョン2.0
『オーバーウォッチ2』は、Blizzard Entertainmentが手がける対戦FPSゲーム『オーバーウォッチ』の新作だ。前作と同様に、チームワークによる競技性を重視した対戦システムは継承。新ヒーロー・新マップ・新対戦モードなどを引っ提げて、期待の新作として開発中だ。本作は日本時間27日より、PvPクローズドベータテストを実施している。本稿では同テストに参加し、1日どっぷりと遊んだ感触をお伝えしていきたい。
初印象は「ほとんど前作と同じ」
筆者が『オーバーウォッチ2』PvPベータに参加してまず最初に感じたのは「変わってないな」という印象だった。これは、安心感というより肩透かしに近い感覚だ。筆者は『オーバーウォッチ』のリリース後1年間はドはまりし、2017年中旬あたりからあまり触れなくなってしまった、いわゆる“復帰勢”である。つまり約5年間ほど本作には触れていない。ブランクがあるにも関わらず、おおむねのプレイフィールは5年前にプレイした『オーバーウォッチ』そのまま。“新作”がもたらすときめきや新鮮さなどへの期待は、裏切られる結果となった。
具体的には、5年前とほぼ同じいつもの顔ぶれが、よくあるパターンの動きをして、何百回と繰り返した試合展開となる。もっとも変化を感じたのはヒゲモジャになったソルジャー76の顔アイコンであった。もちろん、『オーバーウォッチ』自体がよくできた作品であり、久しぶりの対戦は夢中になって遊べた。しかし、じっくり遊ぶうちに変化した部分もしっかり感じたものの、一貫した印象としては「新キャラと新マップと新モードがアップデート実装された『オーバーウォッチ』」であった。
ただ、変わっていないことにも理由はありそうだ。というのも、『オーバーウォッチ2』は前作『オーバーウォッチ』とのクロスプレイが可能となるように開発されている。前作と続編のPvPを同じ土俵で展開するという方針そのものへの疑問もあるものの、あまりにも大きくゲームプレイを変更できない背景はあるわけだ。プレイフィールが変わらないということは、筆者のような復帰勢は「昔とった杵柄」が握れるということでもある。新作ではなく、大型アップデートと捉えてPvPに復帰するのはアリかもしれない。
しばらく遊ぶと感じる変化
もちろん、本作のゲームプレイがまったく変化していないわけではない。上述の新要素もさながら、もっともインパクトが強いと感じたのは、やはりチーム編成の変化だ。本作は、前作の6対6から5対5(1タンク、2ダメージ、2サポート)変更されている。実をいえば、筆者はクラスの構成が制限されたロールキューシステム自体がほぼ初めて。しかし、タンクが1人に絞られる影響はそれでも如実に感じられた。より責任は重く、柔軟性を求められるロールになりそうなのである。
まず、『オーバーウォッチ』におけるタンクロールの役割は大別して2種類あるといわれる。前線を構築し、戦局の要となるメインタンクと、そのメインタンクやほかの仲間を助けるオフタンク(サブタンク)である。一方で、『オーバーウォッチ2』ではタンクはひとり。また、新たにタンクロールとなったドゥームフィストや、攻撃的な性質を強めたオリーサなど、タンクロールそれぞれの柔軟性も増加。メインタンクらしい性能のラインハルトを除き、タンク1人がメインタンク的な動きとサブタンク的な動きを臨機応変にこなしていく想定で調整がなされた印象だ。
ただ、気になるのはタンクの双肩にかかる責任である。本作にてただひとりでタンクの役割を果たす必要が出たため、タンクプレイへの精神的ハードルはさらに上がるかもしれない。そして、かつて利用できた複数タンクによる戦術は、自然と封じられることになる。こうした影響については、今後も議論が重ねられていきそうだ。
また、5対5マッチの素直な感触としてあったのは「前作よりシンプル」という感覚である。各チームのタンク1名を中心として戦いが展開するため、シンプルに戦局が把握しやすいと感じた。一方で、守りが手薄になる分ローム(DPS単独による裏取りなど)への対策はより重要になった印象。襲撃に対して強い組み合わせのサポートキャラ構成が人気となるかもしれない。
目立って進歩を感じた要素もあった。ピンシステムである。言語の壁を超え、比較的詳細に意思疎通できる点は大変便利だった。ボイスチャットでは日本語/英語が通じないようなケースもあり、また、視覚的に素早く敵の位置を共有できるのもありがたい。すでにほかの数多くのシューターには取り入れられているとはいえ、痒いところに手が届く要素なので筆者としては嬉しい進化である。
そして、新ヒーローのソジョーンは例えるなら「攻撃的なソルジャー76」といった印象だ。かつてソルジャー76メインでプレイしていた筆者にとっては使い心地がよかった。一方で、自分自身のテクニック上達の必要性も感じた。このキャラは、スキルフロア(キャラを使いこなすのに必要な練度)が高めなのだ。レールガンのサブ攻撃は一発のヒットスキャン攻撃となっており、チャージにはメイン攻撃をある程度当てる必要がある。高威力なかわりにコストが高く、サブ攻撃をしっかり当てられるかどうかが活躍の鍵となるためだ。そういった意味では、Aimに自信があるプレイヤー向けのヒーローといえるかもしれない。
『オーバーウォッチ2』は“新作”たりえるか
今回の『オーバーウォッチ2』PvPベータで筆者が得た体験は、「期待の新作」というより「『オーバーウォッチ』バージョン2.0」と表現するのがふさわしい印象だった。とはいえ、『オーバーウォッチ』そのものが、対戦シューターとして素晴らしい出来栄えであることは再確認できた。また、前述の『オーバーウォッチ』とのクロスプレイなどの事情からしても、まったく刷新されたPvPシステムを求めるのは酷かもしれない。
しかし、やはり「2」と銘打って出すからには、新作へのときめきを感じさせ期待を満たす作品であってほしいのも、いちファンとしての心理である。本作には、ストーリーも盛り込んだ本格的なPvEモードが実装予定であり、目玉コンテンツとして扱われている。PvPの変化を求めるユーザーにとっては響かないかもしれない。しかし、イベントなどではない本格的PvEモードは作品全体に大きな変化をもたらし、新作感を演出しうる有力コンテンツのひとつだ。いずれにせよ、PvPベータ第1回の現時点で『オーバーウォッチ2』の全容をはかるのは早計だろう。期待して待ちたい。