低評価レビュー爆撃を受けたGOG版『ヒットマン』が販売中止。一部コンテンツのオンライン接続が、DRMフリーをうたうストアの特性に沿わず
IO Interactiveによるステルスアクションゲーム『HITMAN – Game of the Year Edition』が、10月8日、GOG.comのストアから取り下げられた。同作は、9月22日の配信開始時よりユーザーの一部からの批判を受けており(関連記事)、ストア側の調査の結果、販売中止となった。なお、批判を受けた原因は、同作の内容そのものではなく、「DRMフリーのゲームを販売するGOG.comにおいて、一部の場面でオンライン接続を必要とするゲームが販売されている」ことであった。
『HITMAN – Game of the Year Edition』は、ステルスアクション『ヒットマン』シリーズのリブート版1作目に、DLCコンテンツなどが付属するエディションだ。GOG.comでは、9月22日より配信されていた。同作は、これまでに多くのストアで販売されており、PCやコンソールなどさまざまなプラットフォームでプレイすることができる。
リブート版『ヒットマン』は、2016年のゲームオブザイヤーにノミネートされ、各種ストアでも好評。しかし、GOG.comでは低評価を受けた。その原因は、『HITMAN – Game of the Year Edition』の仕様と、GOG.comの特性が噛み合わないことにある。ゲームの構造上、オンライン接続を必要とする場面がある『HITMAN – Game of the Year Edition』が、DRMフリー(オンライン認証不要)版ゲームの販売を強みとするGOG.comにて、「オンライン接続を求められる場面がある状態」で販売されたのだ。
GOG.comにて、9月22日に同作の配信開始より、「オンライン接続を必要とすること」を理由とする低評価のレビュー爆撃が起こり、GOG.comが調査を開始(関連記事)。10月8日、スタッフのchandra氏より調査結果が報告され、GOG.comでの『HITMAN – Game of the Year Edition』の販売を取りさげると発表された。配信開始から約2週間での配信中止となった。
GOG.comでは、ユーザーのメリットとして、DRMフリー版のゲームが入手できることを掲げている。DRM(Digital Rights Management)とは、デジタルコンテンツの著作権を保護し、複製などを防ぐための機能のこと。ゲームでは、起動時などにオンライン認証をおこなう機能を指す。コンテンツ保護のためには有用だが、ユーザーにはデメリットもある。オンライン認証が必要な場合、販売元の都合でプレイできなくなる可能性や、オフラインでのプレイができないなど、ゲームを遊ぶ環境やタイミングに制限がかかるのだ。
GOG.comは、2018年に反DRM運動「FCKDRM」をおこない、「設立当時から、DRMフリーのゲームを取り扱うことが同ストアの核心を成している」と宣言していた(現在、同キャンペーンのWEBサイトはなくなっている)。こういった運動もあり、GOG.comでゲームを購入するユーザーのなかには、「DRMフリーであること」や、DRMフリーの特徴とも言える「オフラインでプレイできること」を重要視する層がいるのだろう。『HITMAN – Game of the Year Edition』は、一部の場面でオンライン接続を必要とする状態で配信されたため、「完全オフライン」で遊びたいユーザーから反発が起きたようだ。なお、同作のオンライン接続は、追加要素をアンロックしたり、ユーザークリエイトのコンテンツにアクセスしたりするのためのもので、著作権保護のためのオンライン認証とは異なっていたようだ。つまり、DRMフリーではあるが、それとは別に、多くのコンテンツ利用についてはオンライン接続を求められることがあるという、複雑な状況だったのである。
10月8日にGOG.comに投稿された調査報告にて、chandra氏は「みなさまのご指摘のとおり、現在のかたちでリリースすべきではありませんでした」と述べ、ユーザーの混乱や怒りを引き起こしたことを謝罪した。そして、(DRMフリー版のゲームを販売する)GOG.comの理念を熱心に支持するユーザーへの感謝を表明し、ユーザーとのコミュニケーションを改善し続けることを約束した。なお、この件に関して、現在もGOG.comとIO Interactiveの協議は続いているとのことだ。