『Five Nights at Freddy’s』生みの親Scott Cawthon氏が引退を発表。政治的支援めぐるトラブルを経て、『FNaF』ファンに感謝を残し去る

ホラーゲーム『Five Nights at Freddy’s』シリーズの作者であるScott Cawthon氏は6月17日、ゲーム制作の一線から引退することを発表した Cawthon氏は先週より、反LGBTQIA+思想をもつ政治家を支援した件で波紋を呼んでいた。

ホラーゲーム『Five Nights at Freddy’s』(以下、FNaF)シリーズの作者であるScott Cawthon氏は6月17日、ゲーム制作の一線から引退することを発表した。自身のウェブサイトScottGames.comにて声明を公開している。 Cawthon氏は先週より、反LGBTQIA+思想をもつ政治家を支援した件で波紋を呼んでいた。 

『FNaF』シリーズは、2014年から展開されてきたサバイバルホラーゲーム。プレイヤーは奇妙な噂話のあるピザレストランで、夜間警備のアルバイトとして5日間の夜を過ごす。そこでは、夜な夜なマスコットの着ぐるみたちが動き出し、プレイヤーに襲いかかる。監視カメラやライト、扉の開閉を操作して、アルバイトの数日間を生き残るのだ。本編に相当する作品が6作リリースされているほか、スピンオフ作品も複数輩出。シリーズをまたいだ考察要素やファンコミュニティによる二次創作が盛り上がりを見せ、インディーホラーゲームを代表するヒット作となっている。新作としてはPlayStation 5/PlayStation 4およびPC向け最新作『Five Nights at Freddy’s: Security Breach』も現在開発が進行中だ(関連記事)。 

声明にてCawthon氏はまず、8歳のファンから贈られたというファンアートを挙げ、ユーザーによる7年間の支援に厚い感謝の意を示した。その後、初代『FNaF』の予告編公開時には自身の年齢が30代半ばだったのに対し、現在ではすでに40代中ごろに近づきつつあることに言及。そうした折にあって、自身が多くのことを恋しく思うようになったと気がついたという。それは、たとえば子どもたちにゲームを作ってあげられないことであったり、ただ楽しむためにゲームを作ることができないことであったり、つたないながらもRPGを作ることができないことであったり、と語るCawthon氏。有名になってからできなくなってしまった多くのことを考慮したうえで、『FNaF』シリーズ制作の一線から身を引くことを決心したと述べている。 
 

『Five Nights at Freddy’s 2』

 
Cawthon氏自身は開発を引退するものの、『FNaF』シリーズについては今後も展開が続くという。その際、Cawthon氏によって選ばれた、信頼に値する人物にシリーズを委ねていくとのこと。今後の展望についてもCawthon氏による見守りは続いていくそうだ。また、制作から遠ざかることで、現在6人いる自身の子育てに注力していきたい旨を明かしている。締めくくりとしてCawthon氏は自身の決断を尊重するようファンに頼むと同時に、改めてコミュニティへの感謝の言葉を伝えている。 

Cawthon氏は声明のなかで、「ここ数週間のうちLGBTQコミュニティから大きなサポートを受け取った」と言及している。Cawthon氏は6月11日、ドナルド・トランプ元大統領を含む反性的マイノリティ的思想をもつ共和党候補者に資金提供していたことが明らかになっており、大きな波紋を呼んでいた。 Cawthon氏は、当該の候補者を支持していることを認めつつ、『FNaF』コミュニティにおける LGBTQIA+ファンに対する愛情を改めて表明。いかなる人種・宗教・ジェンダーの人物であっても、すべてのクリエイターを尊敬と敬意をもって接しており、多様なグループの人々と働いてきたと言及した。一方、自身の政治的支援についても意向を曲げない旨を伝えており、本件により反感を買うのであれば引退もやむなしとする見解を語っていた。Cawthon氏のもとには殺害予告が届くなど激しい反感が寄せられた一方、Twitterでは同氏に理解を示す「#istandwithscott(スコットを支持します)」との投稿も多数見られる。 

そもそも『FNaF』シリーズの開発については、すでにCawthon氏個人の手によるものではなく、カナダのスタジオSteel Wool Studiosが大きく関わるかたちで進められてきた。VR作品『Five Nights at Freddy’s: Help Wanted』や最新作『Five Nights at Freddy’s: Security Breach』も同スタジオ主導で制作されている作品だ。Cawthon氏が語るとおり、今後はSteel Wool Studiosを含め、同氏がシリーズを預けるに値すると判断した人々の手で『FNaF』シリーズが展開されていくのだろう。また昨年8月には、Cawthon氏が公式に『FNaF』二次創作ゲームを資金面でサポートしていく意向も発表されていた(関連記事)。こうしたファンベースでの活動も、シリーズを支えていく一端となるのかもしれない。 
 

『Five Nights at Freddy’s 3』

 
オリジナルのクリエイターの手を離れ、今後『FNaF』シリーズの行く末がどのように展開されていくのか、注目したいところだ。Cawthon氏の声明全文はこちらから参照されたい。 

Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

Articles: 1615