『Apex Legends』シーズン7の武器調整の疑問にデザイナーが答えまくる。超人気のボルトはなぜ野放しなのか、ケアパケ武器としてのプラウラーは強化されないのか
「強化が望まれるあの武器はなぜ修正が入らないのか」。『Apex Legends』プレイヤーなら、誰もが行き当たる疑問や不満だろう。シーズン7の開幕にあたっては、一部ユーザーからのこうした問いかけにRespawn Entertainmentの開発者が答えていた。回答者は武器周りのデザイン担当でおなじみ、AmusedApricotことDavid Bocek氏。シーズン7に少しずつ慣れてきたであろう今、改めてコメントを検討していってみよう。
「プラウラーはバーストがぶっ壊れてたから(ケアパケに)収監されて当然」との意見に対し、Bocek氏は少々補足を入れている。同氏によれば、プラウラーが脚光を浴び始めたのはリコイルが調整され扱いやすくなったからに過ぎないとのこと。裏を返せば、同武器のTTKは当初から強力だったものの、あまり使われてこなかっただけだとBocek氏は語る。同氏は、たとえばディヴォーションが一貫して大きく変わっていないにもかかわらず、ケアパッケージ入りしたことでその強力さが注目されるようになったことを引き合いに出して説明した。今のところ補給物資武器としては賛否が分かれているプラウラーだが、今後その威力に対する評価は上がっていくのかもしれない。
なお補給物資武器化してもプラウラーに強化が入らないことにもツッコミが入ったが、Bocek氏らとしてはすでにプラウラーは十分強力だとみなしている模様。ディヴォーションやR-99がケアパケ化した際はマガジンの増量がおこなわれたが、プラウラーはすでにマガジンサイズが巨大なため、手をくわえていないという。今後ケアパッケージ武器として性能が劣ることが判明してくれば、調整が入る可能性があるとのことだ。
またシーズン6で強力すぎたために反動増加などの処遇を受けたヘムロックについては、なぜ単純にシーズン5の状態に戻すのではなく、わざわざ変更を加えたのかという疑問も。こちらに関しては、同武器をシーズン5よりは強く、かつシーズン6よりは抑えた性能にしたかったからとの回答があった。シーズン5とシーズン7におけるヘムロックの重要な違いは、バースト時のダメージがより強化されている点だ。単射・バーストともそれぞれ適した状況があるが、バーストモードは全射ヘッドショットを決められるような高レベル帯プレイヤーの環境において猛威を振るっていたという。またバーストのコントロールが容易だったために、有効距離が長くなっていることも問題視された。バーストの威力を増すことでシーズン5のDPSを超える火力としつつ、有効範囲を減らすことでプロプレイヤーの荒ぶるヘムロックを抑え込む、というかたちが現在の落とし所となったようだ。
人気武器ボルトについて、なぜ何の調整が入らなかったのかという疑問も寄せられている。こちらに関しては開発チームもかなり熟考したとのこと。しかしチームの懸念は、シーズン2から5にかけて一貫して収まる気配のない「R-99祭り」ともいうべき状態だった。そこでBocek氏としては、R-99が通常武器として出現する状況下において、ボルトがいかに存在感を示すかを確認しておきたいそうだ。R-99との競合を狙うためにもボルトは弱体化されないということである。
くわえて同氏の見解によれば、今のところボルトは非常に強力ながら“過剰ではない域”にとどまっているとのこと。とはいえ、今後R-99を押しのけるほどの威力を見せつけた場合は調整することにやぶさかではない姿勢を示した。ちなみに本件については別ユーザーより、「カジュアルプレイヤーとしては圧倒的にリコイル慣れしているR-99に軍配が上がる」との意見も。こちらに対してBocek氏は好意的な姿勢を示しており、単に銃の性能だけでなく、使い込んだ時間や手に馴染む感覚によって各プレイヤーの「推し武器」が多様化する状況を肯定している。
上位武器だけではなく、パワーカーブ下方に位置するオルタネーターSMGにまつわる話題も。特に何ら調整を受けなかったことについて、「こいつそんなにうまくやってたっけ?」との疑問が寄せられた。Bocek氏は、まずオルタネーターが決して競争力のある武器ではないことを認めている。その上で、同武器はそれでも多くの愛用者を抱えていることについて触れている。序盤〜中盤の繋ぎ武器として優秀なだけでなく、リコイル制御の簡単さやマガジンの大きさはエイムの苦手なプレイヤーに優しい作りだ。
以前、別のスレッドにてスピットファイアが初心者向けに設計されていることが語られたが(関連記事)、オルタネーターもユーザーフレンドリーな武器としてデザインされているということだろう。ホップアップのディスラプター削除以来、ハンマーポイントで光るモザンビークやP2020と比べられがちなオルタネーター。もうしばらく、今の控えめなポジションに収まる見込みとなりそうだ。
あるユーザーから挙げられたのが、スナイパーライフルのセンチネルにまつわる質問だ。ディスラプターモードが仕様変更となり、「敵シールドを残量によらず完全破壊」という特性から純粋に「ベースダメージの上昇」をボーナスとする「増幅モード」となった。質問者からは「新性能でのセンチネルでも一撃で相手を沈めることは可能か」との問いがあったのに対し、回答としては「175ヘルスの青シールドの敵(非鉄壁)ならワンパン可能。ただしヘルメットを着用していた場合は不可」とのことだった。小柄のキャラクターであっても、青アーマー・青ヘルメットを装備していた場合はヘッドショット一撃で倒すことができない。
もともとセンチネルの追加当初から、チャージ状態にすることでベースダメージを上昇させることは検討されていた。しかし、ワンショットキルの量産が懸念されていたために実装には至らず。かわりに、以前までの仕様である「シールド完全破壊」の機能が付与されたのだという。現在では進化アーマーの性能が変わり、ほとんどのプレイヤーがヘルメットを着用していることから一撃死の心配がなくなった。そのため当初想定されていた性能に戻されたそうだ。今後様子を見て、必要に応じてヘッドショットによるダメージ乗数を減らしていくという。
とはいえ旧型のセンチネルに恋い焦がれるファンは多いようだ。あるユーザーは125ヘルスを誇る赤アーマーを破壊する快感を偲びつつ、今回の処置はセンチネルにとって強化ではなく弱体化ではないかと指摘。Bocek氏はコメントを受け、一部のプレイヤーが古いセンチネルの方を使いこなし、より愛用していたであろうことを認めた。一方、旧センチネルの問題点として「1.ほとんどのプレイヤーが使いこなすには状況が限定的すぎて、メカニックに慣れるのが難しいこと」「2.多くのプレイヤーにとっては、どのような仕組みで作用するのか覚えられない混乱する仕様だったこと」を挙げている。というのも「シールド完全破壊」は一見強力に見えるが、相手が白〜青の低ランク帯アーマーを着ていた場合は恩恵を受けにくく、使用するケースを吟味する必要があった。
センチネルの変更は一部シチュエーションでは弱体化にはたらくものの、他の多くの状況においてはいっそうパワフルになるだろうとコメント。全体的に見れば強化として作用するとしている。センチネルを健全に、被弾者にとってストレスでないように調整していくことに対して、開発陣は手を焼いている様子。強化を入れる際はなるべく制御可能な範囲でテコ入れをおこない、その効果を個々の変更ごとに検証できるように心がけているそうだ。
『Apex Legends』におけるスナイパーライフル全般の強化には、かなり苦労の歴史があったという。シーズン2のロングボウ強化やシーズン3,4における新SR2本のリリース、狙撃向きに設計されたワールドマップの実装。こうした遠距離戦闘のプッシュにより、開発陣は本作における戦闘を深化させようと試みていた。しかし判明したのは、『Apex Legends』プレイヤーは狙撃されること・スナイパー対策のカバーをおこなわなくてはならない状況に、かなりのフラストレーションを覚えるということだ。チームはスナイパーライフル類の致死性について一考を求められることとなった。
さらに被弾側だけでなく狙撃側としても『Apex Legends』の長距離戦は割に合わない。キャラクターのヘルスの高さや弾速の遅さ、回復速度・緊急回避アビリティの多彩さがハードルとなり、スナイパーライフルによってキルを獲得することは非常に難しくなっていた。狙撃される側のストレスを減らすこと、そして狙撃したい側の満足度を上げることが、開発陣にとっての重たい課題となっていたのだ。
解決策として見出されたのが「SRが直接敵に打撃を与えるのではなく、なおかつチームにとって利益をもたらすようにする」との方針だった。具体的には、進化アーマーの標準装備化が大きい。遠距離から狙撃されることによって、敵はダメージを受けるが必ずしもダウンするとは限らない。かわりに、スナイプした方はアーマーを育てる上で大きな利益を得ることができる。これで撃たれた側のストレスを最小限にしつつ、撃った側にも相応の利益が出るようなバランスが目指された。殺傷力を抑えた現在のスナイパーライフルのバランスは、狙撃する側・される側双方の楽しみを損なわないように苦心して見出されたものだということだ。
Bocek氏の口により、さまざまな調整の秘密が語られた。実際にシーズン7を遊んだ諸氏の肌感覚としては、果たしてどのように受け止められただろうか。『Apex Legends』はPC(Origin・Steam)/PS4/Xbox One向けに配信中だ。