【求人】桜花スタジオにて次世代機向けアクションゲーム開発が進行中。風通し良く情熱をぶつけられる環境で、新たな面白さを創る渋谷拠点の新メンバーを募集中
NetEase Gamesは2020年6月、中国・広州ならびに東京・渋谷を拠点とする桜花スタジオを設立した。これまで『荒野行動』や『Identity V 第五人格』などのPC・スマートフォン向けタイトルを中心に展開してきた同社が、新設スタジオでは次世代コンソール向けタイトルの開発に注力していくという。現在、東京・渋谷拠点の設立にあたり、スターティングスタッフを募集中だ(採用情報ページ)。
桜のごとくモノ創りの度に輝くことができる、クリエイター本人も人生を謳歌できる場所として始動した桜花スタジオは、ゲーム創りにおいて何を得られるスタジオなのか。同スタジオは「普通に面白いゲーム創り」に注力しているが、それは一体何を意味するのか。今回は、桜花スタジオ代表の赤塚哲也氏、シニアゲームデザイナーの吉田亮介氏、プロデューサーの久保田光氏の3名にお話をうかがった。
───自己紹介をお願いします。
赤塚哲也氏(以下、赤塚氏):
NetEase Gamesに所属する桜花スタジオ代表の赤塚です。 バンダイナムコスタジオに二十数年在籍し、チーフディレクターとして対戦格闘ゲームからマルチプレイアクションゲームまで、有名タイトルのバトルコアシステム構築から総合ディレクター、および制作プロデューサーなどさまざまな企画業務に携わってきました。開発本部長就任後は、十数タイトルの開発プロジェクトを管理下に置き、プロジェクトリーダー複数兼任ならびに組織の問題解決やサポートなど自分の本部の管理業務などをしていました。現在は、広州でスタジオの組織創りや制作ディレクションならびに、渋谷拠点立ち上げなどを行っています。
吉田亮介氏(以下、吉田氏):
シニアゲームデザイナーの吉田です。カプコン在籍時はゲームデザイナーとして約12年間、『デビル メイ クライ5』や『戦国BASARA』シリーズ、『モンスターハンタークロス』シリーズなどの、プレイヤーや敵のアクションを制作するバトルデザインを中心に企画・担当してきました。『デビル メイ クライ 5』では、人気キャラクターバージルを担当し、その他敵ボスの制作やプレイヤーアクションの調整に携わっていました。7月に入社した桜花スタジオでは広州オフィス所属となり、現在は広州および渋谷の両拠点にてバトルチームのリーダーをメインとして担当しています。
久保田光氏(以下、久保田氏):
プロデューサーの久保田です。スクウェア・エニックスに2015年に入社し、『ドラゴンクエスト』シリーズのチームにプロデューサー候補生として参加しました。そこから海外生活の経験も活かし、シリーズ最新作である『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』の北米・欧州・アジアへのローカライズやプロモーションを含めた展開、マルチプラットフォームへの移植業務を担当してきました。この秋から入社する桜花スタジオでは、プロデューサーとして企画・制作進行・プロジェクト管理などを担当します。
普通に面白く創る難しさ
───桜花スタジオは「普通に面白いゲーム創り」に注力されているとお聞きしています。そもそもゲーム創りの定義とはなんでしょうか。ゲームにおいて「普通に面白い」とは?
吉田氏:
私が思うゲーム創りの定義としては、面白さの追求だと思っています。面白さというのは人それぞれで指標が異なったり、クセがあったりと、必ずしもこれが面白いというものは特定できないと思います。ただ、第一印象で感じるオリジナリティや目新しさは面白さの一つの指標だと考えています。ぱっと見どこかで見たことがあるという印象を受けると、オリジナリティのあるクリエイトされたものというよりは、何かコピーされた品物という印象を持ってしまう。そういった印象を持たれないよう、オリジナリティや目新しさの追求が面白さに繋がり、それらを追求していく事がゲーム創りであると思っています。
バトルにおいては、敵との戦闘中の手段や駆け引きにどれほど目新しさやオリジナリティを見出せるかというところが重要だと感じています。個人的にはそういう所をバトルチームのみならず、アーティストやエンジニア、サウンドデザイナーなどのさまざまなチームと連携しながら可能な限り面白さを追求し今後もゲームを創っていきたいです。
久保田氏:
私の中で「普通に面白い」という言葉と、自分の中でのゲーム創りの定義は、とても繋がりが強いものだと考えています。普通に面白いものを創るということがどんなに難しいことなのかを、ゲーム開発に携わってからの5年間で何度も挫折を繰り返しながら痛感してきました。自分のゲーム創りを定義するとすれば、頭の中で想像した「面白い!」をいかに劣化させずにお客様に届けるか、だと思っています。
開発に携わっていると皆、大抵の場合面白いことを思いついてはいるのですが、それを現場に持っていって、さらにお客様に届けるまでの間にたくさんの障壁を経験します。そんな中で、いろいろな状況や思惑によってものが削ぎ落とされたり、妥協されたりする部分もあるというのが新人時代に感じたことでした。ですので、協力してくれる方々にいかに熱意を伝え、同じ方向を向いてもらうか。「面白いものを創るというのが第一」だという点を共有したうえで、自分が思い描いたものをそのままお客様に届けることができればいいのかなと。それがゲーム創りだと考えています。
赤塚氏:
「普通に面白い」という言葉を誤解なきように説明させていただくと、面白いゲームを創るというのはとても難しいんです。もちろん、みんな面白いゲームを目指して必死に開発しているのですが、普通に面白いものがどれだけ世の中にあるかといわれると、結構少ないですよね(汗)開発者が面白いゲームを作ろうとする過程でそこにはいろいろな障害となる要素がありなかなかそこに辿り着けない。ですので、“なぜ普通に面白くできないのか?”という原因をできるだけ踏まえつつ、しっかりとしたゲーム創りをしていきたいです!制作者の自己満足や開発都合が見えるものを量産するのではなく、面白さのためのアイデアを考え、情熱溢れる作品が生み出せる環境を整えていきたいです。
あと、お客様がゲームタイトルに期待する面白みというのがあると思うんですね。基本的にはそれに沿う、もしくはその想像を超えるものを提供していく事が『普通に面白いもの』の提供だと思っています。それは続編物や新規物、タイトルごとにニーズが異なってくるので一概にはこれと言えないのですが、皆が共感できる本当に面白いものは何か、それには何を達成しないといけないのかをしっかりと押さえつつ、いろんな制作の上の罠を回避しながら堅実にゲームを創っていきたいと考えています。
───そうした、各々のゲーム創り論を形づくったものは何でしょうか?
吉田氏:
私の中でゲーム創り論を形成したのは、カプコン在籍時の経験が大きいと思います。開発中はゲーム全体や担当しているバトル要素の面白さに関する部分を企画書作成、ゲーム実装、最終調整など、それぞれの定められた期限ぎりぎりまで企画・調整していくといったところを常に意識するよう努力してきました。学生の頃は面白さの部分よりもグラフィックに惹かれたりしたんですが、面白さやオリジナリティを追求していく姿勢は、現場での開発に対する姿勢の影響が大きいかなと思います。また、普段ゲームをプレイしていてもそれらは、実際にコントローラーを握って10時間、20時間とプレイしてようやく気づくものあったりするので、学生の頃に比べればかなり細かい部分まで分析してゲームをプレイする癖はついていきましたね(笑)
また、ゲームのみならず、映画、アニメ、ドラマ、さまざまなエンターテイメントなどには多彩な面白さやオリジナリティが詰め込まれているので、そういった部分はどこなのか、分析癖をもって日々過ごす癖がつきました。
久保田氏:
私もこの業界で仕事をしていくにつれて、今の考えが形成されていったというところです。ちょうど新人時代を経験し終えて、いろいろと任されるようになった段階で感じたことなのですが、入社当時は憧れていた会社、憧れていた業界で、「これから自分の考えていた面白いものを実現してやるんだ!」といった意気込みで、無邪気に仕事に臨んでいました。そうした中で、学生時代にゲームを遊んでいた時に当たり前のように思っていた仕様や機能が実装できないもどかしさをたくさん経験しました。もちろん、それらは関わっている人が頑張っていないとか、実力が足りないのではなく、さまざまな理由でやむなく実現できなかったものです。それらの壁を乗り越え、素晴らしいゲームを創り出してきた先人のすごさをまざまざと見せつけられた事で、悔しい思いをしてきました。
そういった苦い思いを2年、3年と味わっていたんですが、その時とある憧れのクリエイターさんが「面白いものを考えるのは簡単だけど、それを具現化するにあたっていろんなことでどんどん面白くなくなっていってしまう。それらとどこまで戦っていくかがゲーム作りなんだ」と言っているのを聞いて、みんな同じ延長線上にいるんだという風に感じられたことで、かくたる意識になりました。そういった考えをスタジオ長である赤塚さんと共有できたので、この会社に入社したいと思った次第です。
赤塚氏:
私はアーケードゲーム畑出身で、自分が創ったものを目の前で、面白そうにプレイしてくださる、逆につまらなそうに遊んだのち二度と100円玉を入れてくれなかったり(笑)、高校生から社会人まで、さまざまなお客様の反応をダイレクトに拝見できる機会が多くあり、いろんなことを勉強出来ました。アーケードゲームを地道に開発してきたことで、自分が創った作品がどう受け止められているのかどう対応していくべきか真摯に考えるという感覚が非常に養われました。
今だとスマートフォン向けゲームを運営していく中でお客様の反応を観察している方も多いと思うんですが、コンソールゲームは一旦リリースするとそういう機会が少ないので、常にさまざまなお客様のペルソナ像を想像しながら制作していく癖付けができていたのは、その後のコンソールゲーム開発でも非常に良い経験でとても役立ちました。
ゲーマーとして向かい合うゲーム創り
───各々ゲーム論を形成する経緯が異なるというのも、興味深いですね。では具体的に、実際に遊んでみて面白いと感じたゲームをそれぞれ教えていただけますでしょうか。
吉田氏:
面白かったゲームはたくさんあるのですが、『Sayonara Wild Hearts』をちょくちょく思い出した時にプレイしています。道中でさまざまなアクション的な要求があって、それが音楽・映像・カメラワークといったいろんな要素にマッチしていて、連携がよくできていると感じました。QTEのようなお馴染みのシステムもありますが、要素の組み合わせによって斬新に感じることが出来ます。総じて目新しさ・面白さといったものを感じられるアクションゲームだと思います
───少し意外です。リズムゲームとしての印象もあるので。
吉田氏:
『Sayonara Wild Hearts』はリズムゲームとして浸透していますが、個人的にはゲーム内で何かしらのタイミングを要求されれば、それは一つのアクション要素だと思ってプレイしています。たとえば、本作の車やバイクに乗っているシーンであればライン取りをテンポよく行わないとゲームオーバーになってしまいますし、他の要素でもボタンをテンポ良く入力する要求があったり、さまざまなアクション要素が含まれています。
久保田氏:
面白いものにも、遊ぶ前から面白そうと思えるものと、遊んでみて面白かったというものがあると思います。選択肢が多様化している現代においては前者がとても大事だと感じますね。一般的に現在流行っているゲームも昔からある定番のゲームも、共通点は「ちょっとコントローラー貸してよ」っていかに言わせられるかというところかなと思います。
子供の頃は同級生とか友達の家に知らないゲームが置いてあって、面白そうに遊んでいるシーンを見たじゃないですか。それって今の配信者がゲーム実況しているのと同じ状況かなと。要は、見ている画面上で何をやっているかが分かりやすい。ルールが単純明快かつ直感的。これなら自分でも出来そうと思えて、遊んでいる人もすごく楽しんでいる。これらが合わさった時に、このゲーム買ってみよう、遊ぶためのハードが欲しい、といった流れになるのかなと思っています。売る側はいかにその流れをスムーズに作れるかが重要だと。『スーパーマリオ』シリーズも『フォートナイト』もそうですが、長々と説明しないでいいような、分かりやすいルールと直感的な操作方法が基準にあるんじゃないかなと思います。
今僕は『Apex Legends』を楽しんで遊んでいるんですが、逆に好みのゲームとしては『風ノ旅ビト』『INSIDE』『ワンダと巨像』といった「遊んでから分かるこの凄さ」みたいなのが割と好みだったりします(笑)個人の好きなゲームと、面白いゲーム創りで意識するゲームは違うということですね。
赤塚氏:
個人的に好きなゲームを挙げると、『ゼノブレイド2』です。あのゲームは、JRPGの行き着いた形の究極の一つかなと思います。お客様をとにかくいろいろな要素で楽しませようという思いがデータのひとつひとつに詰まっていて、随所にこだわりを感じられる作品です。非常に素晴らしい環境と才能豊かな方々が集まって制作されたんだろうなと思います。スタジオを建てようとしている自分としては羨ましい限りで、尊敬し拝みながら350時間を超えてプレイしていましたね(笑)
───『ゼノブレイド』はシリーズとしても面白いですよね。
赤塚氏:
『ゼノブレイド』シリーズは毎回斬新ですし、斜め上ではなく真上を行く、お客様の想像の超え方は、余程の力や環境がないと出来ないことだと思います。日本には世界に誇れるようなゲームタイトルはたくさんあると思うんですけど、『ゼノブレイド』シリーズはその中の素晴らしいひとつだと思って、いちゲームファンとして本当に愛しています(笑)
───それでは逆に、失敗について訊かせていただきます。ゲーム創りにおける、ありがちな間違いや失敗例はありますか?
吉田氏:
一般的には、やりたいと思ったことをいろいろ実現できた方が面白いんじゃないかと思われがちです。車に乗れたり、人をつかめたり、いろんなことができればいいと。ただ、大量にリソースを投入して何でもかんでも要素を増やせば楽しいものになるかというと、それは大きな間違いかなとは思いますね。ゲーム全体を通して根本的な軸がないままにリソースを投入したとしても、最終的には何が楽しかったんだろうとか、特徴がなく平凡なゲームになりがちで。まずは一番伝えたいところを定めたうえで、要素を選定して指定のリソースでうまく制作していくのが良いかと思います。昨今の大作においては、いろんな要素を詰め込みながらも、しっかりとした軸をもって作られているゲームが多いので、そこまで多く見る失敗話ではないですね。
久保田氏:
私も吉田さんと同意見です。お客様や社内の決裁者相手にゲームを提案する側からすると、風呂敷を広げたもの勝ちに見えがちなんですが、実際遊んでみて本当にすべてのピースがマッチしているかといったら、そうじゃないケースも結構あると思うんですね。インディーゲームでも少ないリソースを一点集中させて面白いものを創りあげていると思いますし、一番大事な所にリソースを投入して、身の丈にあったサイズのゲームの形を創っていくべきじゃないかなと思っています。
赤塚氏:
面白いゲームを創るには、お客様の期待するものの真上のものをしっかりと創るのが大事です。そのためユーザーのニーズを追いかけるべく皆頑張っていくのですが、自分もそうですが、そこを間違える開発者が多いと思います。収集したグラフやデータに変に捉われすぎて、机上の空論によってゲーム制作の方向を大間違いしてしまう、自分たちが考えたゲームを面白くするアイデアを磨くことよりデータに対応することに捕らわれるなどのパターンが罠としてどの会社でもよくあるのではないかと思います。
ほかにもよくあるのが、シリーズ物や既存作品に似たゲームを制作する際に、その作品をやり込んでいる方々の意見を重要視しすぎてしまいゲームがガチガチにコア化する場合があります。コアユーザーはそのゲームの優れた調整方法や改善案を提案してくれますが、逆に“そのゲームの次の遊び”に対しての新たなビジョンが見出しにくい方でもあると思います。その大好きなゲームを基準としてやりこんでいるのであまり変えたくない、守りたいという気持ちが無意識に働くからです。
───そのゲームを熟知しているのと、新しく創り出すのとでは違うと。
赤塚氏:
違いますね。私たちは熟知の上で、お客様の先のニーズを未来予測して次の新しい何かを創るのが仕事です。お客様と真摯に対話して、自分なりに次の作品への仮説を立てて創る。その後自分たちが情熱をかけて創ったものを確認するために、さまざまなテストやヒアリングといったものをありとあらゆる手段で行って、お客様の意見をしっかりくみ取っていくのが一番確かな製品創りだと考えています。
───なるほど。ちょっと趣旨は変わりますが、ゲーム開発においてそれほど重視されていないものの、個人的に重要だと感じられるものはありますか?
吉田氏:
一見気づきにくいという観点ですと、音の工夫による面白さの向上はあると思います。最近のゲームだと『Ghost of Tsushima』で遠距離攻撃をしてくる弓兵に良い工夫が施されてましたね。弓兵が矢を撃つ前に「腰を下げろ」っていうんですね。蒙古兵の場合だと毎回「ドーショー!ドーショー!」って大きな声で叫んでますよね。(笑)現実の世界で考えれば、大声で騒がないで撃った方が確実に倒せると思うんですけど、あえて毎回同じ台詞を言わせ、記号性を強調した上で攻撃の予兆として使ってるんですね。
───ああ、あれはそういう仕掛けだったんですね!
ゲーム中盤になってくると、その声が聞こえた時点で自然に回避している方が多いんじゃないかと思います。遠距離攻撃を敵が仕掛けてくるタイミングは正確にユーザーに伝えないと理不尽な体験をユーザーにさせてしまうことになるので、多くのゲームが遠距離攻撃の前に弓をかなり強調して光らせたり、UIで知らせたり。さまざまな工夫をしていますが『Ghost of Tsushima』の場合はそこを音の情報を中心に処理していてとても面白い試みだと思いました。結果として、プレイヤーに危険を知らせるため画面に余計なものが増えるという部分も回避できていますし、実際に音が聞こえると自然と弓を避けるようにプレイヤーを上手く誘導できているなと感じました。
久保田氏:
これはプロデューサー的な視点ですが、「ゲームに説得力がある、ハリボテ感がない」というところかなと思います。例として挙げると、『スプラトゥーン2』の広場にドリンクを売っているロブというキャラクターがいるんですが、商品の在庫が置いてあったり、裏のドアが開いていてロブが中にいたり、お店の裏側のオブジェクトや質感までリアルに作り込まれているんですね。そういった細かい造りの部分が、そこに世界があるんだという感覚を決定づけていると思います。逆にそれが出来ていないと、この世界は作られた世界なんだなと冷めちゃうしもっと知りたい探検したいという気持ちが失せるんですよね。特に没入感が大切なゲームでは重要なんじゃないかと思います。現場の開発者やお客さんからすると当たり前に聞こえるかもしれませんが、制作側では、こういう部分が拾えていないことが結構あるんですね。我々もそこは軽視してはいけないと思っています。
赤塚氏:
制作愛を測るということですね(笑)ゲームを創っている時にそのゲームがスタッフに愛されているかを観察するんですよ。デスクトップの壁紙が自分たちの作ってるキャラに差し変わっていたり、休み時間や定時過ぎにも関わらず皆で自分のゲームをプレイしていたり。そういう作品が愛されている雰囲気が自然と感じられる制作現場は成功確率が高いです。愛があるとただ仕様書通りではなく、キャラクターや舞台など世界が自然と練りこまれるんですよね。チーム内の話し合いなどが活発になる。現場の雰囲気によって自然と発生するコミュニケーション、面白さというのはある意味“面白いゲーム作り”の鉄板条件になってくるんだろうなと思います。それだけで作業効率は20~30%は上がります。うまくいっているチームは、よくまわりから盛り上がりすぎてうるさいと言われ怒られますね(笑)
───愛、大事なんですね。
赤塚氏:
当然大事ですよ。愛情が注がれてるかどうか、意外と気付かれにくいところではありますしね。最近は予算の関係で、海外に素材を発注する所も多々あると思うんですが、発注先でも愛をもって制作してもらえているのか?その後納品されてきた愛が足りない他の人が作ったものに誰が再び愛情を注げるのか?という点は昨今懸念されるところではあります。今回新たにスタジオを建てた理由のひとつとして、すべての関係者の作品への考え方が、はっきりと分かる、内外などの距離感を感じることのない、情熱をすべての制作物に注ぎやすい環境を創っていきたいという思いがあります。
───これまでのお話を聞くと、お三方は普段から結構ゲームをプレイされてるんでしょうか?
吉田氏:
最新の大作やインディーゲームなども、ひととおり触れるようにはしていますね。家庭を持ったり大人になっていくと単純にゲームに興味を持たなくなったり、そもそもプレイする時間を作ることが出来なくなるケースもあるようですが、私は家族の理解もありゲームを楽しくプレイする時間を作れています。また、先ほど「分析癖がついた」と話しましたが、時には自然体でゲームを楽しむよう心がけています。たくさん遊んでいますが、家庭を崩壊させない程度には抑えつつプレイしてます(笑)
───(笑)久保田さんはプロデューサー側として、ゲームを遊ぶことで学べるところはありますか。
久保田氏:
感銘を受けたシーンだったり、ここはすごいなと思う造りの部分は、開発の現場に戻ってから共有することがありますね。ただそれはあくまで副産物であって、個人的にゲームが好きなので有名なゲームは率先してプレイしますし、ライブ配信者がプレイしていて気になったゲームも遊びますね。ゲーム開発の現場から離れるような立場になっていくほど、忙しかったり、家庭の関係で触れなくなっていってしまうかもしれませんが、そうなってくると自分がプレイした事のあるゲームでしか面白さの想像ができなくなってしまうのではないかと。もちろん、ゲーム作りにおいてゲームに詳しいことがすべてではありません。映画・小説・絵画・音楽など、他のクリエイティブから学べることはたくさんありますので、そういう何かにアツい方と一緒にゲーム創りをしていきたいですね。
赤塚氏:
私のゲームコレクションすごいですよ(笑)いえ、集めることだけでなく遊ぶことも頑張ってますが、やっぱり時間が足りないですね。どうやって遊ぶゲームを厳選するかという問題もありますが、時間がかかるタイトルはお金払うからショートカットする機能を売ってくれないかなと最近真面目に考えてしまいます(笑)ムービースキップのない作品では、ムービースキップ機能を売ってほしくなる。読み込み時間短縮できるなら金払いますよと(笑)次世代機早くほしいですね。仕事としても、開発してきた作品の多くは、作品の歴史を理解していないとディレクターとして土俵に立てないものが多々あり、把握には苦労しましたが、基本的にはゲームは創るのも遊ぶのも趣味なのでそんな苦労も苦にはならなかったですね。
桜花スタジオはピラミッドを新しく創る
───桜花スタジオは立ち上がって間もないですが、作品創りにおいて重要視している点はありますか。こちらはスタジオ長である赤塚さまにお訊きします。
赤塚氏:
創っているゲームが、開発者自身が面白いと思えるかどうかですね。開発を楽しんでほしいんです。自分自身が面白いと思うものを創ればいいと思いますし、たとえば子供向けのゲームを創る時にもしっかりと面白いものを提案できて、自分がそれを創り出せていることに楽しみを見出せる。提案時にチーム全体を常に納得させるというのは難しいと思うので、意見の差が出来た時にさまざまな主張で戦いあう事を楽しめる事も重要です。すべてが面白みにかかっていると思いますし、私自身も仕事を楽しみながら皆と取り組んでいます。
いろんな仕事を楽しめる方。メンバーを楽しませるリーダー。楽しみは伝播していくので、そういう環境を創っていくという事が大切だと、一緒に理解して推進してくれる方々に集まってほしいですね。
───桜花スタジオではUnreal Engine 4が採用されているそうですが、採用に至った理由、また今後のゲーム創りで目指していくものがあればお聞かせください。
赤塚氏:
Unreal Engine 4は、良い意味で枯れているエンジンだと思います。扱いに慣れている方も多いですし、次世代コンソールの開発にも相性が良いですね。エンジンのカスタマイズ・教育コストや利便性など、ワールドワイド開発に取り組んでいく中で、さまざまな効率化が望めるものだと思っています。
今後は、各スタッフが持っているスキルや特性、国をまたぐNetEase Gamesが持っている強みを活かして、NetEase Games単独、あるいは他のパブリッシャー・デベロッパー様とも相互協力して作品を提供していけるようにさまざまな計画しています。すでに広州には60名以上のメンバーがいて、2019年年末ぐらいから動いています。更に渋谷でも大きく人材を募集していきます。その数からも、作品規模をご想像いただけると幸いです。
───具体的には今後どのようなタイトルを創られるのでしょうか?
赤塚氏:
桜花スタジオとしては、さまざまなアクション性を重視した作品ジャンルを今後注力して制作していきたいと思っています。ひとつは、完全オリジナルのマルチプレイバトルゲームを制作中です。MOBAやバトロワのコピーではない、新しいジャンル名を冠するものを目指そうと思っています。後、更に豊かな表現を持つ日本的なアクションRPGも制作したいと考えております。そのために渋谷拠点で10月から本格的な人材集めを加速していこうとしております。
───今回、東京・渋谷にスタジオを建てられた理由は何でしょうか?
赤塚氏:
逆に東京に作らない理由がないですね(笑)桜花スタジオは、質の高いコンソールゲーム制作ノウハウを持ったスタッフが必要です。日本で経験豊富なスタッフを集め、渋谷・広州間で同じ桜花スタジオのメンバーとして連携しながら、他社にはない強みの組み合わせや地の利を活かした、NetEase Games桜花スタジオならではの作品を創っていきたいという想いがあります。
───本題についてお訊きします。桜花スタジオに入るにあたって、ずばりどういったゲーム創りが学べるのでしょうか?
赤塚氏:
今大手ゲーム会社に入ったら、40代ぐらいの年代の人がたくさんいます。メインプランナーぐらいが30代後半。そこに若い子がまじって、5年、10年ぐらい勉強して、そこから徐々に大きなことをやらせてもらえますよね。20代後半、30歳前半になりますかね?
───板前システムですね。
赤塚氏:
桜花スタジオだと、いきなりいろんなことができます。これから始まるスタジオなのでナンバリングタイトルもないですし、チームメンバーの方も皆同じ土俵から始めるので、若手にとっても主要開発パートに取り組みやすい実力主義な環境だと思います。ゲーム創りは専門性高いですよね。だから勉強は大事なんですが、勉強していて気が付いたら同じ仕事だけ何年も従事している。重要職であってもゲーム開発経験なし、提案などは当然出来ないプロデューサーなど、そんなケースもありますね。ゲーム開発の経験のないプロデューサーと経験のあるプロデューサーなら、現場は信頼できる後者の説得力ある話を聞きたいですよね。そうしたバランスの悪い育ち方をしないように、ゲーム創り全体が学べる風通しの良い情熱を注ぎこめる環境を目指しています。
NetEase Gamesというある程度の規模や国際性のある会社が、新たなコンソールゲーム制作組織を一から組んでいく。そんな機会は非常に少ないので、他にはない、学ぶチャンスの幅も大きいと思います。昨今は少子高齢化になり、組織ピラミッド構造が固定化してきてます。そんな中で、ベテランと若手のバランスの取れた良い学習ピラミッド構造を作っていきます。
また、言語に強いスタッフもいますので、開発における言語バリアをサポートする体制も整えています。英語や日本語の文章を一生懸命勉強している中国の方が世界中から知識を得た上で起こしているドキュメントなども日本語にどんどんしていきますので、そういう意味でも若手が学習する手段がたくさんあるものだと認識しています。
───ヒエラルキーのない環境でゲーム創りができると。
赤塚氏:
互いにサポートしあえる良い学習ピラミッドは作りますが、ヒエラルキーはないですし、いらないです。プロジェクト内のヒエラルキーはあります。リーダーに権限ないと開発進みませんしね(笑)ただ部長・課長などといった役職はありません。桜花スタジオで意見など衝突する際には、偉さではなく実力と実績で殴り合ってもらいます(笑)やはり開発スタジオですので、ゲームを創る能力を評価し、そこに対価をしっかりガッツリ支払っていきたいと思います。年功序列からは抜けたいですね。ヒエラルキーのようなものはあまり好きではないんです。部下からきつい意見もらえないようになったらゲーム制作者としておしまいですからね……。まあもう少し皆私にやさしくしてくれないかなあと思うことはありますが(笑)
NetEase Games含め中国企業は実力主義の側面が強いです。なので、われこそは実力ありと思う若い人は、何も心配しなくていいです。逆に口や飲みにケーションなどの社内政治調整能力だけあるという方は、面接通過するのはかなり厳しいかと思います。
───現在は中国スタッフの方が多いのでしょうか。中国語が喋れないとやりづらいことはありますか。
赤塚氏:
中国語や英語は渋谷では必要ないかと思います。残念ながら私もまったく中国語喋れないですし、渋谷スタジオに入った場合、9割5分以上は日本人のメンバーですね。もちろん、いろんなインスピレーションを得たいという方は渋谷広州とスタジオ間を行き来していただければいいですし、逆に飛行機苦手という方は渋谷スタジオのみで頑張ってもらえれば大丈夫です(笑)このリモート勤務の時代、家がちょっと遠い仲間がいると思ってもらえれば幸いです。
───オフィスの労働環境はどうでしょうか?
赤塚氏:
渋谷駅から徒歩5分なので立地もいいですし、オフィス内も「開発者にやさしい」を合言葉に、落ち着いてモノ創りに没頭できるような居心地の良い雰囲気にしています。みんなでスポーツで体を動かしたり、美味しいもの食べにいったりするような、コミュニケーションのサポートも会社全体で頑張っていきたいです。
───リモートワークはどこまで導入されていますか?
吉田氏:
私はすでにリモートで仕事をしています。昨今の状況に対する丁寧な配慮もされています。リモートワークのための機材だったり、ネットワーク回線といった環境のフォローも丁寧でやりやすいです。
赤塚氏:
自社はネットワーク面に長けた会社ですので、そのあたりは安心していただけると。個人の生活や、ゲーム開発をしていくうえで必要なコミュニケーションの知恵や手段も会社としてバックアップしていきます。世の中の流れにあった、ゲーム創りしやすい形を柔軟にサポートしていこうと思っています。
───何かと風通しがいい会社という印象を持ちました。
吉田氏:
自分たちで「風通しがいい」と強調しすぎると胡散臭く聞こえるかもしれませんが(笑)でも本当に風通しはいいと思います。
久保田氏:
私は桜花スタジオに加入して間もないので、今でもこれからの仕事に期待に胸を膨らませている感じですね。今まで働いてきた中で感じた悔しさだったり、もっとこうなったらなっていうところに、赤塚さんがお話されていることがグッときたので期待して臨みたいと思います。
赤塚氏:
風通しが悪かったら私が困るんです。嘘つきにはなりたくないですので(笑)NetEase Gamesの私の上司レイヤーでゲーム創りが分からない人は一人もいません。皆何かでしっかり結果を残し実力であがっていった方々ばかりです。ハンコラリー的な経路も実際ほぼないです。開発を強くしていくために理にかなった方法をしっかり常に見直し考えていきましょうという方ばかりです。NetEase Games自体、どこまでもゲーム開発スタジオなんです。役員も開発畑出身者ばかりですので、開発のために必要なことに対しての風通しはとてもいいんですよね。
───公式サイトのキャッチフレーズに、開発者に寄り添うような内容が多かったのは、そういったコンテクストがあったんですね。
赤塚氏:
むしろ、この会社で開発に寄り添わない生き方はできないんですよ。多くの会社でビジネスチームが権限を握る印象があります。ビジネスの話を作って整備して、各開発スタジオがゲームを作ってビジネスを成り立たせていくやり方ですよね。NetEase Gamesの場合はそういう場所ではなくて。NetEase Games自体が巨大なデベロッパーなので、ゲーム開発に対する価値の見出し方や、施策のうち出し方などが他社とは違うかなと。
NetEase Gamesにはゲーム開発者の価値や待遇や立場をきちんと整えようというマインドが強く根付いております。それをうまく継承しつつ、それでいて日本人ならではのスタジオを立てていこうというのが、桜花スタジオです。頑張ります。
───スタジオポリシーがよく理解できました。今後のご活躍を期待しています。ありがとうございました。
現在桜花スタジオでは、共に働く人材を募集している。10月1日より公式ページ上に記載されている募集職種も大きく拡大したので、一度は公式ページに訪れた人も、そうでないひともぜひチェックしてほしい。公式ページにおいて募集しているのは渋谷拠点にて勤務するメンバーだが、広州拠点での業務にチャレンジしたい、という方の問い合わせも受け付け中とのこと。その場合は公式ホームページ内の「問い合わせ」フォームより連絡いただければ対応できるようだ。我こそはと思う人はぜひチャレンジしてほしい。