『ポケモンGO』『ポケモン剣盾』で「色違いの希少性」は下がったのかとの議論加熱。変わりゆく出現確率と変わらぬ魅力
海外メディアNintendo Lifeにて『ポケットモンスター』(以下、ポケモン)シリーズにまつわる議題が注目を集めているようだ。すなわち「色違いポケモンはもはやレアではないのか?」という提言である。
色違いポケモンが出現するようになったのは、『ポケモン』がカラーになった『ポケットモンスター 金・銀』からのことだ。その名のとおり通常とは異なるカラーリングの個体で、出現時にはきらびやかなエフェクトが入る。見た目が異なる以外にはふつうのポケモンと同じステータスだが、その希少性から常にマニアの熱望を受けてきた。野生の色違いと自然に遭遇する確率は、『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』に至るまでわずか8192分の1であった。
「ひかるおまもり」「連鎖」の出現
ただしシリーズを通して、色違いと出会う確率を底上げする方法も導入されてきた。たとえば『ポケットモンスター ブラック2・ホワイト2』より手に入るようになったアイテム「ひかるおまもり」を所持していると、遭遇率が3倍に上昇する。また、シリーズを統括する増田順一氏のブログ「増田部長のめざめるパワー」の記事にて明かされた「国際孵化」法も有名だ。預かり屋にポケモンを預けてタマゴを産ませる際、それぞれ異なる言語バージョンのソフトから連れてきたポケモンを両親とすることで色違いの誕生率が上昇。第4世代では4倍、第5世代以降では6倍の効果を発揮する。さらに第6世代以降は自然遭遇率そのものが倍加し、4096分の1となった。これらの数値は相互に作用し、たとえば「1.『ポケットモンスター X・Y』以降の作品で/2.ひかるおまもりを所有しながら/3.国際孵化を行う」と、色違いの発生率は512分の1となる(18倍になるわけではないので注意)。
このほか『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』〜『X・Y』で入手できる「ポケトレ」で同じポケモンを出現させ続けたり、『X・Y』以降同じ場所で連続して同じポケモンを釣り続けることで発生する「ポケトレ連鎖/連続釣り」により、さらに色違いの出現率を高めることができた。また『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』では連続ゲットのコンボボーナスによってチャンスが増大する。しかし「ひかるおまもり・連続釣り・連続ゲット」の恩恵をすべてもってしても、色違いの出現率は約273分の1。初期と比べれば飛躍的に恵まれているとはいえ、依然として「レア」な存在であることは疑いなかった。なお『金・銀』の「赤いギャラドス」をはじめイベントで確実に入手できる色違いや、少ないながらリアルイベントで配布される色違いも存在。一方でストーリーにかかわる伝説のポケモンなどには「色違いブロックルーチン」が作用し、システム上絶対に色違いが出現しないこともある。
ライブサービス時代の色違い
風向きが変わったのは『ポケモン』シリーズにてライブサービス系のコンテンツが配信されるようになってからだ。代表的なものは『ポケモンGO』だろう。スマホ用アプリとしてプレイできる本作だが、『Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』を経由することでゲットしたポケモンをメインシリーズへ連れてくることも可能となっている。『ポケモンGO』で色違いが導入されたのは2017年3月。「みずタイプのポケモン祭り」にて金のコイキングが実装されたのが始まりだ。これ以来イベントのたびに新たな色違いポケモンが少なくとも1種類は実装されるのが恒例となった。
とはいえ、『ポケモンGO』における色違いはメインシリーズに比べるとそれほど珍しい存在ではないことが知られている。その出現率は平均で400分の1程度と、本編のベース値よりやや高い。そのポケモン自体の出現率が低ければ、色違いである確率は上がるようだ。進化形の色違いポケモンは野生では現れないため育成で入手する必要があり、やや難易度が高い。とはいえ『ポケモンGO』ではレアポケモンの出現率増加イベントが頻繁に実施されるため、容易に進化が可能になるだろう。また毎月特定の日時に限定で開催される「コミュニティデイ」イベントの間は、色違いポケモンの出現率が20匹に1匹程度と飛躍的に高まる。その影響力は大きく、イベント時に色違いが出ないとの苦情が出るほどだ。
最新作『ポケットモンスター ソード・シールド』において、色違いの入手難度は過去最低レベルまで落ちているといえる。まず『ポケモンGO』で実装済みの色違いポケモンを容易に迎えられることは想像に難くないだろう。それ以外でもゲーム中で色違いを求める上でシステムに進化が見られる。従来のポケトレ連鎖に類するシステムがさらに発展を遂げ、同一のポケモンとバトル・捕獲した数に応じて色違い出現率が上昇。4096分の1から約682分の1まで高まる。ひかるおまもりを所持していれば512分の1にまで底上げ可能だ。もちろん国際孵化+ひかるおまもりを利用した手法も健在で、同様に512分の1まで色違い出生率を高められることが確認されている。そして定期的に開催されるマックスレイドバトルイベントも、7月には報酬として色違いのゼラオラが配布されるなど新たなチャンスを作り出している(関連記事)。
*なお『ソード・シールド』では色違い出現時のエフェクトが2種類になった。
「手が届く憧れ」とトレーナーごころ
ここまでの変遷を経てNintendo Life記者が提示しているのは、「色違いポケモンの希少性は下がってしまったというべきか?」との議題である。まず『金・銀』時代のクラシカルな色違いと比べれば、数値の上でのハードルは確実に下がっているといえるだろう。また確率が下がっても歴代作品では膨大な作業時間という関門があったが、現在ではイベント配布等の機会が増え容易に色違いと出会えることが増えた。『ポケモン』自体がライブサービスとしてのコンテンツにかたちを変えつつあることも時代的な影響としてあるだろう。
コメント欄ではユーザー間の盛んな議論が交わされている。「“ひととおりストーリーを楽しんでプレイを終えるユーザー”がいちどだけ出会う程度の出現率なら、カジュアル層に優しいといえる」との意見や、「そんなこといったって俺は出会ったことないよ」との声までさまざまだ。将来的に全色違いポケモンの図鑑を目指しているというコアユーザーは「色違いポケモンに帰する価値は、それらを手に入れるためにプレイヤーが費やした努力にある」と語る。自身が1万3340回のトライの末ようやく『ポケットモンスター ハートゴールド』で手に入れたサンダーの色違いが『ポケモンGO』で容易にゲットできるようになったとしても「全然気にしてません」とのこと。
憧れの色違いポケモンが手の届く存在になったという事実は嬉しくもある一方、かつて御三家リセマラや孵化厳選・ポケトレ連鎖に明け暮れたトレーナーにとっては複雑な思いもあるだろう。とはいえ、ステータスなど実用面では何の違いもない色違いポケモンがこれほどまでに話題を盛り上げるのは、やはりそこに何にも替えがたいロマンがあるということ。時代が変わっても色違いポケモンはまだまだ人々を魅了していきそうだ。