『フォートナイト』にて「#FreeFortniteカップ」開催へ。「腐ったリンゴ」「コミュニティ全体で一緒にプレイできる期間は残りわずか」とApple批判姿勢崩さず
Epic Gamesは8月21日、『フォートナイト』の最新イベント「#FreeFortniteカップ」の開催を発表した。8月23日に開催されるトーナメントであり、4時間の間にソロプレイヤーとして最大12回のマッチに参加し、スコアを競う。「#FreeFortnite」は、Appleに対する抗議運動として使われているハッシュタグ。イベント名として同ハッシュタグを用いているように、Apple批判運動を関連させた内容となっている。イベントについて「友達のみんな。最高の賞品。そして腐ったリンゴ」と説明していることからも、Epic GamesのAppleに対する考えは明らかだろう。
#FreeFortniteカップの説明ページにある「フォートナイトコミュニティ全体で一緒にプレイできる期間は残りわずかです」との記載は、現在『フォートナイト』のモバイル版がApp Store/Google Playから削除されていることと関係している。Epic Gamesが各ストアのガイドラインを破り、ストア指定の決済手段を回避する、独自決済手段をゲリラ実装したため、アプリがストアから削除されたのである。
ストアからのアプリ削除にともない新バージョンへのアップデートができなくなったため、iOS版のプレイヤーは8月27日に開幕するチャプター2 – シーズン4に参加できず。チャプター2 – シーズン3に取り残されることとなる。そうした意味で、「コミュニティ全体で一緒にプレイできる期間は残りわずか」なのだ。なおAndroidユーザーは、Google Playからアプリをダウンロードできなくなったものの、Epic Games Appからはダウンロードできるため、引き続き今後のゲームアップデートを適用できる。
取り残されるiOS版のユーザーに向けては、「PlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、PC、Mac、GeForce Nowで、epicgames.comまたはSamsung Galaxy StoreからEpic Games Appにアクセスし、引き続きパーティーを楽しもう。ソーシャルメディアで#FreeFortniteを使用して@AppStoreへの反対運動に参加しよう」と案内。他プラットフォームへの移行を勧めると同時に、抗議運動への参加を促している。「代替となるフォートナイトプレイ可能デバイス一覧」ページへの誘導も確認できる。
イベントのルールとしては、4時間にわたる#FreeFortniteカップ開催期間中にソロプレイヤーとして最大12回のマッチに参加し、ポイントを競うという内容。ポイント加算の仕組みは「バトルロイヤル島で3分経過ごとに1ポイント」「撃破ごとに1ポイント」「Victory Royaleごとに10ポイント」となっている。10ポイント獲得賞品としては、先日公開されたApple批判動画「Nineteen Eighty-Fortnite」に登場したビッグブラザーリンゴの「タルトタイクーン」を入手可能だ。
各地域(全体で20,000人)の上位スコアプレイヤーには、#FreeFortniteハット(帽子)が贈呈される。そのほか、Alienware Gaming Laptop、Samsung Galaxy Tab S7を含む、1200個のゲーミングハードウェアを賞品として用意。当然Apple製品に関連したものはなく、Epic Gamesは「iOSでなくても、フォートナイトをプレイできる素晴らしい環境は存在します」と説明している。
Epic Gamesは、8月14日に『フォートナイト』がApp Store/Google Playから削除された直後、AppleとGoogleに対し訴訟を起こしている。両社の反競争・市場独占に異を唱えるものだ。Appleに対しては、デバイス上でのアプリ配信手段を制限していること、アプリ内課金の決済手段をApple指定の方法に制限していること、そうした独占状態を築いた上で30%という高い取引手数料を課していることを指摘している。Epic Gamesのように独自のアプリ配信ストア、独自の決済手段を設ける力のある企業が、市場競争に参加できず、結果としてユーザーが不利益を受けていると。
そうした論点とは別途、ガイドライン違反だとわかった上で独自の決済手段を実装し、ユーザーに不便を強い、すべてAppleが悪いのだとユーザーを扇動したEpic Gamesの手口も議論の的になっている。「Appleは、あなたのフォートナイト最新アップデートの入手を拒否しているのです!」「#FreeFortniteをソーシャルメディアで使用して@AppStoreへの抗議運動にぜひ参加してください」と、ガイドライン違反である点は伏せつつ、ユーザーによる抗議を促進。マーケティングマシンとしての『フォートナイト』をフル活用し、「Apple=悪、Epic Games=悪に立ち向かう正義の味方」という構図を確立しようとしている。
*Epic Games CEOのTim Sweeney氏自身はiPhoneユーザーである
ただ、こうしたセンセーショナルな手段を取ったことで、ゲーム業界内外から強く注目を集めることには成功している。自利的な目的ではなくデベロッパーのために戦っているのだと発信し、『フォートナイト』のユーザー、そして同社のUnreal Engineまで巻き込んでの紛争に仕立て上げることで、単なる企業間のトラブルを超えた熱い注目を浴びている。必然的に、なぜEpic Gamesがこのようなアクションを起こしたのか関心が集まり、状況を解説する記事やコンテンツが増え、Epic Games側の主張が広く発信されるようになっていった。
Epic Gamesが「コミュニティ全体で一緒にプレイできる期間は残りわずか」と記載しているように、Epic Gamesが独自決済手段を削除してApp Storeに『フォートナイト』を復活させる気はないし、Apple側がそう簡単に引き下がらないことも見越しているのだろう。Appleは、規約違反ゆえ8月28日までにEpic Gamesが修正対応に応じなければ、Epic Gamesの開発者アカウントを削除すると通告している。そしてEpic Games側は、アカウントを削除されるとiOS/Mac向けのUnreal Engine提供にも支障が出るとして、裁判所にAppleへの差し止め命令を求めている。このまま開発者アカウントの削除に至るのかが、次の注目ポイントとなるだろう。
これまでの経緯はこちら:
『フォートナイト』運営元、AppleとGoogleを提訴へ。禁じられた「ストア手数料回避」販売のゲリラ実装により、App Store/Google Playからアプリを削除されたことを受けて
『フォートナイト』のEpic Gamesに対し、Appleが開発者アカウント削除警告。Epic Gamesは、Unreal Engineの開発にも支障が出てしまうと主張