『レッド・デッド・リデンプション2』で突然のゴリラ。戸惑いつつ自撮りするガンマンたち

 
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Rockstar Gamesが2018年にリリースしたオープンワールドゲーム『レッド・デッド・リデンプション2(以下、RDR2)』。発売から2年目となる現在も広大な世界に酔いしれるプレイヤーは絶えず、昨年末に追加された「フォトモード」機能がガンマンたちをさらなる流浪の旅へ誘っている。そんな歴遊の途上では時として珍しい景色を見られることも少なくない。そして『RDR2』には、発売当初から数々のプレイヤーの目を惹きつけてきたある奇景が存在する。そこにいるのは、ゴリラだ。

ウェストエリザベス州・ストロベリーの北に架かる橋の下。その場所でゴリラは前触れもなく現れる。はじめて遭遇したプレイヤーは驚くとともに、すぐさま銃を構えるだろう。しかし程なくしてその必要はないことを悟るはずだ。ゴリラは微動だにせず凍りついているからである。どうやら生物ではなく作り物、剥製の類らしい。試しにショットガンをけしかけてみると、果たして吹き飛んだ首の断面から詰め込まれた綿が垣間見える。よく周囲を観察すれば、ゴリラは背後にある大きな木箱から転げ出てきたように見える。辺りに他の箱も散乱していることから、これらはおそらく橋の上を輸送されてきた荷物だとわかる。何らかの事故で転落し、崖下で風雨にさらされるようになったのだろう。ひとまず想像を巡らせ答えを出したあと、多くのプレイヤーが同じ地点にたどり着く。「なんでゴリラ?」。唐突なゴリラの出現は脳を混乱させるのか、不思議な魔力をもっている。この剥製に出会った人々は皆、自撮りで記念撮影せずにはいられないようなのだ。

「誰か間違ってゴリラ置いた?」と率直に疑問を呈するこちらのプレイヤー。ただ報告するだけならゴリラだけを画角に収めればいいのだが、なぜかわざわざ自身の姿も並べて記念写真風の1枚となっている。律儀にポーズをとるアーサー・モーガンが、景勝地に来たオジサンのようなおかしさを醸しだす仕上がりだ。

もっとヤンチャな観光客風のアーサーも存在する。こちらのプレイヤーはよりゴリラに接近したツーショットを試みている模様。カメラ目線の表情から「してやったり」なニヤつきも見られ、旅先の思い出らしいスナップといえるだろう。見ようによっては生きたゴリラと記念撮影をかます様子に見えなくもない。まるで本物のゴリラなだけあって、調子づいた不良中年が次の瞬間には無残な姿になっていないかと不安を呼ぶショットでもある。

剥製の生命感をより意図的に利用したのがこちらの1枚。シチュエーションが確信犯だ。冷たい雨が降りしきるなか、凍える体をさすりながら駆け寄ってくるアーサー。ゴリラはまるで彼を迎えるかのように身を乗り出している。このまま暖かい家に招き入れてもらえそうな構図だが、当然背後にあるのは破砕された木箱の残骸だけ。もしかしたらゴリラは身を挺して雨から庇ってくれるつもりなのかもしれない。束の間のハートフルストーリーを想像させる作品だ。

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こちらはRedditに投稿された画像。添えられたキャプション曰く、“When your friend needs a shoulder to cry on.(友だちが肩を借りて泣きたいとき)”。ゴリラが突き出した腕はまるで庇護を求めるかのようにアーサーの腰に回され、胸に押し当てた顔はどこか悲しげに見えなくもない。そう思って見ればアーサーの眼差しも神妙で感傷的に思われてくる。悲しみに暮れる友人に黙って肩を貸す姿は、義に厚い彼のキャラクターとマッチしたシチュエーションといえるだろう。こちらの写真がポストされたのはつい先月のこと。『RDR2』の発売から現在に至るまで、ゴリラが人々の心に引っ掛かり続けてきたことの証左ともいえそうだ。

ところで結局、ゴリラは何だったのか。誰がゴリラの剥製を詰め込んだ荷物を引き取ろうとしていたのか。明確な回答が示されることはないが、実はゲーム内のヒントからある程度の推測をつけることができる。鍵となるのは作中に登場するサブミッション「より良き世界、新たな友人」だ。依頼の内容はミス・ホブスなる女性の求めに応じ、さまざまな動物の死骸を欠損のない綺麗な状態で納品するというもの。すべての要求をコンプリートするとミス・ホブスから招待状が届き、動物を使った彼女の「作品」を見せてもらうことができる。その正体は、剥製にした動物たちを用いたシルバニアのようなジオラマ作品の数々だ。ホブス婦人宅には大小問わずあらゆる動物の剥製が飾られている。そしてこの家が建つのはウェストエリザベス州・ストロベリーの北東、ゴリラ出現現場からほど近い位置なのだ。これらの情報から、ゴリラの剥製はミス・ホブスが何らかの手段で取り寄せ、道半ばで打ち捨てられてしまったものではないかと推測することができる。果たしてゴリラはいかなる姿で飾られるはずだったのか。その真実は婦人だけが知っている。

時に道すがら謎をもたらしつつ、『RDR2』の世界はいまだにプレイヤーを魅了してやまない。特に昨今の外出しにくい時世にあっては、巣ごもりで鬱屈した気分を広大な西部で慰める人が多いようだ。そうしたプレイングの楽しみを卓越した才で切り取ってみせているのが、プロ写真家のゲーマーたち。フォトグラファーのsixstreetunder氏は『RDR2』内で撮影したといういくつかのストリートスナップをInstagramに投稿。まるで本物の街路の空気を収めたかのような写真で評判を呼んでいる。同氏は「ゲーム内の時間に沿ってライティングを追いかけるのはとても難しい」としながらも、『RDR2』を「ハイキング・シミュレーター」と評して散策を楽しんでいる。ほか同じくストリート・フォトグラファーのsleepingastronaut氏もフィルム・ノワールのように鮮烈なゲームフォトを投稿している。

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細部に至るまで作りこまれ、見る者を圧倒する『RDR2』の世界。中には「殺人絶景フォト」など一風変わった楽しみ方をする人間もいるが(関連記事)、荒凉たる美しき大地に魅了されるのは善人もアウトローも変わらないようだ。おいそれと気晴らしもできない今こそ馬にまたがり、道ばたで思いもよらない出会いを探すのも一興だろう。珍しいものが見つかったら自撮りをアップするのを忘れずに。ちょうど現在、Epic Games ストアにて実施中の「Spring Sale 2020」で本作がセール対象品となっている(関連記事)。期間は日本時間で4月17日1時までとなっているため、まだプレイしていない人はこの機に手を出してみるといいだろう。