ゲーミングノートPC「NEXTGEAR-NOTE i5751」レビュー。有機ELで、ゲームはどこまで映えるのか
マウスコンピューターから発売されているゲーミングノートPC「NEXTGEAR-NOTE i5751」シリーズ。CPUにノートPC向けながら6コア12スレッドに対応するIntel「Core i7-9750H」、GPUにはNvidia「GeForce RTX 2070」を採用しており、最新のゲームタイトルをプレイするのに十分なスペックを確保した上で、4K解像度対応の有機ELパネルによる高画質を謳う製品だ。
有機ELパネルとは、ざっくり言って従来の液晶がバックライトとフィルターによって色を表現していたのに対して、有機物を発光させることにより絵を表示するもの。その原理によって、純粋な黒の表現や高コントラストを実現しているという触れ込みだが、実際のところゲームプレイに有機ELディスプレイを採用することに意味があるのか、というのが本稿のメイントピックとなる。なお結論を先に書いてしまうと、確かに有機ELパネルはゲーム体験を向上させうるものだった。
今回レビュー用にマウスコンピューターから貸し出しを受けた「NEXTGEAR-NOTE i5751GA1」の主なスペックは、上記のとおりとなる。そのほか、排気口は背面に2箇所、右側面に1箇所の合計3箇所。USB3.1(Type-C)が右側面と側面の2箇所、USB3.0が3方向にそれぞれあり、マウスとゲームパッドを挿しても余る。電源ボタンはキーボード右上部に配置されており、背面にはHDMI端子/Mini Display Port端子も搭載。有機ELディスプレイは4K(3840×2160)解像度に対応する一方で、60hzで動作している。
テスト
ゲーミングノートPCとは、我々ゲーマーにとってゲーム機である。どんなに高精細なディスプレイを搭載していようと、どんなに色鮮やかにキーボードが輝いていようと、ゲームが満足に動かないのなら高価な暖房器具が部屋に新しく増えるだけに等しい。本機がカタログ上十分なスペックを有していることは明白だが、念の為4Kを含む3種類の解像度でベンチマークを行った。今回採用したのは、3種類のベンチマークに加えて、未だ勢いのあるバトルロイヤルタイトル3種と、8月30日に発売されたホラーゲーム『Blair Witch』。なお、OS側の設定などに変更は加えず計測を行っている。
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」では、描画負荷が軽めなこともあり、WQXGAでも平均フレームレートは76を記録しているが、一方でフルHDであっても大勢のプレイヤーがスキルを使用しているような一部シーンではフレームレートの落ち込みが見られる。GPU-Zで計測中の負荷具合を確認したところ、GPU Loadが100に達していない状況でもフレームレートが低下していたので、CPUがボトルネックになっているとみて間違いないだろう。そうしたシーンに目を瞑るなら、フルHDはもちろんWQXGAでも十分に動作すると言える。4Kでは平均フレームレートが42となってしまっている為、設定や解像度の変更を検討したほうが良さそうだ。
「ファイナルファンタジー XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では、解像度の高まりに伴って順当にスコアが低下している。また「SteamVR Performance Test」では、平均忠実度11(非常に高い)となっており、VR用途には十分対応しているようだ。
以降のテストでは、ベンチマーク機能が各タイトルに搭載されていないため「OCAT」を使用して平均フレームレートと99th-percentileを測定し、99th-percentileを元に最小フレームレートを計算してグラフに掲載している。
上記がバトルロイヤルタイトル3種でのテスト結果となる。それぞれ4K解像度では60fpsを維持できていないが、それ以下の設定では十分なフレームレートが確保できている。『PUBG』については、4K中設定で測定してみたところ、平均フレームレートが64となったので、4Kでのプレイも視野に入るかもしれない。
ここまでテストを行ってきたが、フルHDではスペックを持て余しており、2019年のゲーム機としても十分な性能を持っていると言っていいのではないだろうか。ただし、4K解像度に対応していると言っても4K解像度で満足にゲームをプレイするためには、設定とタイトルを考慮する必要があり、表示できるからといって4Kに対応していると言うのは厳しいかもしれない。
有機ELの実力は
スペックを確認したところで、改めて有機ELの実力を見ていこう。純粋な黒の表現が出来ると謳われていることもあり、ホラーゲーム『Blair Witch』を30分程度プレイし、その後比較用として貸し出しを受けたほぼ同スペックで240hz対応の液晶モニターを採用したモデル「NEXTGEAR-NOTE i5750GA1」を横に置いた状態で、上記の画像を使って比較した。
有機EL側が光沢のあるグレアであるのに対して、液晶側がノングレアであることも無関係ではないだろうが、確かに有機ELの画面は綺麗だ。液晶側では画面全体がぼんやりと暗く表示されていたのに対して、有機ELでは細かな色の差異や色見の違いまで映されているような印象で、闇はより深く鮮明に描かれており、目を凝らせばわずかに青くなった空間の中に、木々が見えている。懐中電灯の白い光も、有機ELでは違いが見られ、中央がわずかに明るく描写されていた。また、すでにクリア済みのため先の展開はわかっているのだが、それでも暗い森の中を歩いていると「何かが飛び出してくるのでは」と思わずに居られなかった。そうした没入感は、有機ELがもたらしもののひとつだろう。
テスト中長時間目にしてきた画面でも、有機ELでの映像が綺麗に表示されていることは同じ。『FF14』では、キャラクターやオブジェクトの質感もより繊細な色合いで表現され エフェクトがより派手に。 『Apex Legends』のトレーニングモードでは、ファンから吹き出る熱風と相まって、温度が感じられそうだった。全体的により鮮やかで艶があり、生々しく世界が描かれる。有機ELが映像表現を補強しうるのは間違いないだろう。
発熱とファン
気になる発熱についてだが、アイドル時はGPUが概ね55度、CPUが60度から65度ほどで推移。負荷時はGPUが最高で82度、CPUは90度以上に上昇し、最高で100度にまで達していた。グラフ下部の2点は、ピーク時にノートPC表面の温度を測ったものだが、操作中キーボードのDが熱く気になったので、そこも調べてみるとキーボード上部とほぼ同じ44.9度となっていた。
発熱から予想できるとおり、ファンも相応にうるさい。負荷がかかると3方向から温風が吹き出し、嵐の中雨に打たれているかのような騒音が室内に鳴り響く。音量を測定してみると、エアコンとデスクトップPCのファンが作動している状態の室内から、「NEXTGEAR-NOTE i5751GA1」のファンが回り始めることで20db以上(参考程度)音量が上がっていた。
キーボードが熱いと言っても操作できないほどではなく、ファンの音量も何も聞こえないほどでない。どちらも快適とは言い難いが、このあたりはゲーミングノートPCの宿命。小さな筐体にハイスペックなパーツを詰め込んだ代償と言えよう。
最後に、バッテリーについて。100%の状態からタイマーをスタートし、ゲームをプレイし続けてみたところ、56分で残り10%の警告が表示された。電源が確保できない状況でのゲームプレイや、展示用途を考慮するのなら、予備のバッテリーはほぼ必須と言える。
有機EL自体に価値がある
定番のゲーム群を含め、現行のタイトルをプレイするのに十分なスペックを有し、有機ELでの美麗な描写も可能な「NEXTGEAR-NOTE i5751GA1」。魅力がはっきりしている一方で、ゲーミングノートPCらしい熱やファンの音量、リフレッシュレートが60hzに限られるという欠点も併せ持ち、それなりに高価な製品であるため万人におすすめできるとは言い難い。有機ELパネルの持つ表現力が、プレイ体験を向上させる可能性を持つのは事実なので、もし対人ゲームにさほど情熱をかけておらず、それよりもナラティブを重視するのなら、スペックの上積みの代わりに有機ELパネルを選ぶのは、十分ありと言える。「NEXTGEAR-NOTE i5751GA1」に対する評価も、そんな有機ELパネルに対する評価と同じである。