Epic Gamesが「Epic Gamesストア」を発表。開発者に「88%の利益」を提供する、前代未聞のゲーム販売プラットフォーム
Epic Gamesは12月5日、独自のゲーム販売プラットフォーム「Epic Gamesストア」を設立すると発表した。まずは同社が吟味したPC/Mac向けゲームを中心にラインナップし、2018年内にローンチする。ストアの閲覧はウェブからも可能だが、ゲームのダウンロードやアップデートはEpic Games Launcherを通じておこなう。Epic Gamesストアは、ゆくゆくは他のゲームにも門戸を開くとのことで、2019年以降には、Androidやその他のオープンプラットフォームのゲームにも順次対応していく予定だとしている。
Epic Gamesはストアに求めるものとして、収益を生むためのフェアな取引条件と、プレイヤーとの直接的な交流の2点を挙げており、Epic Gamesストアではこれらを実現するという。まず前者に関して、収益の88パーセントがデベロッパー、残る12パーセントがEpic Gamesの取り分になり、タイトルの規模や販売本数による条件の変動は一切ないとのこと。これまではPCやコンソール、モバイルを問わず、ストアの収益配分は70:30が一種の相場として定着しているが、ここに切り込んだ形だ。
Epic Gamesの設立者Tim Sweeney氏は、海外メディアGame Informerとのインタビューの中で、『フォートナイト』を自社販売する中でPCゲームストアの運営にかかる各種コストを弾き出し、12パーセントの取り分でも十分に利益を出すことができることが分かったと述べ、30パーセントを取っているストアはそのコストを過剰に見積もっていると指摘。一方で、コンソールについては専用ハードウェアにかかるコストが関係するため、異なる市場だと理解を示している。Epic Gamesストアとしても、コンソールゲームを扱うつもりはないとのこと。iOSゲームについては、2019年内に取り扱いを開始したいとしているものの、Appleのポリシーが障壁になっているとしており先行きは不透明である。
Epic GamesはUnreal Engineの開発・提供元だが、Epic Gamesストアでは他社のゲームエンジンを採用するゲームであっても販売可能。収益配分への影響もない。ただし、UE製タイトルをEpic Gamesストアで販売する場合、UEの使用料である5パーセントのロイヤリティはEpic Gamesの取り分である12パーセントの中から賄われるという。つまりデベロッパーは、そのタイトルについてのロイヤリティの支払いを事実上免除されることになる。そのほか、デベロッパーは自らのゲームページやニュースフィードの管理が可能。ゲームページに広告が設置されたり、競合タイトルのクロスマーケティング、検索結果の有料広告はおこなわないとし、デベロッパーへの配慮がうかがえる。またSteamのマーケットを観測し続けてきたSteamSpyの管理人であるEpic GamesのSergey Galyonkin氏が、同ストアの運営に携わっていることも明かされている。Steamの酸いも甘いも知る氏が参加するとなれば、同ストアの課題とされている問題を解決する提案もできることだろう。
上述のニュースフィードには、ユーザーが購入したゲームが自動的に登録され、ニュースやアップデートなどの情報が提供される。ユーザーが許可した場合は、メールでの通知にも対応する。Epic Gamesはこのニュースフィードが、デベロッパーとプレイヤーとの直接的な交流における中心的な役割になると位置付けている。さらに、従来からあるEpic Gamesのクリエイターサポートプログラムにも対応し、間接的にプレイヤーと接触する手段も用意する。クリエイターサポートプログラムには、YouTubeやTwitchの配信者やブロガーが約1万人登録しており、その紹介を通じてゲームが購入された場合は、クリエイターに収益の一部が分配される仕組みだ。なお当初の24か月については、最初の5パーセントはEpic Gamesが負担するとのこと。
Announcing the Epic Games store for PC and Mac! We’re bringing developers an 88% revenue share and a direct relationship with players and creators.https://t.co/QbQKKHFiMA pic.twitter.com/9wN1j7BEzN
— Epic Games Store (@EpicGames) December 4, 2018
Valveは先日、Steamにて販売されるゲームの収益が一定額に達するごとに、段階的にロイヤリティを引き下げることを発表した(関連記事)。ただ、その条件はビッグタイトルの優遇を主な目的としており、一律で低ロイヤリティをうたうEpic Gamesストアとは大きく立場が異なるように見える。Valveの施策は一部のインディー開発者からは批判の声が上がっており、彼らからするとEpic Gamesストアは魅力的に映るのではないだろうか(関連記事)。Epic Gamesストアは、まずは厳選したゲームラインナップにてローンチするとのことで、巨大なユーザーベースを持つSteamといきなり競合することにはならないかもしれない。ただ、88:12という独自の収益配分のインパクトは大きく、今後デベロッパーがどのような動きを見せるのかには注目だろう。
Epic Gamesストアは、どのようなタイトルをラインナップしてローンチを迎えるのか気になるところ。その詳細については、日本時間12月7日に開催されるThe Game Awardsにて公開するとのこと。なおTim Sweeney氏によると、Epic GamesのPC/Mac向けタイトルについてはEpic Gamesストア独占になり、またデベロッパーに出資して独占タイトルを提供してもらうことも考えているという。