『風来のシレン5plus』Nintendo Switch/Steam版には、新作を思い悩む開発者のメッセージが秘められている。とあるアイテムが示す、ファンへの願いの言葉


スパイク・チュンソフトは12月3日、『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス(以下、 風来のシレン5plus)』Nintendo Switch/Steam版を販売開始した。本作には、2015年にリリースされたPlayStation Vita版をベースにいくつかの変更が加えられており、その中には『風来のシレン』シリーズの新作について言及する要素が存在したのだ。具体的には、スパイク・チュンソフトで長年働いてきたというトミエ氏は、お金や会社の事情もあるとしつつも、「皆さんの、ひとりひとりのファンの声が大きければ、会社ももしかしたら動くかもしれない」と作中で語っている。

『風来のシレン』シリーズは、チュンソフトが1995年に発売したスーパーファミコン用ソフト『不思議のダンジョン2 風来のシレン』から続くフランチャイズだ。シリーズ作品間でも主人公や細かなシステムの違いはあるものの、基本的には風来人であるシレンが、ランダム生成されたダンジョンの踏破を目指す。ダンジョン内では、シレンと敵が交互に行動し、進行に伴いモンスターが変化するほか、満腹度や罠、大量のモンスターとアイテムが待ち受けるモンスターハウスといった要素が存在。HPが尽きてしまうと、経験値やアイテムが失われる緊張感と向き合いつつ、巻物や杖などのアイテムを活用して、ダンジョンの最奥へと潜ることになる。不思議のダンジョン、ローグライクダンジョンRPGとも称される同シリーズは、ランダム要素によるリプレイ性の高さや、やりこみを許容する難易度の高さなどから根強い人気を誇っている。


そんな同シリーズでは、2010年に発売されたニンデンドーDS用ソフト『風来のシレン5』以降、ナンバリング新作は発売されていない。『不思議のダンジョン2 風来のシレン』、2000年発売の『風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!』(NINTENDO64)、2002年発売の『風来のシレン外伝 女剣士アスカ見参!』(ドリームキャスト/PC)などは、ファンから高く評価されているものの、近年の作品では新要素を中心に賛否両論。『風来のシレン3 からくり屋敷の眠り姫』以降、売上が徐々に下降しつつあるとされる点も、新作が発売されていない一因と考えられる。


今作に隠されたメッセージは、長期間新作が発売されていないフランチャイズに、新作の可能性を示唆するもの。メッセージ内容としては、スパイク・チュンソフトで長年働いてきたというトミエ氏なる人物が、お金や会社の事情に触れつつ、ファンの声が大きければ会社が動くかもしれないと語っているのだ。同メッセージは、”至高の挑戦”のクリア報酬を押すと閲覧できる。至高の挑戦は、ネコマネキ村内にあるダンジョンセンターからプレイ可能なダンジョン。強力なモンスターたちから逃げ惑い、10層の踏破に成功すると、押すなと煽る新作の壺なるアイテムが入手できる。その壺を押すと壺が突然喋り始め、すでに定年も射程に入ってきているというトミエ氏からのコメントが表示される。スパイク・チュンソフトには、『風来のシレン』シリーズ、『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズの企画やシナリオに長年関わっている人物として、冨江慎一郎氏が在籍している。トミエ氏は富江慎一郎氏を指すと考えられそうだ。


同氏は、シリーズに携わるスタッフの仕事ぶりに触れた後、シレンの新作を気にかけていると言及。「優柔不断な私の背中を、せめて誰かが押してくれれば、制作にも踏み切れるのだが……」「ならばできれば……声を上げてくれないだろうか……?皆さんの、ひとりひとりのファンの声が大きければ……会社ももしかしたら動くかもしれない」とファンに向かって呼びかけた。

続けてトミエ氏は、新作を作る際には全力で取り組み、初代『シレン』、『シレン2』、『アスカ見参』など評価の高い作品に迫れるぐらいの、ファンが納得できるようなものを提供できるよう頑張るとも語っている。スパイク・チュンソフトはスマートフォン版『風来のシレン』発表に際しても、公式サイトを通じて「本作からまた一歩一歩、シレンの展開を前に進めていきたいと考えている」と表していた。同作の売上は10万本を突破している。スパイク・チュンソフトから発せられた2つの声に、ファンからの声も合わされば、同社が『風来のシレン』シリーズ新作へと動く未来もあるのかもしれない。


『風来のシレン5plus』Nintendo Switch/Steam版は、通常価格2980円で発売中。追加要素や、biimシステムなどを思わせる「ライブ探索表示機能」も搭載されている。