米国任天堂が、Nintendo Switch本体のハック(改造)を可能にするツールを取り扱う複数の販売代理店を相手取り今年5月に提訴していた件について、進展があったようだ。当時同社は、シアトルとオハイオにて同時に訴訟を起こしており、この内オハイオでの被告と、200万ドル(約2億1000万円)の支払いなどを含む条件にて和解に至ったという。海外メディアTorrentFreakが報じている。
一連の訴訟にて被告となったのは、いずれも「Team Xecuter」と呼ばれる匿名のハッカーグループが開発・製造する、Nintendo Switch用のカスタムOS「SX OS」と、その使用を可能にするドングル「SX Pro」を扱う販売代理店である。このツールを使うことで、自作ソフトやバックアップしたNintendo Switchゲームをプレイできるが、これはすなわち海賊版ソフトの起動が可能であることも意味する。
任天堂は、このツールの目的はデジタルミレニアム著作権法にて禁止されている、著作物の技術的保護措置を迂回させる行為にあたると主張し、当製品のサンプル出荷および予約受付が開始されたタイミングにて、販売代理店に対する提訴に踏み切った(関連記事)。
今回任天堂との和解に合意したのは、Uberchipsというオンラインショップを運営していたTom Dilts, Jr.なる人物。TorrentFreakが入手した裁判資料によると、被告は任天堂に対し200万ドル(約2億1000万円)を支払い、また関連製品の破壊・破棄、ショップのドメインの引き渡しなどをおこなうという条件を飲んだとのこと。まだ裁判所の最終的な判断は下っていないが、両者が合意しているためこのまま和解が成立するものと思われる。
一方で、同時におこなっていたシアトルでの裁判はまだ進行中のようだ。こちらは8つの販売代理店が被告となっているが、任天堂は運営者についてはいずれも身元不明としたまま提訴しており、和解交渉もままならない状況となっているのかもしれない。名指しされたショップのうち6つはすでに閉鎖。残る2つはまだ存在しTeam Xecuterの製品も掲載されているが、実際に販売を続けているのかどうかは不明である。
任天堂は、Team Xecuterが手がけるハックツールにはかねてより目を光らせており、イギリスではそのウェブサイトへのアクセスをISPにブロックさせることに成功している。ただ、同グループは自らは製品を一般に販売しないことを徹底しているためか、開発を止めさせるよう訴えるなど直接的な対応はできていない。
一方の同グループ側は、ゲームのバックアップの作成やプレイは適法であり、ツールは消費者の“修理する権利”を支援するためのものであると主張している(関連記事)。現状では、任天堂はユーザーの手に渡る前の段階である販売代理店に対し、ひとつひとつ対処していくしかないのかもしれない。