米国任天堂が、Nintendo Switch本体のハック製品販売業者を提訴。“対策をかいくぐる”新製品を追跡し潰しにかかる


米国任天堂は8月15日、Nintendo Switchをハックするツールを販売する複数のリセラー(販売代理店)を相手取り、シアトルとオハイオの地方裁判所にて同時に裁判を起こしていたことが明らかになった。

海外メディアPolygonが入手した訴状によると、シアトルでの訴訟では8つのリセラーのウェブサイトおよびこれを運営する身元不明の20名が、そしてオハイオではTom Dilts, Jr.なる人物とその運営するリセラーサイトが被告となっており、米国任天堂は、これらのリセラーは購入者に海賊版ゲームをプレイさせることを目的にツールを販売していると主張。具体的には、「Team Xecuter」と呼ばれる匿名のハッカーグループが開発・製造する、Nintendo Switch用のカスタムOS「SX OS」と、その使用を可能にするドングル「SX Pro」を販売していたという。

こうした製品を使用することで、自作ソフトやバックアップしたNintendo Switchゲームをプレイできるが、それは海賊版ソフトを利用可能であることも意味する。今回被告となったリセラーの多くでは「無料のゲームがプレイできる」とうたい、またあるリセラーでは多数のNintendo SwitchゲームをインストールしたMicroSDカードも、同製品の購入者向けに販売していた。

Team Xecuterは5月6日、SX CoreとSX Liteのサンプル出荷を始めたことを発表。

Nintendo Switch本体には、ハードウェアに由来しシステムアップデートでは修正できない脆弱性がかつて存在し、Team Xecuterのツールはこれを利用してハックをおこなっている。2018年6月以降に製造された本体は対策がおこなわれ、のちに発売されたNintendo Switch Liteも同様。しかしながら、Team Xecuterはこれらをもハック可能にする「SX Core」と「SX Lite」なる新製品を昨年12月に発表。そのサンプル出荷を、今年5月に開始したという。

訴状の中で米国任天堂は、こうしたTeam Xecuterの新製品をめぐる動きについて時系列に沿って細かく記述しており、同グループの動向には常に目を光らせていたようだ。今回の訴訟は、各リセラーサイトがその新製品の予約受付を開始したタイミングを狙ったと受け止められる。実際に同社も、予約をおこなえることを自ら確認したとのこと。対策を施したNintendo Switch本体をハックできる製品の流通は、何としてでも阻止したいところだろう。

米国任天堂は、こうした製品の販売は、デジタルミレニアム著作権法にて禁止されている、著作物の技術的保護措置を迂回させる行為にあたると主張。製品の流通にかかる各行為ごとに、シアトルの裁判では15万ドル(約1600万円)、オハイオでは2500ドル(約27万円)を上限とした賠償金の支払いなどを求めた。

被告となったリセラーのひとつは、今回の訴訟を受けて製品の販売を停止。予約購入者への返金を始めている。

任天堂が、Team Xecuter製品に関連してアクションを起こすことは今回が初めてではない。2019年にはイギリスにて、Team Xecuterの公式サイトやリセラーサイトへの国内からのインターネット接続を遮断するよう主要ISP5社に求める訴えを起こして勝利。イギリスの高等法院は、Nintendo Switchで海賊版を利用できる製品を違法と判断したという(関連記事)。

一方、今回の訴訟にて米国任天堂は、Team Xecuter自身はリセラーに卸すのみであり、一般ユーザーには直接販売していないことについてあえて触れている。上述のイギリスのケースは、効果的ではあるがあくまで間接的な対処。この言及部分からは、同グループの活動を直接阻止するには何らかの法的なハードルが存在することをうかがわせる。いずれにせよ、Nintendo Switch本体のハック行為に対しては、任天堂は今後も手を緩めることなく対処していくこととなりそうだ。