Unreal Engine 4製インディーゲーム開発者座談会。「私達がUnreal Engine 4を選んだ理由」編

ゲームエンジンUnreal Engine 4を使ってインディーゲームを開発するクリエイター4人が、開発の苦労やこだわりなどを語り合う大型企画。第一弾は、彼らがUnreal Engine 4を何故か選んだか、どのように使っているかなど、利用方法について語ってていただく。

ゲームエンジンUnreal Engine 4が大型タイトルの開発に採用されることが増えてきたが、同時にインディーゲームのシーンでも見かけることが多くなった。採用理由は、人の数だけあるだろう。プログラミングの知識を必要としないブループリント機能に魅入られる者、エンジンの多機能さに魅入られる者、リッチなビジュアルに魅入られる者などさまざま。国内でもそんなUnreal Engine 4に魅力されゲームを作っている開発者が存在する。

彼らはEULA(いわゆる無料)版を使いEpic Gamesのサポートなしで力強くゲーム作っており、それでいて一般メーカーが販売するものと遜色ないクオリティを目指して開発している。今回は『ジラフとアンニカ』を作る紙パレット(@kamipallet)氏、『Link: The Unleashed Nexus』を作るSig(@sleepyslowsheep)氏、『幻想郷ディフェンダーズ』を作る少佐(@__syousa__)氏、『Assault Spy』を作るWazen(@Assault_Spy)氏の4名に集まってもらい、各自の作品の魅力やUE4の魅力について語ってもらった。おかず(@pafuhana1213)としても親しまれているEpic Games Japan岡田和也氏の和やかな司会のもと、穏やかながら時折厳しい指摘が飛び交った座談会の様子をお伝えする。本日9月6日から3日連続で3回に分けて掲載していく予定。ぜひ追ってチェックしてほしい。

左から、岡田氏、紙パレット氏、少佐氏、Sig氏(アバター)、Wazen氏(アバター)

Unreal Engineに魅入られた4人

岡田:
本日はよろしくお願いします。早速、簡単に自己紹介をお願いします。ではあいうえお順で、紙パレットさんから……。

紙パレット:
紙パレットです。作品は『ジラフとアンニカ』を作っています。経歴としては、ゲーム会社でデザイナーとして20年働いた後に、今年2月に独立し今はインディーゲームの開発一本でやっております。ゲーム会社のデザイナーといっても、いろんな種類があると思います。僕が入った会社は最初の頃、社員数が少なかったので、しばらくいろんなことをやらなければいけなかったんです。モデリングや2Dのデザインなど、絵周りことはなんでもやってきました。なので、スペシャリストというよりジェネラリストですね。これまでアート周りをやってきたので、デザイナーが使うと力を発揮するエンジンだなと思い、Unreal Engineを使っています。

ジラフとアンニカ
紙パレット氏が立ち上げた個人制作アトリエ「atelie mimina」にて開発中のインディーゲーム。PCで発売したのち、PS4/Nintendo Switchにもリリース予定。主人公となるのは猫耳と尻尾が生えたケモノ娘アンニカ。記憶を無くしたアンニカは、未知が眠るスピカ島を探索しながら記憶を取り戻していく。フィールドを探索するアドベンチャーパートと、ボスと戦うリズムパートに分かれた少し変わった作品だ。

岡田:
では次はSigさんお願いします。

Sig:
インディーゲームを作っている、Sigと申します。『Link: The Unleashed Nexus RH』(以下、Link)を開発中です。僕はというと、ゲーム会社に務めた経歴がないんですよね……。大学の就活中に突然Unreal Engine 4に魅了されてしまって、人生が変わってしまいました(笑)。大学は情報系とかではなく、ソフトウェア開発に縁のない文系大学です。4GamerさんのUDK(Unreal Development Kit)に関する記事を読んで実際にさわっていたらところ、直後にUE4が出たのでやってみようかなと思い、開発をはじめました。時期的には2014年ぐらいになりますね。もともとのゲームは2014年に発売イベントにて発表したものなのですが、今はPS4リリースが決まったので、一からリメイクしたものを開発中です。それが『Link』になります。もうひとつは平行して開発しているのは、『コード:トランセンデンス』です。リズムゲームとアクションを融合させたような作品になります。

『Link: The Unleashed Nexus RH』
Sig氏が開発中のインディーゲーム。ハイスピード・エアリアル3Dアクションだ。自身でも紹介されているとおり、2014年に発売された同名の作品のリメイク作となる。プレイヤーはさまざまな疾走感のあるアクションを繰り出し、さまざまな楽園を駆け巡る。いちから作り直しており、別作品ともいえるほどの変貌を遂げているとのこと。

岡田:
そのへんの話も追々聞かせてください。では少佐さん、お願いします。

少佐:
少佐です。Neetpiaというサークルで、いろんなことをやっています。経歴としては、本業はゲーム開発とは全く違っていて、趣味でゲームを作っています。本業は3Dディスプレイやヘッドマウントディスプレイの研究開発をやっていました。他には深度センサーに携わったり、一時期はWeb系などもやり、最近は転職してディープラーニングをやっています。ハードウェアもソフトウェアも開発してきました。仕事とは関係なく、学生時代からゲームを作ってました。

幻想郷ディフェンダーズ
少佐氏擁するNeetpiaが手がける東方 Project のファンゲーム。プレイヤーは幻想郷の住民を操り、トラップを設置して妖精を撃退していく。ただ眺めているだけでなく、キャラクターを操作して敵を撃退するといったアクションゲーム要素も導入されている。トラップと自身での迎撃、そしてスペルカードを用いて、“戦争ごっこ”を制するのだ。

岡田:
ずっと東方のゲームを作られていたんですか。

少佐:
公式サイトを見ていただければわかるんですが、最初は“いかにも同人”というゲームでして……。そこから東方に移って以来、ずっと東方をやっていますね。今回の作品ではUE4を使っています。

岡田:
ありがとうございます。それではWazenさんお願いします。

Wazen:
Wazenです。サラリーマンがオフィスで暴れてロボットと戦うアクションゲーム『Assault Spy』を作っております。学生時代からフリーゲームを作っており、ゲーム会社に入ってからはプランナーをしていました。『Assault Spy』をAUTOMATONさんで取り上げていただいて(関連記事)、日本一ソフトウェアの米国子会社NIS Americaの方に「支援をするから最後まで作ってみませんか」と声をかけていただき、Steamで早期アクセス販売をするにまで至りました。

Assault Spy
Wazen氏が手がける3Dアクションゲーム。自称「エリート企業スパイ」の主人公アサルが世界的大企業に潜入し、ブリーフケースや名刺といったサラリーマン装備を駆使して華麗かつスマートに敵をなぎ倒していく。テキストはコミカルながら、アクションパートはとにかくスタイリッシュ。ド派手なエフェクトとなめらかに動くキャラクターを操作し、気持ちよくコンボを決めまくれ。

Sig:
フリーゲームの頃の作品は『アサルとスパイ』ですよね。遊びました。すごく面白かったです。

Wazen:
ありがとうございます。フリーゲームの方は『Assault Spy』とはつながりはないんです。ゲームとして断然別物です。キャラクターと世界観、テキストの書き方から同じ作者だと気付ける程度の話ですかね。

岡田:
こうして紹介していただいた限り、元ゲーム会社の方でフリーランスの方が2人、別業界の会社員の方が1人、フリーランスの方が1人という構成になりますね。ゲーム業界の方が裏で違うゲームを作っているという話はよくお聞きするのですが、今回は特殊なケースの方が集まったレアな会合なのかなと(笑)。ところでみなさん個人でやられているのでしょうか。

少佐:
サークルです。

Wazen&Sig:
個人です。

紙パレット:
個人ですが、外注を結構使っています。フルタイムでやっているのは1人ですが、知り合いなどに助けてもらっている感じですね。

岡田:
少佐さんは普通のコミケのサークル的な感じですか。

少佐:
そうですね。本業がある人が夜Skypeで集まって作るサークルです。今回の作品は、メインは3人で、別途お手伝いさんがいます。仕様書を書いて後はよろしくという形式ですね。

岡田:
サークルができたきっかけはなんでしたか。

少佐:
一番初めのメンバーは高校の友人です。それから何度もメンバーが入れ替わり、今は第二作のプレイヤーが集まった感じです。作品が好きだったか、もしくはテストプレイヤーとして巻き込まれた結果、そこから仕様書やシナリオを任せるうちにいつの間にか定着していました(笑)。10年以上続いていますね。

 

Unreal Engineとの出会い

岡田:
ありがとうございます。みなさんEULA版(サポートなしの無料)を使っているという前提で話をさせていただいて大丈夫でしょうか。

一同:
基本はそうです。

岡田:
EULA版はEpic Gamesからのサポートはいっさいなしなんです。おそらく、この記事を読んでいただいている方と同じ環境でたくましく作られていることになりますよね。今日はそのへんも含めて、Epic Gamesへの不満も言っていただける記事にしてもらえればと思っています。では、本格的にいろいろな質問をさせていただこうかなと。みなさんUE4を使い始めたきっかけや理由を教えていただけますか。UE4は2015年に一般・無料公開されましたが、みなさん2014年ぐらいの時期から作られているようで、なぜなのかを聞きたいなと。

紙パレット:
ゲーム会社に勤めている時、UE3を使っていたことがあるんです。あるんですけど、UIデザイナーとして関わっていたので、テクスチャのインポートぐらいしか使ったことがなくて。後は、BSPでラフのマップを作ったぐらいですね。その後、某エンジンのプロジェクトに携わっていました。アートディレクションを担当していたので、組み込みには携わっていませんでした。

その後、AUTOMATONさんで『Dungeon & Burglar』の制作記事を見て、衝撃を受けました(該当記事)。一か月でスマホ向けのゲームを作られて、びっくりしたんです。アセットをうまく使いながらちゃんと我妻さんのテイストが出ているんです。そこに驚きました。

というのも、ゲーム会社だとアセットは自前で作るのが基本なんです。買ったアセットを使って自分らしいゲームを作るなんて、裏技みたいですよね(笑)。それで、やり方次第では自分の世界が作れるというのがわかったんです。しかも、ブループリントだけで。それですぐ「自分も始めなきゃ!」と思いました。我妻さんがアーティストでもゲームを作れるというのを実証してくれた形になりますね。また同じ時期にフリーゲームにハマっていまして、短いながら良い作品を楽しんでいました。ただ遊びながら、自分はプロなのに一度も最後までひとりでゲームを作ったことがないなとも思っていました。それで、一度やってみようと思い始めました。

ただ、デザイナーなのでいきなりUnreal Engineを触るのではなく、イメージボードとマップを書いて、それからコンセプトアートと進めていきました。そこから何か月かかけて、モデリングができたので、キャラクターを三人称視点のゲームに入れて動かして「走った!」と感動していました。あとは背景アセットのLandscape auto materialを買って、そこで自分のキャラクターを走らせて「俺のゲームだ」と言い張ってコミティアに出しました(笑)。

岡田:
ある程度の規模のゲーム会社になると、一箇所(特定のセクション)でしか作業できないことにフラストレーションを溜める人がいるという話は聞きますね。

紙パレット:
スペシャリストが集まってゲームを作る場合は、それなりに大きい会社でないと自分の作りたいものを作れないんじゃないかという固定観念がありました。ただ、フリーゲームをやっているとドット絵みたいな一部のゲーム要素だけでもオリジナルにすることで、自分の個性を出せるなということに、この歳になって気付きました。今はアセットのクオリティも高くなっているので、それを買って作っただけでも組み方次第でオリジナリティを出せるんだと。それまではインディーシーンに詳しくありませんでした。『東方』っていうのもがあるんだ!と知ったのもその時で(笑)。

一同:
(笑)

紙パレット:
フリーゲームに文化があることも知りませんでした。やはりコンソールでずっと生きてくると、そっち側しか見えなかったりもします。今はTwitterも始めたのでいろいろな文化を知る機会が増えましたね。

岡田:
まさしく、Unreal Engine 4になって、アーティストの方がエンジニアの方の力を借りずに自分の表現したいものができるようになったという例ですよね。

紙パレット:
そうですね。そもそも最初は半信半疑だったんです。ブループリントだけで本当にゲーム作れるの?って。でも、AUTOMATONさんの記事を見て本当にできるんだと知って、始めました。我妻さんがもともと優秀な方だったというのもあると思いますね。

Sig:
僕の場合は、経緯はさっき話しましたとおり、大学在学中にUDKの記事を読んで……という感じです。最初Fluid Surfaceという、水面の波紋をシュミレートする機能にめちゃくちゃ感動したんです。UDKのスクリプト言語のUnreal Scriptとかはあまり理解できなくて、分厚い本を読んでやってみたんですけど、応用部分がなかなか難しくて。その頃にUE4が出て、試しにブループリントを軽く組んで動かして研究していました。その後、ヒストリアさんが開催されている第2回ぷちコンに参加しながら書くのに慣れていきました。あとはデジゲー博などに出展したりですね。

岡田:
UDKをさわられる前には、何か使われていたりしたんですか。

Sig:
HSP(Hot Soup Processor)で絵を出したり、RPGツクールをさわっていたくらいで、本当にお遊び程度の程度です。

岡田:
そこからぷちコンに頻繁に出られるほどになったんですね。少佐さんはどうでしたか。

少佐:
UE4はリリースされた当初からさわってはいたんですが、採用した大きなきっかけとしては、マーケットプレイスのクオリティが高いのと、自分がつくっているものとUE4の設計との相性がよかったことですね。とある事情でC++を動く環境を探していて、C++に対応しているUnreal Engineを選びました。ブループリントをさわる前には、エンジンのソースコードを読んでいました。Epic Gamesが出した資料などを読んで研究していました。なので、外というより中を見て使おうと決めました。

岡田:
それぞれみなさん事情が違っていて面白いですね。それではWazenさんがUE4を使おうと決めた理由を教えてください。

Wazen:
触り心地がよくて、UIがグラフィカルだったことですかね。難しそうなソフトと比較しても、使いやすそうだと思い入りました。そこからブループリントがあればプログラマーのようにコードを書かなくても作れることを知りました。実際にやってみると理解できる範囲でプロジェクトを組めて、簡単なアクションゲームぐらいなら作れるだろうと確信し、使うに至ったという形ですね。

そもそもの話でいうと、社会人は朝起きて会社に行って帰ってくるという日常があるじゃないですか。その朝起きなければいけないというのについていけなかったんです。これで一生やるのかと思うと、厳しいと思い会社をやめました。その後はしばらく、フリーでいろいろな仕事をしていました。会社にいた時はUnreal Engine 4を使っていたので、フリーの仕事が落ち着いた時に趣味でさわっていました。

実際さわっているうちに、いろいろわかってきたんです。そしてSteamストアをながめていると、戦闘メインの3Dアクションゲームが売れているように見えて、ユーザーから望まれていることに気がついたんですよね。Unreal Engine 4ならコードを書かなくていいだけでなく、自動的に調整してくれる機能がどんどん増えて、試行錯誤に使える時間が増えていくのを感じました。そういった方向性が続くと思ったので、その時点でUE4についていこうと決意してゲームを作り始めて、今に至ります。

中学生・高校生時代からゲームを作るソフトウェアには興味があって、夢を見ていたんですが、コードを書けないと、なかなか厳しいところがありました。無理だろうと。しかしUE4のおかげで、ようやく自分でゲームをつくれるようになりました。ゲームエンジンにおいてとっつきやすさはとても大事だと感じていて、ブループリントは見た目もかっこよくて、色分けもきれいで。さわると直感的に機能がわかるので、ありがたいですね。

岡田:
そこはUE3の時のものを全部捨ててUE4を作り直したからこそ、モダンな形になったんだと思います。

紙パレット:
Kismetを捨ててまで作られましたもんね。

Wazen:
Kismetという名前がかっこいいと思いました。調べてみると運命っていう意味らしいですね。

岡田:
名前の方なんですか(笑)。

Wazen:
ノードを繋いで運命を紡ぐみたいな。マチネもおしゃれですね。

岡田:
UE4の機能名は厨二……というか、遊び心がありますね。カスケードとかナイアガラとか。ペルソナとか、どこにアニメーション要素があるのかな(笑)。

 

ブループリントでどこまで作れるのか

みなさんそれぞれ境遇ややられていることが違うのが面白いですね。ちなみにみなさんは、UE4を使う上での気になる点はあったりしますか。

紙パレット:
ブループリントでなんでもできるので、逆にブループリントではできないことは何か気になりますね。僕の場合は音ゲーのところはC++でやったほうがいいのかなとは思うんですが、ブループリントでも組めていますし。

Wazen:
個人的に、ブループリントだと実行順と速度に不安があります。シビアな場面ではどういう順番で実行されるのか。同じティックだとすれば、ティックとティックが重なるとどうなるのか、出してみないとわからないところはあります。実際処理落ちするのは怖いですし。そのへんはブループリントだと不安かなと思います。コードで組んだほうがいいんだろうなと感じます。

岡田:
そのへん、プログラマーさんはどうですか。

少佐:
C++だと開発終盤のコンパイル時間が長かったですね。高速化する前のバージョン4.15だったので、そういう事情もあると思います。コンパイルが長くなってイテレーションが遅くて少し辛かったですね。4.20あたりだとかなり改善されている印象ですが。

紙パレット:
細かいところがどこまでC++でできるのかわからないのが、エンジニアではない弱点だと感じます。このままいって大丈夫なのだろうかという不安はあります。そろそろC++勉強しないといけないかな(笑)。

キャラクターのかわいさが光る『ジラフとアンニカ』

少佐:
学習コスト高いんで、あんまりおすすめしません(笑)。

紙パレット:
そうですか……。ただ、結局プログラマーの人に頼ったほうがいいのかなとは思います。それでも、できるところまでは自分でやりたいですね。

少佐:
ちなみに僕の方では、細かい不具合リストを作っているので、後ほど共有します(笑)。

岡田:
ありがとうございます。実際にリリースを目指して作っている方だからこそ聞けるご意見ですね。不具合などは完全に無くすことはできず、難しいところですね。ただ、UE4はブラックボックス化せずオープンにしているので、ライセンシーさんにおすすめするときも、最終的に自分でなんとか直せるという点をメリットとして伝えています。

少佐:
確かに、自分でなんとかしていますね。

岡田:
ただ、同人サークルの方でも自分で解決していただけたというのは、これから検討される方にとっては参考になるのかなと。直していただくことは手間のかかる話なんですが(笑)。やはり商業ベースで考えると、自分のところで最終的にはなんとかできることは大切だと思っています。と、ちょっといい感じの流れにまとめてようとしています(笑)。逆にUnreal Engine 4を使っていて、便利だなと思うものはありますか。

紙パレット:
『ジラフとアンニカ』にはマンガシーンや演出シーンがあるんですが、それは全部シーケンサーで作ってます。ああいったシーンはプログラムから作るとめちゃくちゃ大変なんですが、シーケンサーだと半日とかでできるので、ツールが優秀だなと思います。あとはレベルエディターがすごくいいと思います。もともと『アンリアルトーナメント』のModのツールですよね。そこが始まりだというのもあるかもしれませんね。たとえばゲーム中の島のマップやダンジョンを作るというのも、どんどん作っていける。

岡田:
アセットをドラッグ・アンド・ドロップして置いたりとか。

紙パレット:
そうです。そしてそれが全部リアルタイムでできる。普通はグレーボックスを作ってからというやり方が一般的だと思うのですが、もうアセットを買ってどんどん置いていっている形ですね。そうやってつくっていっても絵作りがしやすいんですよ。ライティングもすぐできるし、望む絵に近づけられるんです。レベルエディターで直接試行錯誤しながら絵作りができるのがありがたいですし、楽しいです。それと最初にインストールした時に出てくるイスやグラス。あのふたつがとてもきれいで感動しました。サンプルのクオリティが高いのは嬉しいですね。『Paragon』をはじめ、Epicさんが先導してそういうものを出しているのも大きそうです。

Sig:
僕が嬉しいと思ったのは、プロトタイピングの速さです。こういうゲームどうなの?と思った時にぱっと作れるじゃないですか。なんか違うなと思った時は部分的に直せばいいし、ブループリントって邪魔な時とか外しておけるじゃないですか。そうやって試行錯誤できるところがいいと思いますね。

岡田:
確かに標準でテンプレートとかいろいろ用意してあるので、ちょっとしたアクションゲームでしたらCharacter Movement Componentのパラメータを弄って作れますしね。

Sig:
アクター単位でものを管理して動かすというのがとても好きなんです。

岡田:
プロトタイプを作りやすいというのは、うちもかなり推しているところです。どれだけ速く作れるかは大事かなと。固めたあとでダメだということがわかってボツになるというのは、作業的に無駄になってしまうんですよね。そこを言っていただけるのは嬉しいですね。

ところで、SigさんとWazenさんはアクションゲーム開発者としてこだわりがあるかと思います。UE4のアクションゲームだと、サードパーソンテンプレートでキャラクターのコンポーネントを使って、という流れでやると思うんですが、それでああいうスピード感の動きは作れているんですか?どうやられているのかなと疑問に思いました。

Wazen:
ベースはそうです。そこから、あれを改造していきます。主人公のアタリは今でもサードパーソンの部分が残っています。芯の部分はサードパーソンのテンプレートのままです。変えなきゃいけないとは思っているんですけどね。

Sig:
プロジェクトにモデルを突っ込んでガワを変えるところから始めて、そこから重力設定とかを直すところから始めます。そこからすぐ、独自機能のプロトタイプに移っていきます。

少佐:
僕はまったく使ってないですね。真っ暗な画面から作ってます(笑)。基本的にUE4で最初から入ってるものは全部使えなかったので、ガリガリにいじってます。

かわいらしさだけでなく、奥深さもある『幻想郷ディフェンダーズ』

岡田:
いじっているからこそ、2D版/3D版を作れたという。

少佐:
それもありますし、あのジャンルのゲームを作れたのもそうですね。アクションゲームかつタワーディフェンス要素があって、いろいろといじらないといけなかったんです。ゲームの経路探索は全部自分で書いてます。最短距離で向かうとゲーム性がほとんど成り立たないんで、かなり裏で色んなことをやっています。

岡田:
むしろ、あんまり使っていない機能などはありますか。

Wazen:
Behavior Treeは使っていないですかね。シンプルにブループリントでやっています。

少佐:
逆にいろんな機能を使ってますよ。音を出したりモデルを出したり。アニメーション機能も使ってます。ゲームシステムに関連するものはC++ですが。ビジュアルは全部UE4ですね。

岡田:
お二方は、アニメーション機能も使っていますか。

Wazen&Sig:
はい。

岡田:
最近Twitterで「アニメーションをガチでやりたいならアニメーションブループリントを捨てろ」みたいな投稿を見て、そうなんだとしょぼんとしちゃいました(笑)。

Sig:
そんなことないですよ。

Wazen:
むしろブループリントだとなぜダメなのか気になりますね。便利だと思っているんですが。コードで組んだ方が、処理順がはっきりするという意味なら、そうかなと思いますが。

岡田:
アニメーションブループリントは、流用する仕組みやルールを知っておかないと、量産する段階で苦労するとは思いますね。

少佐:
そのへんはノウハウがないので、かなり苦労しました(笑)。キャラごとにボーン違ってどうしようかなと。Blenderとスクリプトで全部コピーして、それをインポートする形でした。

岡田:
それに関しては資料がありますので、またご覧ください(笑)。

※参考資料
猫でも分かる UE4のAnimation Blueprintの運用について

UE4の学習方法/オススメツール/外注先との付き合い方」編に続く

 

[執筆:Minoru Umise]
[撮影:Ryuki Ishii]
[編集・校正:Minoru Umise/Ryuki Ishii]

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