新作推理ゲーム『ソフィアは嘘と引き換えに』ってどんなゲーム?限りある時間の中で“5つの人格のある少女”を取り調べる推理ゲーム
『ソフィアは嘘と引き換えに』は、多重人格の少女・ソフィアと対話しながら進める、推理アドベンチャーゲームである。

MUTANは7月3日、ストーリーノートと共同で手がけた推理アドベンチャー『ソフィアは嘘と引き換えに』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam)。
本作はいわゆる多重人格の少女・ソフィアと対話しながら進める、推理アドベンチャーゲームである。ソフィアはとある国の大統領候補を殺害した容疑で収監されている。しかし固く心を閉ざしており、警察の捜査は停滞。当局から依頼を受けた精神科医・フィリップは、ソフィアのなかに眠る“5人の少女”と会話しながら、ソフィアの過去や事件の真相を探っていく。

ゲーム内容の説明に入る前に、本作の制作経緯について簡単に説明しておこう。本作はMUTANとストーリーノートが共同で制作した作品である。MUTANは、東京と埼玉に拠点を置くゲーム会社だ。豊富な受託開発の実績を有しており、『FF16』や『ユミアのアトリエ』など、大型国産ゲームの開発の一部も担当。また自社作品も展開しており、これまでには『グーニャモンスター』などを制作している。
一方のストーリーノートは、東京に拠点を置くストーリー制作会社だ。同社は『ドラクエ9』などでディレクターを務めた藤澤仁氏が代表として設立した会社である。これまでには『ドラゴンクエストモンスターズ3』などのシナリオ制作を担当。また代替現実ゲーム(ARG)の企画や運営も多数手がけている。
本作『ソフィアは嘘と引き換えに』の制作においては、MUTANは開発とパブリッシングを、ストーリーノートは企画とシナリオを担当している。両社がそれぞれの得意分野を活かし、共同の自社タイトルとして制作したわけだ。本稿ではそんな同作のゲーム内容について紹介していく。

「殺したのは私。でも私じゃない」
本作のメインキャラクターであるソフィアは、大統領候補を殺害した容疑で逮捕されている。当局から依頼を受けた精神科医のフィリップはソフィアと対話し、彼女がいわゆる多重人格であることを知る。そしてソフィアは、「殺したのは私。でも私じゃない」と語る。つまり“自分”はやっていないが、他の人格の誰かが殺したのは間違いない、と容疑を一部で認めつつ否認するのだ。
一般的な世界であれば、どの人格が犯行に及んだかというのは大きな問題にはならないかもしれない。しかし本作の舞台となる国には、ある変わった法律が存在した。それは「多重人格者が罪を犯した場合、該当人格のみを“消去”することとし、他の人格の罪は問われない」というものだった。よって真犯人がどの人格かというのは、重大問題なのである。
しかし本事件の捜査期限はフィリップが着任した時点で7日しか残っておらず、それを過ぎるとソフィアは他の人格もろとも処刑されてしまう。この7日というのがゲーム上でも期限となっており、制限ターン以内に真相を探し出すのが本作の目的となる。

質問をすることで進行
ゲームプレイでは、フリーワードを入力してソフィアに質問をおこない、反応するキーワードを探しながら物語を進めていくことになる。キーワードは原則、それまでのソフィアとの会話内で登場したフレーズとなる。しかしときにはまったく新しい語句の入力が求められるケースも存在する。推理で解く場合もあるが、本作では“ゲーム外の要素”を活用した謎解きパターンも用意されている。
たとえばゲーム冒頭のソフィアは心を閉ざしており、詩のような奇妙なフレーズを繰り返すばかり。何を質問してもまともな会話は成立しない。しかしソフィアの言葉を現実のインターネットで検索すると、とある実在する小説の一節であることが分かる。その小説のタイトルをキーワードとして入力するとソフィアが反応し、物語が進行するといった具合である。
先述したユニークな法律の存在などからもわかるように、本作の舞台となっているのはあくまで架空の世界だ。しかし現実のインターネット検索を駆使させ、実在する小説の名前が飛び出す会話からは、奇妙なリアリティが感じられる。ほかにもソフィアが好きな歌手やお気に入りの曲について、実名を出しながら語るとき、筆者には現実とゲームの世界がオーバーラップしたような感覚があった。このソフィアとの会話から漂う異様な実在感が、本作の大きな特徴だと筆者は感じている。

「5つの人格があるソフィア」
そんなソフィアには5つの人格が存在している。ソフィア自身を除いた4つの人格は、ソフィアがこれまでの人生で経験したトラウマをもとに生まれた存在だ。彼女たちはそれぞれ性格がまったく異なるが、主人公を信用しておらず捜査に非協力的なことと、自身の容疑を否認していることは共通している。
会話を通じて信頼関係を深めれば、少女たちは質問に応じてくれるようになる。しかし人格が覚醒していない間の記憶はほとんどないため、彼女らの記憶はいずれも断片的だ。プレイヤーはソフィアの人格を切り替えながら質問をおこない、明らかになった新事実をまた別の人格にぶつける、といったことを繰り返しながら、少しずつ真実に近づいていくことになる。
ただし設定どおり、本作には時間制限が存在。一日に質問できる回数には限りがある。そして7日目には捜査の進展がどうなっていようと、彼女らの誰かを犯人として指名するように迫られる。しかし彼女らはみな自分たちの誰かが殺したことは認めつつも、自分の犯行であることは否定している。つまり普通に考えれば、誰かが嘘をついている、ということになるわけだ。断片的な情報を集めながら事件やソフィアの過去の全体像を紡ぎ、期日内に結論を出すのだ。

推理アドベンチャーとしての本作は以上の通りである。しかし本作には、ソフィアたちとのコミュニケーションを楽しむゲームという側面も存在しているため、軽く触れておく。まずキーワードのなかには必ずしも事件解決に必要ないものもあり、ソフィアらと会話ができるだけという質問もある。また少しの時間放置すると、少女側から主人公に質問してくることも。さらにプレイヤーはソフィアたちが好きなものを差し入れすることが可能で、その際はちょっとしたリアクションやスチルが見られる。
ソフィアたちのセリフはフルボイスとなっており、声優の日向葵さんが1人5役で出演。強気な大人っぽい女性や明るい少女など、それぞれ個性的な人格たちを演じ分けている。またキャラクターデザインは漫画家・イラストレーターの清原紘氏が担当。顔の造形や服装はむろん同一ながら、服の着こなし方や表情などで人格の個性が感じられるつくりとなっている。こうした各人格のキャラとしての魅力も、本作の見どころといえる。トラウマを背負った少女たちとの対話に興味のある方は、チェックしてみてはいかがだろうか。
『ソフィアは嘘と引き換えに』はPC(Steam)向けに配信中だ。現在リリース記念セールがおこなわれており、7月17日まで定価の10%オフとなる税込3132円で購入可能である。