「GWにゆるくオススメしたいインディーゲーム」第四弾、ゴリラが人を殺すゲーム『APE OUT』

『APE OUT』は文字通り“ゴリラが人を殺すゲーム"である。挙げ始めればキリがないほど「良さ」が詰め込まれたのが『APE OUT』だ。

編集部より:
ゴールデンウィーク向けとして、各ライターに好きなインディーゲームに紹介してもらうという本企画。発売時期やプラットフォーム、価格など問わず、ただ好きなインディーゲームを紹介する。非常にゆるい企画なので、ゆるい気持ちで読んでいただければ幸いだ。第四弾『APE OUT』をお届けする。筆者はTakayuki Sawahata氏である。

『APE OUT』は文字通り“ゴリラが人を殺すゲーム”である。一介のゴリラとして様々な場所に幽閉されてしまったプレイヤーは、俯瞰された視界の中で、2本のスティックを用い、時に掴んでは投げ、時に肉の壁を構え、暴虐の限りを尽くしながら、自由への逃亡を目指す。対応プラットフォームはPC(Steam)、Nintendo Switch。Gabe Cuzzillo氏が開発しDevolver Digitalが発売している。

本作に関して言及すべき点は多々存在する。シルエットとタイポグラフィをメインに据えたハイセンスなビジュアルや、ツインスティックシステムを用いた名作『Hotline Miami』を思い起こさせる、殺るか殺られるかギリギリの難易度調整。興奮を掻き立てる肉感たっぷりのSEとパーカッションのみで編成されたジャズBGMに、なだらかながらもドラマをもたらす物語構成。挙げ始めればキリがないほど「良さ」が詰め込まれた『APE OUT』ではあるが、その特筆すべき点は、全てが渾然一体となって、ある種音楽を奏でるような、原始的な体験をプレイヤーに対しもたらすという部分にある。

レコードをかけるところから始まるゲームプレイは、激烈なビートを伴いながらひたすらに、左から右へ右へと進行する。空間に広がる銃声や人間を潰した際に発生するSEはBGMに対しあまりにも有機的で、蹂躙の跡に残された血溜まりは五線譜に刻まれた音符に映る。ゲームの盛り上がりが最高潮に達した時、プレイヤーは自己を暴れ狂うゴリラどころか2本のスティックを携えた演奏者であると錯覚することだろう。

そうして呼び起こされる感覚は、殺人的な破壊衝動ではなく、我々がまだ幼い頃に感じた、物質の反応に対するプリミティブな感動に似ている。わけもなく机を叩きリズムを刻んでみたり、好奇心から昆虫を解剖して中身に驚いたり。残酷さを孕みつつもその感覚はピュアでエキサイトに満ちたものだ。敵を潰すと盛り上がる。人を殺すとなんだか楽しくなってくる。さあガラスを叩き割り、肉を焼こうじゃないか。嗚呼、なんて気持ちいいんだろう。激情のうねりではなく開放へと向かう興奮が、プレイヤーの脳を犯していく。

先述した通り、本作は決して「簡単な」ゲームではない。しかし、「楽しい」ことは保証する。さあ解き放とうではないか。己の中に眠る野生を。忘れかけていたピュアな感覚を。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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