日本初のLoLゲーミングハウス訪問記 CROOZ Rascal Jesterの戦場と日常

東京隣県のとある住宅地。都心からは電車で1時間ほどの、よくあるベッドタウンの風景だ。駅から少し歩いて到着したのは、見た目はごく普通の一軒家。しかしそこは7人のLeague of Legends（以下LoL）のプロプレイヤーが共同生活し、日々練習を積み重ね、オンライン戦の日には運命の決戦場となる場だ。日本初のLoLゲーミングハウス。CROOZ Rascal Jester（クルーズ・ラスカル・ジェスター）はここで暮らし、同時に日本一の座を目指して戦っている。

2015年1月に2年目のシーズンが始まったLEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE（以下LJL）。そのなかでも前シーズンに引き続いて存在感を発揮しているチームがCROOZ Rascal Jester（以下RJ）だ。2014年の開幕シーズンとなるWINTER SEASONで見事優勝し、同年9月のグランドチャンピオンシップでは惜しくもDetnatioN FMに敗れたものの、強豪チームとしてLJLになくてはならない存在となっている。

彼らが2015年シーズンの開幕に際し、とくに注目を集めたのが、日本のLoLプロチームとしては初となるゲーミングハウスの設立。ソーシャルゲームやネット通販を手がけるCROOZとパートナーシップを結び、選手自体も昼はCROOZに勤務し、勤務後にLoLに取り組むという実業団形式のプロチームとして活動している。これまでにも個人レベルで選手同士が同居生活を行ったり、ゲームに専念する場所を設ける試みは散見されたが、企業のバックアップを得た形で本格的なゲーミングハウスを構えたのは日本初だろう。今回のLoL特集では、そのCROOZ Rascal Jesterの協力を得て、貴重なゲーミングハウスの訪問記をお届けする。

さて百聞は一見にしかず。ゲーミングハウスの内部をウォークスルーしてみたので、さっそく動画でご覧いただこう。

実際に訪問してみた率直な感想は、一軒家としてのしっかりした住み心地。後ほど選手からも語ってくれるが、掃除や洗濯も行き届いているので、いわゆる男子学生の部室のようなゴミゴミした感じはない。動画でゲーミングハウスを案内してくれたCROOZの上利氏が「やはり物件探しが一番苦労しました」と語るだけの甲斐あって、選手それぞれの個室とゲームルームが揃った間取りは、RJの7人兄弟的な一家に最適なものと言えそうだ。

ここからは選手それぞれにCROOZでの勤務と、ゲーミングハウスでの新生活についてうかがってみたので、選手プロフィールとあわせて紹介していく。

cogcog選手

RJの活動に絞ったのは大学に入学して半年ぐらい経った頃だったんですけど、最終的に退学してRJに専念することにしました。そのときは大学に残るべきかどうかは迷いましたね。でも学校とLoLを両立できるかなと考えて「それは無理だろうな」と思って、RJに力を注ぐために大学を辞めました。両親も「自分の好きなようにしたら」と言ってくれたのでありがたかったです。大学生活ではゲームをやっていることは誰にも言ってなかったですね。PCゲームを僕のまわりでやっていた人がいなくて。これまでバイトの経験もなかったので、CROOZでの仕事は新鮮ですね。

apaMEN選手

僕は2014年の5月から東京に来てて、べつのゲームのプレイヤーの友人に誘われて、シェアハウスをしてました。そのときもいちおう自分の部屋はあって、当時は四畳半ぐらいでしたね。CROOZに所属する前も社会人ではあったんですけど、これまでデスクワークのような作業はしたことがなかったので、最初はちょっと戸惑うところもありましたね。いまの作業のメインはデバッグです。共同生活ははじめは不安もありましたけど、意外とすんなり馴染んでる感じです。

Scotty選手

僕は長崎の出身で、昨シーズンは実家暮らしで大学生だったんですけど、大学は休学してこっちに来ました。両親は「行ってこいよ」という感じで、僕自身もあんまり心配はなかったです。実家からRJに参加していた頃は自分の部屋がなかったので、リビングの家族がいるところでLoLをやっていました（笑）。実家で飼ってた犬の鳴き声とかも練習中のメンバーに聞こえてましたね。長崎からいきなり六本木ヒルズで働くことになったんで、それはやっぱりびっくりしました。

Rkp選手

僕は以前は京都で1年以上正社員で働いていたので、環境の変化は最初は不安だったんですけど、生活してみると練習の質もかなり上がって、実際に相手がどう思っているかよくわかるので、コミュニケーションも深く取れるので、かなりよかったと思います。ただずっと実家暮らしだったので、お米の炊き方を全然知らなくて、前に炊こうとしたらおかゆみたいになっちゃって（笑）、次に炊いたら途中でブレーカーが落ちて、開けたら「なにこれ？」みたいなことがありました（笑）。3回目は綺麗に炊けました。僕はもともとゲームが好きで『パズドラ』（『パズル＆ドラゴンズ』）とか『モンスト』（『モンスターストライク』）とか、メジャーなタイトルはそこそこ触ってたので、CROOZでソーシャルゲームの開発に携われるのは嬉しいですね。

Lillebelt選手

最初は不安で、喧嘩もあるかなと思ってたんですけど、2ヶ月ぐらい過ごしてみて思ったよりうまくやれてます。やっぱり顔を見て話ができるんでコミュニケーションがよくなりましたね。「言ってることと思ってることは違うんだろうな」とか「お前話聞いてないやろ」とかは声のやり取りだけだとわかりにくいんで、練習の内容もよくなりました。あとはゲームと関係ない仕事をしながら練習をしていた頃と違って、妥協する部分が少なくなったというか、ちゃんとやろうという意識がすごく強くなりました。CROOZは綺麗で、すごく凝ったオフィスだったのでびっくりしましたね。僕はもともとゲームは好きなので、仕事も楽しい部分も多くてやり甲斐があります。

Rainbrain選手

いきなりみんなで集まって生活するのは大変なことなんじゃないかと思ったんですけど、現状では大きな衝突もなければ、逆にゲーミングハウスのなかでバラバラになりすぎている印象もないので、いい距離感で暮らしていけてるんじゃないかと思います。全員が同じところで働いたり、練習したりしているので、何でもタイミングが取りやすいですね。いつも全員で一緒の感じなので「今日はこういう練習をしよう」とか「今日のご飯どうする？」という決め事がしやすくなりました。仕事に関してもいままで自分が経験したことない仕事で、面白くやらせてもらっていますね。CROOZではデバッグのほかにも「これだとゲームの面白みが欠けてしまうんじゃないか」とか「このほうがもっと面白くなるんじゃないか」とか意見を汲んでもらっています。

Meta選手

じつは1年前ぐらいまでは体調の関係で休養してまして、それがだいぶ落ち着いたあとに今回のお話を受けて入ることになりました。僕はほかのメンバーと違う部署にいまして、ユーザーサポート関係の仕事をしています。もともと勤めていた仕事もユーザーサポートだったので、仕事をするにあたっての違和感は感じなかったですね。いままでやってきたことがそのままやれるような状況なので、結構楽しくやらせてもらっています。7人で共同生活というのはいままであまり例がないので、男所帯でちょっとだらしない部分もありますけど、掃除を当番でやったり、時間があるときは自炊したりと、いまのところうまくやれてますね。