『League of Legends』World Championship 2015ついに決着。世界の頂点に立ったのは?

 

ハロウィンの夜、ついに結末を迎えた『League of Legends』世界大会「World Championship 2015」(以下、Worlds)。残ったチームは韓国から勝ち上がってきた2つのチーム。二冠を狙う「SK Telecom T1」と、新たなる覇を唱えようとする「KOO Tigers」が激突した。本記事では決勝戦の試合の流れを概観し、2015年の世界大会全体を振り返る。

参考記事: 『League of Legends』World Championship 2015が開幕、全参加チームの顔ぶれを紹介…など、「Worlds 2015」特集。
いよいよ始まる世界大会、『League of Legends』の試合をネットで観戦するには?…など、「観戦の手引き」シリーズ。
ついに決勝、LJLキャスターeyesと解説者Revolに聞く、WCS2015とLJLのこれから

チーム入場時に前転パフォーマンスを見せたFaker選手。コンディションは上々だったようだ。

 

決勝戦

ファッショナブルなスタイルとパフォーマンスで知られるKOOは、今回も観客席を湧かせてくれた。 画像参照元: Riot esports
ファッショナブルなスタイルとパフォーマンスで知られるKOOは、今回も観客席を湧かせてくれた。
画像参照元: Riot esports

決勝戦オープニングセレモニーおよび試合録画はLoL eSports公式YouTubeチャンネルより視聴可能。

 

第一試合

今大会のメタゲームを踏まえて注目されたのはやはり、SKTのMarin選手とKOOのSmeb選手が激突するTOPレーンだろう。第一試合では集団戦において強力な魔法ダメージをばら撒くRumbleをMarin選手が、瞬間的に大量の物理ダメージを出せるRivenをSmeb選手が選択しての激突となった。双方の激突は、Rivenのスキルの間合いを正確に見切ったMarin選手が終始優位な位置を確保することでリードを取り、さらに集団戦で強力な魔法ダメージをぶつけることでKOO側を焼き払う展開となった。集団戦で有利になったSKTがそのままKOOを圧倒し、第一試合はSKTが勝利した。

様子見のような第一試合、SKTは終始安定した試合運びで優位をキープしていた。

 

第二試合

KOOのKuro選手は今シーズン最も愛用したVicktorをPickし、Smeb選手はFioraをPickして臨んだ第二試合。Kuro選手は積極的にRoaming(持ち場となるレーンを離れて他のレーンに介入する)を仕掛け、SKTに対して優位を作っていった。一方で、SKTも中盤以降はKOOのミスを咎め、確実にその差を詰めていく。試合終盤になり、BotレーンでFioraが圧力をかけながらBaron獲得の動きを見せる、いわば「王手飛車取り」の状況を作り出したKOOだったが、Baronとの戦闘に介入したSKTの見事な集団戦の前に撃破され、そのまま試合を決められてしまった。

KOOが中盤までに作ったゴールド差はSKTの地道なプレイで詰められ、その後逆転されてしまった。

 

第三試合

背水の陣となったKOOはここで強烈な逆襲にでる。Hojin選手のLee SinがSKT側の不用意な移動につけ入る形で一気にキルを取ると、そのままJungleのリードを各レーンに押し付ける形でどんどん有利を広げていくことに成功したのだ。十分に攻撃的な装備を整えたLee SinのGankに対抗しきれずSKTはどんどんと劣勢へ追い込まれていった。KOO Tigersコールが鳴り響く会場で、ついに無敗のSKTのInhibitorが、そしてNexusが破壊された。今大会初の黒星がSKTに刻まれたのだ。

Hojin選手のLee Sinが序盤を制圧、そのまま有利をチーム全体に広げ、試合を持っていく展開に。

 

第四試合

今大会最後の試合となった第四試合。SKTのFaker選手はこの大会、ほぼ彼だけが使用してきたRyzeを再び選択した。一方のKOOもAsheやTahm Kenchといった強力かつ得意なチャンピオンを選択できていたのだが、一度回転し始めると相手を倒すまで止まらないRyzeの攻撃を前に、各個撃破される展開となってしまった。味方を守る能力に長けるTahm Kenchも、その能力を十分に生かせない状況での戦闘を強いられることが多く、強みを発揮できなかった。ゲームをDominate(支配)すると言われるFaker選手の評価に違わぬ剛腕が、2015年世界大会の栄冠を掴み取り、SKTは2度の世界大会優勝を果たした初のチームとなった。

要所要所を手堅い選択で固めたSKT。今大会、RyzeがMidとしてPickされていた試合のほとんどはFaker選手の手によるものであり、今大会の彼を象徴するチャンピオンとなった。

初の世界大会二冠を達成したSKT。昨年の苦渋を思うと、喜びもひとしおだろう。 画像参照元: Riot esports
初の世界大会二冠を達成したSKT。昨年の苦渋を思うと、喜びもひとしおだろう。
画像参照元: Riot esports

 

大会を振り返って

未知のバージョンによるゲーム

今大会は、一度も競技シーンで使用されていないバージョンによって実施されることになった。そしてこのことは、かなり興味深い事態を生むことになった。特にそれが顕著だったのはグループステージだろう。早々と適応したチームが第一週に躍進し、後れを取ったチームは1週間の間に可能な限り適応する努力をしなければならなかった。第二週においては、環境に適応したチーム同士の戦いとなったことで、第一週に先んじたチームが失速する場面も見られた。

 

欧州の復権

Season 2(2012年)以降の大きな国際大会では、アジア(韓国、台湾、中国)に対して欧米のチームは勝てないという状況が続いていた。事実、Season 4(2014年)のWorldsは、準決勝の段階で残っていたのが中国2チームと韓国2チームという状態だったのだ。しかし、今大会ではヨーロッパのチームが力強さを取り戻し、準決勝までに2チームを送り込むことに成功している。名門であるFnaticはもちろん、Origenもまた、戦えるチームを作るための努力を惜しまなかった結果が出たと言えるだろう。Origenは元FnaticのxPeke選手が中心になっているので、いずれもFnaticの血が流れていると考えると興味深い。

 

凋落してしまった地域

対照的に、今大会においてかつての勢いを失ってしまった地域も存在している。全チームがグループステージで敗退してしまった北米と、大会前に素晴らしい評価を得ていながら1チームしかノックアウトステージへ進出できなかった中国である。いずれの地域も、競技性の強い公式リーグとは別に、配信による市場が非常に大きいことで知られる地域である。このような地域では、高レートSoloQ(ソロキュー)の試合であっても、配信視聴者を楽しませるためにふざけたプレイが行われることがあるため、SoloQの質が低くなっており、健全な競争が行われていないという声がある。また、配信で大きな収入が得られてしまうため、地道な練習や組織内での人間関係に悩まされることもあるプロチーム入りへの動機が大きくならないとも言われている。

もっとも、LoLに限らずゲームの楽しみ方は様々であるし、配信を楽しむということは何ら非難されるものでもない。これらの地域が来年以降、かつての輝きを取り戻せるかは各チームのこれからの努力によって明らかになっていくだろう。願わくばヨーロッパのように存在感を取り戻してほしい。

 

その他の地域に息吹く芽生え

競技シーンで話題になるのは、なんと言っても北米、ヨーロッパ、韓国、中国の4大リーグが存在する地域だ。しかし、今大会に出場したチームはそれ以外の地域からのものもある。台湾は規模こそ小さく見られているがアジアの一角を占めており、過去にWorld Championshipを制したこともある強豪リーグである。今大会でもその存在感は確かで、出場2チームともにノックアウトステージ進出を果たしている。

また、公認のリーグこそないものの、既に大きなリーグが運営されている南米が今年も我々を魅了してくれた。昨年出場したKABOOM!はヨーロッパ1位のAllianceに対して、Wildcard枠のチームとして初勝利するという歴史的な勝利を挙げた。今年の参加チームであるpaiN Gamingは、台湾のFlash Wolvesに対して劇的な逆転劇を決め、さらに北米1位の枠で出場していたCounter Logic Gamingにも勝利してみせ、競技シーン全体がさらに成長していることを印象付けてくれたのだ。元々スポーツ観戦が盛んなことから、e-Sports観戦もスムーズに根付いているという南米、今後のシーンも楽しみである。

 

まだまだ終わらない2015年

2015年のLoL競技シーンはまだ終わっていない。Worldsの興奮も冷めやらぬ11月6日より、最強地域韓国では「KeSPA Cup」が開催される。この大会の優勝チームは、RiotではなくESLが主催する国際大会である「IEM Cologne」に招待され、他地域の招待チームと腕を競うことになっている。また、11月21~22日には同じくESL主催の「IEM San Jose」が開催され、各地域のトップチームによる試合が行われる予定。さらに11月26日からはオーストラリア・メルボルンにて「International Wildcard All-Star Melbourne」が開催され、日本からもLJLのオールスターチームが参加し、12月にロサンゼルスで行われる世界規模のオールスター大会「2015 All-Star event」への参加権を争う。開催時期からして、オールスターではゲームが一新されたプレシーズン環境でのプロの戦いが見られる可能性が高い。2016シーズンを占う試金石としても重要なこれらの大会、ホリデーシーズン直前まで目が離せない。
[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]