『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、以下「LoL」)』を開発運営するRiot Games(ライアットゲームス)は、既存チャンピオン「タリック(Taric)」のフルリメイク詳細を発表した。タリックは『LoL』がクローズドベータテスト期間中だった2009年に追加されたごく初期のチャンピオンで、その後は小規模なアップデートが施されつづけていたものの、7年の時を経てついに生まれ変わることとなった。
旧タリックはその称号「宝石騎士」が示すように、きらびやかな宝石がちりばめられた鎧に身を固めた騎士であり、能力としてはヒールや防御力上昇などの支援系キャラクターであった。しかしリリースから時間が経過し、さまざまなチャンピオンが増え、そのデザインも総合的に洗練されていく中で、ゲームプレイ・ビジュアル・キャラクターといった要素の全てにおいて「時代遅れ」となってしまった。ゲームプレイ面では、スキル構成にいまいちまとまりがなく、「何かを達成した感触」に欠ける単調なプレイが問題視されていた。ビジュアル面では、最古参のモデリングゆえに「Pizza Foot」と揶揄されるカートゥーン調の三角系の足の形などが、最近リリースされたチャンピオンたちと並べた際の違和感をかもしだしており、キャラクター面でも初期チャンピオンであるためセリフや設定が少なく、これも最近のチャンピオンに比べると見劣りしていた(その分、ユーザーによる想像が時間をかけて膨らんだのだが)。
新タリックでは、旧タリックの根幹を保ちつつも、すべての要素を完全に一新。特にスキルは、タリック自身の物理防御力や体力でボーナスが増えていくという「サポート・ファイター」の特徴はそのままに、使いどころとタイミングをよく考えて活用する必要がある、「組み合わせて強力な能力」となっている。ビジュアルは旧タリックのイメージを継承し、軽装になったものの、宝石をまとうマッチョで麗しい騎士としてクオリティの高いものに仕上がっている。セリフも大幅増量し、7年間の間にファンが育んできたナルシストの要素も取り入れられている。とはいえキャラクターとしてのバックストーリーは完全に変更され、旧設定を愛していたファンたちからは残念という声も上がっている。
新タリックの能力
旧能力と比較しつつ、タリックの新しい能力を見ていこう。旧能力のテキストは公式のチャンピオンページ、新能力のテキストは特設サイトより引用している。能力詳細は、4月7日時点のPBEでの実装をもとに解説している。
旧パッシブ:ジェムクラフト
スキル使用後、次の通常攻撃に自身の物理防御に比例する追加魔法ダメージがつき、全スキルのクールダウンが短縮される。
新パッシブ:ブラバド
スキルを使用すると次の2回の通常攻撃が強化される。この2回の通常攻撃は攻撃速度とダメージが増加し、クールダウンを短縮する。
パッシブは旧効果をほぼそのままに、適用される通常攻撃が2回となり、攻撃速度アップ効果がつく純粋な強化となった。序盤のレーンで味方を守りながらダメージを上げ、また集団戦では前衛を受け持ちつつスキルを回す助けとなるだろう。
旧Q:パワーストーン
大地のエネルギーを集め、味方1体と自身の体力を回復する。自身を対象として使用すると、体力回復量が増加する。
魔石のエネルギーを集め、指定した味方チャンピオンと自身の体力を回復する。自身を対象とした場合は回復量が増加する。
新Q:スターライトタッチ
自身と周囲の全ての味方を「スターライトタッチ」のチャージ数に応じて回復する。チャージ数は時間と共に最大3つまで溜まる。
Qはヒールという点は変わっていないが、チャージにより効果量が変わるため、使うタイミングを計る必要が生まれている。チャージ数はスキルアイコンの右隅に常に表示されるため、効果が上がっているかどうかがわかりやすい。単純なヒールであるだけでなく、味方の体力を回復するためには一定範囲内にいなければならないため、効果的な位置取りも要求される。集団戦では、タリックといっしょに前衛を担う味方にとって心強い能力となるだろう。
旧W:ジェムクラッシュ
自動効果: 体を保護する魔石の力で、周辺にいる味方チャンピオン全員と自身の物理防御が増加する。
発動効果: 魔石を破裂させ、周囲の敵ユニットに魔法ダメージを与え、物理防御を4秒間低下させる。クールダウン中はタリックの物理防御が低下する。
新W:バスティオン
タリックの全てのスキルはタリック自身、そしてリンクした味方の両方から同時に発動される。
自動効果: タリックの物理防御が増加する。
発動効果: タリックが味方1人とリンクして両者のダメージを軽減する。別の味方に使用するか、リンクが切れる距離まで両者が離れない限り、バスティオンの効果はリンクした味方に適用され続ける。
旧Wは「殴りあう前にとりあえず発動しておけば有利になるらしい」という能力であり、効果も数値部分が主で、目に見える形ではわかりづらいものだった。新Wはまったく新しい能力となっており、リンクした味方とタリック自身のダメージ軽減だけでなく、タリックが他のスキルを使った際に双方からスキルの効果が発揮されるという、全く新しい相互作用が付与される。ルルのE「ピックス、おねがい!」で移動させたピックスからQ「ぴかぴかビーム」を発射する要領に似ているが、「全てのスキル」が対象の味方からも発射されるという点が大きく異なる。E以外のタリックのスキルは、自身を中心に効果を発揮するものが多いため、そういったスキルはタリックとWのかかった味方、2体それぞれの中心から二箇所で発動することとなる。リンクの距離は1400ユニットが限界であり、それ以上離れてしまうと効果はなくなる。
旧E:プリズムチャーム
宝石をちりばめた盾からプリズムを発射し、対象にダメージを与え、スタン効果を付与する。自身と敵の距離が近いほどダメージ量は大きくなる。
新E:ダズル
発動から一瞬遅れて指定した方向に天上の力の波動を放ち、当たった全ての敵にスタン効果を与える。
旧タリックの象徴でもあった「キラッ☆」スタンビーム。旧Eは対象指定能力であったため、敵からすれば射程に入ると確定でスタンをもらってしまう、嫌な能力であった。新Eは方向指定のエリア指定能力となっており、発動すると効果範囲の予告が表示され、一瞬遅れてその範囲内の敵にスタンを与える。発動からスタンの間にタリックが移動した場合、範囲は地面に固定されているのではなく、タリックにくっついて動くという点に注意したい(動画参照)。貫通能力であり、スタンに加えてダメージも与えるため、トップやジャングルではミニオンやモンスターを処理する際の助けにもなる。Wをつけた味方からも発射されるため、併用するとスタン範囲を広げることもできる。
旧R:シャイニング
ハンマーで地面を叩きつけ、周囲にいる敵ユニットにダメージを与える。その後一定時間、タリックの体を包む魔石からエネルギーが放出され、タリックと味方の攻撃力および魔力が増加する。
新R:コズミックレディアンス
タリックが星々に守護の力を求める。発動から一定時間後、自身と周囲の味方全てが数秒間無敵状態になる。
旧Rも旧Wと同様、数値面の強化が主で効果の手応えがない能力であった。新Rは無敵状態という、わかりやすくも強力な効果となっている。Wをかけた味方にも効果が発揮されるため、位置取りによっては広範囲の味方を無敵状態にすることができるだろう。ケイルのRも無敵状態を得る能力であるが、タリックのRはケイルと違いCC(crowd control、スタンやスローなど動きを阻害する能力)を防ぐことはできない点に注意したい。
リメイク総評
旧タリックは必要習熟度が低く、初心者向けに設計されたサポート・ファイターであった。しかし、プレイが単調であり、学習曲線が頭打ちになるとそれ以上伸びていかないという欠点もあった。新タリックはデザイン面でその部分の克服を試みており、位置取りやスキル使用のタイミングがはるかに重要となっている。一方で初心者向けという旧タリックのデザインベクトルも受け継いでおり、チャージでヒール量が変わるQや、独特のリンク効果を持つW、そして無敵化スキルのRを適切なタイミングで活用していくことで、チームに貢献している感触が得られるだろう。社内テストでは、デュオレーンでのサポート以外にも、Topでのソロレーン担当、ジャングルでの運用といったプレイも見られたそうであり、今後さまざまな可能性が模索されることだろう。待望のフルリメイクは、次の6.8パッチで実装予定だ。