「桜の花が咲く頃までには」ライアット齋藤ディレクターが語る、LoL日本サーバー離陸前

11月28日に行われたIWCAのパブリックビューイングの控室で、現在日本サーバーを準備しているライアットゲームズLLCの齋藤亮介ディレクターにインタビューを行った。

『League of Legends』(以下LoL)の日本代表がオーストラリアに赴き、喜びと悔しさが交錯した国際オールスター戦、IWCA。11月28日に行われたIWCAのパブリックビューイングの控室において、現在日本サーバーを準備しているライアットゲームズLLC(以下、ライアットジャパン)の齋藤亮介ディレクターにインタビューを行うことができた。約1年前、LoL特集の開始にあたってライアットジャパンを訪問し「時期が来たらぜひ」と長くインタビューを希望していたAUTOMATONとしては、まさに待望のインタビューである。

月間アクティブユーザー6700万人というLoLを擁し、世界中にサービスを提供するライアットゲームズは、プレイヤーからの声を積極的に取り入れる非常にオープンな運営スタイルでも知られる。その日本支社はどのようなことを考え、どのように日本サーバーを準備しているのか? 齋藤ディレクターにはローカライズの苦労から、日本上陸にかけるスタッフの熱意まで、幅広く語ってもらった。日本サーバー開始前、多くのプレイヤーを待たせているデリケートなタイミングとしては、可能な限り誠実に答えてもらったと言えるだろう。この時期、LoLプレイヤーなら誰もが気になるキーマンへのインタビューを、約1万字というボリュームでお届けしたい。

 

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ライアットゲームズLLC 齋藤亮介ディレクター

――まず一番気になる質問を単刀直入にお聞きします。日本サーバーの開始時期はいつですか?

齋藤:
通常ライアットゲームズはこういったことは事前にアナウンスしないんですが、日本のプレイヤーのみなさんを長くお待たせしている現状を鑑みて、もう少しお知らせしたほうがいいという判断を社内的にも詰めました。ですので、いまお伝えできるレベルでお答えすると「桜の花が咲く頃までには」ということになります。

――年内開始という可能性はありますか?

齋藤:
年内開始ということはないです。

――では今年中はないからまずはみんな落ち着けと。今回のIWCAの壮行会や中継が「カウントダウンイベント」と銘打たれたので、すぐにでも始まるのではないかと思ったプレイヤーもいたようですが、今後も日本サーバー開始前にカウントダウンイベントは予定していますか?

齋藤
:
LJLの来期のシーズンスタートなどに合わせて年明けにも考えています。お伝えできる段階になったらお知らせしたいと思います。

――では2016年の1月中旬に予定されているLJL開幕のほうが、日本サーバー開始よりも早い?

齋藤:
そうなります。

――わかりました。2016年のLJL開幕から桜の花が咲く頃までには、ということですね。齋藤さんにインタビューに答えていただくのも初めてなので、人物像もふくめてお聞きしていきたいのですが、ライアットに入られたタイミングは?

齋藤:
今年の9月になりますね。東京ゲームショウの前です。東京ゲームショウにライアットゲームズとして何か出すか、出さないか、というのが最初の意思決定でしたね。ロサンゼルスのライアット本社に引き継ぎなどもふくめて研修に行っているときにその話が出て、向こうで「どう思う?」と言われて「それは出すべきです」という話になったのを覚えています。

――ライアット入りされる前はどういったキャリアを?

齋藤:
デジタルアーツというセキュリティソフトウェアの会社のマーケティングディレクターとして、創業社長の下でマーケティングだけでなく、一通りのロードマップから営業まで幅広く関与する仕事をしていました。その前にはインテルに勤めていて、シリコンバレーの本社にも行ったりして、分析をするポジションに就いていました。そういった経験から「うちの会社に興味ありませんか?」とライアット側から声をかけてもらった形です。

――それはライアットジャパン? それとも本社?

齋藤:
本社でしたね。

――齋藤さんがLoLに最初に触れたのはいつごろですか?

齋藤:
まだインテルにいた2013年ぐらいですね。その頃ってタブレットに押されてPCの売り上げがあまり伸びなかった時期なんです。でも日本でも世界でもゲーミングPCのマーケットは好調に伸びていたので「へえ」と思って、当時すでに人気になっていたLoLに興味を持ったのが最初でしたね。

――「いま人気のPCゲームってどんなタイトルなの?」みたいな感じですか。

齋藤:
そうですね。個人的にはどちらかと言うとゲームはゲーム機で遊ぶことが多くて、PCゲームにはそれまでさほど馴染みがなかったんですが、インテルは「Intel Extreme Masters」(世界規模のeスポーツイベント)も手がけていて、LoLも縁が深いタイトルですから。

――ちなみにいまLoLの腕前はランクで言うと?

齋藤:
いやー、そこがいまブロンズなんですよね……。シーズン4はシルバー4まで行ったんですけど、シーズン5はブロンズ止まりでした。MalphiteやAmumuというタンキーで集団戦に強いチャンプをよく使っていたんですが、シーズン5では欲を出してキルを取るタイプのチャンプを試した結果、ランクが落ちましたね(苦笑)。

――最近のお気に入りチャンピオンは?

齋藤:
最近はVolibearを使ってみたりしています。

――なるほど。話を戻すと、もともとIT企業で国際的なプロジェクトを動かすところに身を置いてらっしゃった、ということですね。

齋藤:
そうですね。LoLとライアットに関してはゲーム自体もですが、会社としても面白いなと思っていまして、偶然なんですけど、ライアット入りする前に梅原大吾さんの本をちょうど読んでいて「日本ってまだまだゲームプレイヤーの地位が低いな」と感じていたんですね。それもあってeスポーツを積極的に推し進めていくライアットは心の琴線に触れる会社であったし、プレイヤーのゲーム体験を第一に考える「Player experience first」というポリシーにも共感しました。そういうところがきっかけにはなっています。

――ライアットジャパンの会社としての規模は?

齋藤:
いまは15人ぐらいで、スタッフは鋭意採用中です。もともとゲーム関係の人間が半分超、私のように直接ゲーム業界には携わってこなかった人間が半分弱いる形です。この編成は我々も意図しているところがありまして、ゲーム業界じゃないけどLoLが好きな人が入ってくるのと、ゲーム業界出身の人がミックスしたほうがうまく行くよね、というのがライアットの各国拠点でいわれています。創業者のふたり(Marc ‘Tryndamere’ MerrillとBrandon ‘Ryze’ Beck)からして元々コンサル業界の人間ですから。ゲーム業界の流れも見据えつつ、慣習やいままでの常識だけにとらわれないように、というスタイルにならってライアットジャパンも半分半分の体制でやっていますね。

――ライアットはゲーム業界のなかでもオープンなスタイルですが、ライアットジャパンとしてはその点をどうお考えですか?

齋藤:
ライアットらしさを出すと言う意味ではまだまだ道半ばだと思っています。私は社内では「もっとプレイヤーとコミュニケーションを取っていこう。スタッフも自分たちから前に出ていいよ」という話をしているんですけど、やっぱりまだ少し及び腰なところもありますね。いまはサーバー開始前なので準備に注力していますが、いずれはもっとオープンにコミュニケーションを図っていきたいなと考えています。今回のIWCAのパブリックビューイングの解説役をRiosilvaにやってもらったのもその一環ですね。彼はDetnatioN FocusMeのメンバーとしてLJLで活躍した選手で、LoLに対する知見が非常に高いので、それを活かして元プロプレイヤーの目線の解説を、ということでやってもらいました。「きっと次はこう来ます」というプロ野球の野村克也さんみたいなコメントを意図して頼んでみました。

――ちなみにライアットでのRiosilvaさんの担当部門は?

齋藤:
彼はプレイヤーコミュニティがどういった形でLoLを理解しているのか、ということにも通じているので、おもにその点で尽力してもらっています。ローカライズでも大きな役割を果たしてくれましたね。加えて来期からはプロプレイヤーマネジメント、日本のプロプレイヤーとライアットの架け橋の役割を果たしてもらおうと考えています。

――なるほど。プロとは言え、まだ若い腕利きのゲーマーとしては「俺に指図できるのは俺より強い奴だけだ」という気持ちもあるでしょうからね。

齋藤:
そうですね(笑)。仮に中途半端な腕前の人間が担当者だと、プロたちからすると「……で、お前うまいの?」みたいな気持ちはどうしても残ると思うんですよね。そのポジションをRiosilvaが担当すれば、心理的な壁はすっと取り除けるでしょうから、そういった点でも大きく貢献してくれると思います。

――ほかにユニークなスタッフとしては、海外のLoLの最新情報を翻訳して逐一翻訳している「Game 4 Broke」というブログの管理人のlotanさんがライアットジャパン入りしていますね。lotanさんの担当は?

齋藤:
コミュニティマネジメントですね。とくにオンラインのコミュニティを受け持ってもらっています。ライアットはどの地域でもプレイヤーとのコミュニティをどう盛り上げていくかをすごく重視しているので、日本でもlotanを中心にオンラインコミュニティをしっかり構築していこうと考えています。例えば英語サイトではガイドも豊富にありますが、国内ではまだ情報サイトが十分ではなく、これだと日本サーバー開設後に新しい人がどうやってより深くゲームを理解していけるのかという情報がまだまだ少ない。ここをどう作っていくのかというところを、彼中心に取り組んでもらっていますね。

――ではおふたりとも適材適所で活躍していると。

齋藤:
そうですね。

nog-1――次はローカライズについてお聞きしたいと思います。先日アップされた「Behind the Scenes」という日本語版のメイキング動画は、国内だけでなく海外からの反応もすごかったですね。(※動画は10月18日に公開され、インタビュー時の再生回数は180万回以上)

齋藤:
すごかったですね。社内でも「こんなに海外から注目されるの?」とびっくりしました。日本の声優さんが持っているソフトパワーが海外でもいかに強いか、ということを肌身に感じましたね。

――動画では4人の声優が発表されましたが、全チャンピオンの担当声優を発表する予定はありますか?

齋藤:
いまのところ発表する予定はないですね。

――細かくは日本語版が始まったときにみなさんで聞き取ってください、という感じになりますか。

齋藤:
そうですね。

――キャストは総勢どのくらいになりましたか?

齋藤:
いまチャンピオンは128体いるんですが、ひとりの声優さんが複数担当したケースもあるので、総勢60人ぐらいですかね。1人1役の場合もあれば、3役ぐらいやってもらっている場合もあります。

――起用する声優はどう決めていきましたか?

齋藤:
収録作業自体は私が入る以前から行われていたんですが、いろんな声優のボイスサンプルを聞き比べて、チャンピオンに合う声を選んでいった形もありますし、協力会社の経験豊富なスタッフからの提案もありました。ネットコミュニティでの「このチャンピオンはこの人にやってほしい」という意見も、ある程度は参考にしたと聞いています。

――LoLには日本のアニメ等のネタもあったりするので、ライアット本社のアニメ好きのスタッフから「アニーの声に釘宮理恵を使ってくれないか?」とかそういうリクエストもあったりするのではと勘ぐってしまうのですが、そういうことはない?

齋藤:
それはないです(笑)。ライアットのやり方としては、ローカルセントラルモデルというのがありまして、デベロッパーとしてはセントラルがありますが、パブリッシングやローカライズは基本的に現地に任せるという形なんですね。なので日本語版ボイスに関してもオリジナルのイメージを損なわない範囲で、ライアットジャパンが意思決定を行って取り組んでいます。

――なるほど。収録自体は齋藤さんが入る前ということで、今年の上半期におもに行われた形ですか。

齋藤:
収録自体は私が入った段階でかなり進んでいて「こんないい仕事してくれているんだ」というのは驚いたところですね。「Behind the Scenes」にもありましたが、Lulu役の悠木碧さんやZiggs役の花江夏樹さんなど、LoLをすでに知っている声優さんも結構いらっしゃって、前向きに協力してくださった方が多いのが非常に印象深いですね。声のサンプルをあらかじめご自分でスマートフォンに収めて「こっちの声はどうですか?」と提示してくださる方もいて、単なる受け身ではない姿勢にはプロとしての感銘を受けました。

――このところ若手声優としてどんどん人気が上がっている花江夏樹さん(『東京喰種』金木研役、『アルドノア・ゼロ』界塚伊奈帆役など)はもともとLoLをかなりやり込んでいたそうですね。

齋藤:
そうですね。来社してテストプレイしていただいたのはちょうど私が出張中だったんですが、「早く出してください!」という声をいただきました。

――ローカライズ作業についてもう少しお聞きしたいのですが、とくに大変なのはどういった部分ですか?

齋藤:
意外かもしれませんが、一番大変なのはLoLのゲームクライアントの文字数制限ですね。つい先日も「Life Steal」を「物理吸命」と和訳した点に賛否両論いただいたんですが、そもそもカタカナの「ライフスティール」だと規定の文字数に収まらないんですね。同じようにチャンピオン名でも「ツイステッド・フェイト」の「ツイステッド」が入らない部分があって、一部「フェイト」になってるんですが、文字数制限があるなかで、カタカナでそのまま持ってこられないワードが悩ましいですね。

――例えば洋画の字幕を2行以内に収めるような制約に近い?

齋藤:
そうですね。その部分は新しいデータが来る度に「どうしようか」となるところですね。

――逆に日本語にしたことで言い回しがビシッと決まっている部分もあるので、一概にデメリットでもないですよね。

齋藤:
そこはやはりローカライズチームがこだわったところで、彼らは当初「可能な限りそのままでいきたい」という主張だったんですけど、現実的には字数制限の問題で難しいと。「じゃあどうしようか」ということになって、オリジナルのニュアンスを大事にした上で和訳に取り組んでくれました。例えば彼らの説明で「なるほど」と思ったのは「このゲームで風と嵐は違うものなんです。嵐が使えるのはこのチャンピオンで、風を使うのはこのチャンピオンです」といったことなんですね。

――JannaとYasuoの操る能力は近いようで厳密に違うと。

齋藤:
そういうゲームコンテクストの大事な点をローカライズにきちんと反映できたのはよかったと思います。必ずしもオリジナルに忠実なだけではなくて、日本ならではの遊び心や表現もあっていいと思いますし。あとは10月から3回ほどモニタリングテストをやってまして、そこでのフィードバックも随時取り入れています。漢字が増えた結果、難しく感じるという意見を多くもらっていて、文字数の制約も踏まえながらどういうふうにわかりやすくしていこうか、というところをいま考えています。

――なるほど。

齋藤:
今後は可能であればローカライズ担当の人間とも、もっとコミュニケーションができるようにしていきたいです。例えば単にこちらからアウトプットを出すだけではなくて、その背景や制約条件も説明すると「あ、そういうことなのか」という理解や「だったらこういう表現もあるんじゃない?」という反応も生まれると思うんですね。もちろんその上で反映できる声、反映できない声はあるんですが、意見交換しやすい建設的なスタイルで、プレイヤーのみなさんと日本版をともに作り上げていくことができればいいなと。いずれにせよプレイヤーからの声が大事だと考えています。現状オフィシャルな窓口はFacebookになりますが、今後もオープンなコミュニケーションのための場を積極的に設けていきますし、ご意見はぜひ我々に送っていただければと思います。

――期待しています。現状日本人プレイヤーはおもに北米のアカウントでプレイしていると思いますが、日本サーバーにスムーズに移行させることは可能ですか?

齋藤:
はい。これまで他地域で新たにサーバーをオープンしたときと同じように、アカウント・トランスファープランを準備しています。詳細もすでに詰めていますので、適切なタイミングで発表したいと思います。

――それは「この期間内であれば他地域のアカウントから新サーバーにノーコストで移行できます」という形になると考えてよろしいですか?

齋藤:
そうですね。

――では逆に、日本サーバーでも英語版を選んでプレイすることはできますか?

齋藤:
いえ、現時点では日本サーバーでは日本語版でのプレイのみを予定しています。

――アニメファンを中心に、日本サーバーでプレイしたいという海外プレイヤーも多いと思います。海外プレイヤーが日本サーバーでプレイすることは可能ですか?

齋藤:
そこはいまの時点ではお答えは控えさせてください。海外プレイヤーの受け入れをどうするかはまだ検討中です。

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――ライアットのオープンなスタイルと、ライアットジャパンのスタイルは今後どの程度一致させたいと考えていますか? 運営としてどの程度日本流にアレンジしていくのか、ということなんですが。

齋藤:
まったく同じ、ということにはならないと思います。ライアット全体の精神である「Player experience first」であったりとか、プレイヤーとコミュニケーションを取っていこうというポリシーはライアット流ですが、それをどう展開していくかというチャネル(道筋)や表現方法は日本に合わせていくと思います。現状でも各地域に応じた取り組み方はされているんですね。例えば北米地域ではreddit(アメリカのソーシャルニュースサイト)をよく使います。でもredditは日本では馴染み深いサービスではないですよね。逆に日本だとTwitterは盛んに使われていますが、海外ではそれほど使われていない地域も多いんですよね。あとは社員が出てきて「ハーイ」みたいな感じの動画を多用する地域もありますよね。あれもどこまでやるかというのはありますので、なるべく日本のプレイヤーに受け入れられやすい形、コミュニケーションを取りやすい形を選んでいくことにはなると思います。

――PCゲーム、MOBAというジャンル自体がまだ日本では一般的ではないと思いますが、そこに対しての施策や勝算は?

齋藤:
これまでの国内のゲームデベロッパーの方々がスマホやタブレットのカジュアルなゲームにシフトしていて、本格的なゲームをがっちり提供するということが減っていますので、そこを望んでいるプレイヤーで、現状のタイトルになかなか満足していない方にはアピールしていきたいですね。ですのでまずはコアゲーマーにどれだけしっかり届けられるかどうか。コアなプレイヤーが「このゲーム面白いよ」と周囲に広めてくれるということが、世界的に見てLoL普及の後押しをしてくれていることは間違いありませんので。その上で日本語でサービスを提供にすることで、いままで英語だから敷居が高かった人にも届けていければと考えています。

――eスポーツというプロシーンについてはどうお考えですか? お隣の韓国では人気、実力ともに巨大な規模のエンターテインメントとして動かされていますが。

齋藤:
日本におけるプロ野球やサッカーになれるとは思っていないんですが、コミュニティがしっかりと継続できるスポーツシーンは作っていきたいですね。例えばテレビで試合がそれほど放送されているわけではないのに人気が根付いているスポーツはありますよね。そこは目指す形としてアリかなと思っています。とは言え決してテレビを軽視しているわけではなくて、最近テレビでeスポーツが特集される場合にはLoLが取り上げられることが多いですし、ライアットからも世界大会の映像などを提供していますので「eスポーツと言えばLoL」といういい流れは活かしたいと考えています。

――日本のプロシーンへの関わり方はどうなりますか? LJLを運営するSANKOとはどういった体制を?

齋藤:
これまでの2シーズンはLJLの運営元であるSANKOさんに全部やっていただいて、我々はノータッチだったんですが、来期からはSANKOさんの「こういう運営をしていきます」というプランに対して「では我々はこういうサポートをしましょう」というパートナーシップを組んでLJLを進めていく形になります。各地域のプロリーグの運営は様々で、例えば韓国ですとOGN(OnGameNet)が興行の大きな部分を担っているんですね。逆にこれまでeスポーツのプロシーンがほとんどなかった地域では、ライアットゲームズが主催して、現地の社内に試合用のブースを設けて、中継用のスタジオも全部作って、という地域もあります。日本で言うと、ライアットがゼロから立ち上げなくてもすでにSANKOさんがLJLを手がけていて、映像中継の実績もあるわけですから、そこはこれまで通りやっていただこうと。今回のIWCA関連のイベントがパートナーシップの第一弾だと思うんですね。ライアットゲームズ主催のイベントですが、SANKOさんにもすごくお手伝いいただいていますし、今後は両者が組むことでさらに新しい試みもしていけると考えています。

――現状LJLのチャレンジャートーナメントが国内でプロを目指す人への唯一の窓口となっていますが、アマチュアシーンに対して何か施策を行う可能性はありますか?

齋藤:
それは考えています。プロリーグが活性化する上でも、そのプロリーグがより世界で戦えるようにする上でも、裾野の整備、裾野をどう盛り上げるかというのはすごく大事だと思っていますので、それは何がしかの施策を行っていこうと思っています。

――なるほど。様々な質問にお答えいただきましたが、最後に待っている側として、なぜ時間がかかっているのかを聞かせてください。「他地域のサーバーはアナウンスから数ヶ月で開始できたのに、なぜ日本はまだなのか」という声もあります。また先日redditには「日本のLOLファンベースとライアット社員との度重なるすれ違いについて」という投稿もありました。齋藤さんからあらためてご説明をお願いできますか?

齋藤:
redditの投稿についてはこちらも把握しています。お待たせしている背景には様々な理由があるんですが、お答えできる範囲で言いますと、1年前、2年前よりもいまのLoLはより複雑になっていて、そもそものプロジェクトマネージメントが過去とは桁違いに難しくなっているので、過去の他地域でのサーバー設立と、今回の日本サーバーの設立を一概に比較できないことをご理解いただければと思います。いずれにしても北米サーバーが西海岸からシカゴに移ってからは、日本との通信速度も以前より落ちてしまっていますし、国内のプレイヤーのみなさんには大きなフラストレーションを強いている時期かと思います。とくに真剣にプレイしてくださっている方ほどつらい状況に置かれていることは我々も理解していますので、一刻も早く日本サーバーを開始できるよう、最大限の努力をしていきます。本当にお待たせして申し訳ないのですが、サービス開始まで今しばらくお待ちいただけると幸いです。

――本日はありがとうございました。

Tomohiro Noguchi
Tomohiro Noguchi

野口智弘(のぐち・ともひろ)

1978年生、三重県出身。ADを経た後、ライターとしてアニメやゲーム関連の媒体を中心に執筆。北欧や中東など海外のオタク事情についても取材を重ねる。

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