いよいよ決勝を迎える『League of Legends』の世界大会、「WCS2015(World Championship 2015)」。日本サーバーの稼働開始も控え、国内のLoL人気が急速に高まるなか、いままで以上に注目度の高い世界大会になったと言えるだろう。今回は特別対談として「LJL(LEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE)」のキャスターを務めるeyes氏と、解説者のRevol氏が登場。WCSの見どころからこぼれ話、さらにLJLの来シーズンについても語ってもらった。
なお日本時間の10月31日夜にスタートする決勝戦は、ニコニコ生放送およびTwitch、公式配信にて視聴が可能だ。
――WCS2015がいよいよ山場を迎えています。これまでWCSを見る経験がなかった人に対してWCSをひと言で例えるなら、どういう言葉になりますか?
eyes:
LoLのワールドカップですね。
Revol:
で、これまでで一番面白いワールドカップですね。
eyes:確かにこれまでで一番面白い。波乱の大きい展開ではあるんですが、全体の傾向としては試合前のバン&ピック(※プレイするチャンピオンの選出と禁止枠の選定)で勝敗が決まっている印象がある大会ですね。
Revol:
プロシーンでは勝敗の7割をバン&ピックが握ってると言われますけど、今大会は9割ぐらい握ってますよね。いずれにしても波乱の多い大会で、あとから公式のバックナンバーの動画を見る人でも、予想がつかないような展開が多く見られると思います。
――波乱の大会を示すエピソードとして、ツイッターでは解説者の予想が燃やされる画像が投稿されてましたけども(笑)。
Revol:
あれはMonteCristoですね。彼は韓国のプロリーグの解説者として尊敬を集めてる人なんですけど、今回立て続けに予想を外してしまってネタにされたという(笑)。しかもその画像をツイッターに投稿したのはライアットの公式アカウントですからね。
eyes:
試合外のネタで言えば、Doubleliftがスタジオでパネルになってたのもやばかったよね。彼のチームのCLGは本戦になかなか出られなくて、Doubleliftは解説席にいることが多かったんですね。それが今回はめでたく出場できたので、代わりに彼の等身大パネルが置いてあったという(笑)。あと今回僕が印象に残ったのはFnaticですね。昨年末に一度チームが崩壊していて、元のチームのプレイヤーが1人しか残らない状態だったんですが、そこから立ち直ってEU最強の座に返り咲いて、WCSでも予想以上の結果を残した。EU勢はここ数年、アジア勢に勝てないというレッテルがあって「だから応援しよう」という機運も高まっていたし、今回のWCSは彼らのホームであるヨーロッパを転戦する形でしたから、地元の有利はFnaticとOrigenというEU勢の活躍を後押ししたと思います。
――ちなみに優勝予想は?
eyes:
SKT。
Revol:
SKT。
――即答ですけども(笑)
eyes:
とにかくSKTは強すぎますね。
Revol:
化け物です。韓国は前回の世界大会で優勝したSAMSUNG WHITEと準優勝のSAMSUNG BLUEが解散して、タレントがどんどん流出してるんですよね。そのなかで唯一SKTは綺羅星のごとくタレントを固められたんですよ。今期最も完成されたプレイヤーに支えられてるチームなので。
eyes:
穴がない。あと全員アウトプレイ(※個人技で圧倒するプレイ)ができるんです。集団戦で先に2人負けて「あ、終わったな」と思ったら、いきなり1人がアウトプレイして結局勝っちゃうとか、3000ゴールド負けてるのに5人全員でアウトプレイして勝っちゃうとか、「これとこれとこの要素が揃わないと絶対にひっくり返せないじゃん!」みたいなプレイを平気でやる。つまり見てる側が期待している以上のことをやっちゃう。
Revol:
各ポジションに世界最強が揃ってしまいました、みたいな。まだ個人技だけなら倒せる要素もあるんですけど、コミュニケーションも完成されていて、チーム面でも韓国最強なので穴がないですね。
――そのなかでもMIDレーナーのFaker選手がLoLシーンでは事あるごとに話題に出ますけど、どういうスター選手なんですか?
Revol:
MIDレーナーにやってほしいことをすべてやってくれる選手なんですよね。アウトプレイしてほしいときにアウトプレイしてくれる。キャリーしてほしいときにキャリーしてくれる。それが彼はプロとしてスタートしたときからずっとそうなんですよね。ただ前シーズンでは彼は輝きつつもチーム全体では結果を残せなかった。そこでひとつ語り草となるストーリーができて、今期はスタープレイヤーに囲まれながらも輝きを維持しているという、これ以上ないストーリーができあがっている感じですね。もちろんFAKER自身のプレイが素晴らしいからなんですけども。
eyes:
最初に2013年に新人として出てきて、並み居る世界の強豪MIDプレイヤーたちを倒していったんですよね。「2013年のシーズンはFakerのシーズンだ」と言わしめるほどの活躍を見せて。
――いま19歳ですから、当時17歳ですよね。
eyes:
そうですね。しかもFakerは彼にしかできないピックをやるんですよね。MIDでMaster Yiとか。で、それで勝ってしまう。
Revol:
そういう華がある選手なんですよね。
――Fakerのことをサッカー界のメッシ、バスケ界のマイケル・ジョーダンと例えるメディアもあるほどなんですが、本人はどういう人なんですか?
Revol:
インタビューを見る限りでは内向的な性格みたいですね。どちらかと言うと黙々とプレイするタイプだそうです。
eyes:
ただものすごい負けず嫌いなんですよ。負けると唇を噛んでいまにもブチ切れそうな表情をするんですよね。
Revol:
試合中継ではアウトプレイされたときに、アウトプレイされた側の表情をカメラで映すんですけど、彼は悔しさがはっきり出ますよね。
――ほかに今大会で印象に残ったことは。
Revol:
やっぱり自分たちはもっと上に行けるんだと今年がんばってきたチームが結果を残しましたね。で、これまでの実績に安心していたチームはなかなか結果を残せなかった。
eyes:
前シーズンで中国勢は非常に強かったんですが、今回中国のチームはスクリム(練習試合)をあまり真面目に取り組んでなかったみたいなんですね。あとはサポートスタッフよりも選手のほうがチームの権力を握っているチームが多かったと聞きます。それでメンタルやチームワークのコントロールがうまくいかなかったケースもあるようで。個人の配信で「俺だけがFakerを倒せる」というビッグマウスなことを言ってしまった選手もいたんですが、結果が伴わなかったので中国のネット掲示板は大荒れになったみたいですね。結果的にはアジア偏重だったのが全世界的にレベルが上がったというか、シーズン3、シーズン4とアジア勢に苦渋を舐めさせられたEUや北米のチームの改革が始まって、それが実を結んできたWCSなんじゃないかなと。
Revol:
決勝は中継で日本語配信もするんですが、僕はあまり机を叩かないようにしたいですね。前回興奮しすぎて机をバンバン叩いちゃったので、今回それはやらないように気をつけます。
eyes:
俺は机をバンバン叩いて興奮してるRevol君を実況したい(笑)。決勝ならではの見どころとしては毎回決勝の会場にはほかのチームの選手が来てるんですよ。中継では彼らにコメントを聞いたりくれるはずなので、そこのアドリブなんかも見どころですね。
――WCSに続いて、11月26日からはオーストラリアのメルボルンでIWCA2015(International Wildcard Invitational All-Star)が開催されますが、こちらにも日本のオールスターチームが出場しますね。
eyes:
僕らもオーストラリアに行きましょう!(LJLスタッフに)現地から実況したいなあー。僕、毎回日本から実況してるんで、この2年間海外行ったことないんですよね……。
Revol:
わははは(笑)。いずれにせよオールスターなのでお祭り的な楽しみ方が日本のファン全体でできるといいなと思いますね。
eyes:
勝ち負けよりも「こんな戦い方ができるんだ!」という可能性が広がるといいですよね。いろんな選手が海外の場を体験できるのはいいことなので。
――2016年はLJLも3年目に入りますが、どういう展望を持っていますか?
Revol:
今年の日本のLoLがかなり盛り上がったので、新規チームもかなり熱を持って出てくれるんじゃないかなと期待しています。
eyes:
いままでだと選手がマネージャーを兼ねてるチームも結構多かったんですが、組織としてチームとしてやっていくんだ、という意識をどれだけ持っているかが、今後のチームには必要になってくると思います。例えばLJLに対して「もっと賞金を出して欲しい」というのはよく言われる意見なんですね。その点は日本の法律との兼ね合いもありますし、海外の賞金は確かに莫大です。ただ海外のトップチームにせよ、賞金だけでチームを運営しているチームはないんですよね。
――「プロゲーマー=賞金稼ぎ」というイメージがそもそも勘違いなんだと。
eyes:
そういうことになります。プロになりたいのであれば、単に試合に勝つだけじゃダメということですね。大会の賞金で食っていくんじゃなくて、スポンサーを見つけてプロとして長期的にチームを運営していくという、(DetonatioN)FMみたいなチーム運営ができるのかどうか。
Revol:
FMができたのであれば、ほかのチームもそれに続く可能性はありますからね。
eyes:
「プロゲーマー」という言葉が急に注目されるようになりましたけど、プロの立場を与えられるだけじゃなくて、自分たちもプロとしてシーンを作る側だという意識を持って臨まないと失敗するよ、ということは言っておきたいんです。プロゲーマーとして生活していく熱い思いがあるのであれば、試合以外の場でもチャンスをいかにつかんでいくか。日本のプロシーンにまだまだ足りないのは、プレイヤー以上にマネージャーと営業。とにかくプレイヤーをまとめられる人間ですね。若者たちを叱ってあげられる大人が足りない。それは負けたときに叱るという意味ではなくて、プロ意識に対してですよね。選手をかっこよく見せたいとか、持ち上げて神格化したいという大人の思惑はあると思うんですけど、選手がプロ意識に欠けたことをしたときに叱ってやれないのは、チームのためにならないですから。
Revol:
LJLもより一層タフなリーグになると思うので、日本が世界の舞台を目指すために選手だけではなくて僕らもがんばらないと、というところですね。
eyes:
いずれにせよ来シーズンのLJLもさらにいろいろ変わると思いますので、引き続き楽しみにしてもらえると嬉しいですね。
――本日はありがとうございました。