台湾最強『LoL』チーム「Flash Wolves」インタビュー、「オフィス一体型練習室」大公開

台北から「高鐡(ガオティエ)」と呼ばれる台湾式新幹線に乗って南へ約1時間のところにある台湾第三の都市・台中。私がこの街にわざわざ足を運んだ理由はただひとつ、台湾きってのプロゲーミングチームFlash Wolvesの拠点があるからにほかならない。

台北から「高鐡(ガオティエ)」と呼ばれる台湾式新幹線に乗って南へ約1時間のところにある台湾第三の都市・台中。私がこの街にわざわざ足を運んだ理由はただひとつ、台湾きってのプロゲーミングチームFlash Wolvesの拠点があるからにほかならない。先日、『League of Legends(LoL)』のRiot Games公式大会である「LoL Master Series(LMS)」ファイナルの模様とOverwatchチームのミニインタビューをご紹介したが、今回は満を持して台湾最強と名高い『LoL』チームのインタビューと練習室の様子をお伝えする。

 

地元で圧倒的人気を誇るFlash Wolves『LoL』チーム

(左上から)MMD、Steak(コーチ)、Winds(コーチ)
(左下から)Karsa、Maple、Betty、SwordArT

Flash Wolvesの『LoL』チームは「LMS」で常に上位に食い込む常勝チームであり、世界大会への出場経験も豊富だ。とくに今年2月にカトヴィツェで開催された「IEM Season11」では、EUの強豪G2 Esportsを倒して優勝を果たしている。さて、まずはインタビューの前に、チームから簡単なプロフィールをいただいたのでご紹介したい。

 

MMD(游立宏)Top
タンクをよくピックし、戦闘中はフロントラインに立って敵の攻撃を一身に受ける。それにより、バックラインが敵をうまく攻撃できるような状況をつくり出すプレイが得意。性格は親切で温厚、人助けが好きな明るい青年。

Karsa(洪浩軒)Jungle
カウンタージャングルを得意とし、レーンギャンクに行くためにジャングル内を動き回る。相手チャンピオンの特徴によって臨機応変に対応することができ、マップコントロールによって相手をけん制してスノーボールしていく。性格は捉えどころがなく、おとなしくて人見知り。オタク。

Maple(黃熠棠)Mid
チャンピオンプールが広く、チームのバンピックのバリエーションを豊富にしている。レーン戦で相手にプレッシャーをかけ、Karsaとともに相手ジャングルに侵入したり、ほかのレーンにギャンクに行ったりしてチームの有利をつかむ。性格はおおざっぱだがメンタルが強く、好奇心旺盛で負けず嫌い。

Betty(盧禹宏)ADC
Botレーンにおいて強力な能力を発揮し、前に出たり後ろに引いたりするタイミングが非常に適切。ハンドスキルが高くコントロールに長けており、集団戦では大きなダメージを出してチームを救う。チームのダメージ力の核心。性格は楽観的で、独特の生活リズムを持っている。

SwordArT(胡碩傑)Support
チームのブレイン的存在。試合に臨むにあたって、チーム全体としての戦術の方向性を決めるのは彼の役割だ。Botレーン上でのSupportとしての役割のみならず、チーム全体にとっての強力な後ろ盾になっている。性格は真面目で正義感にあふれ、家族を大切にするタイプ。

 

――プロフィールを拝見しましたが、Karsa選手のところに「オタク」と書かれているのが気になります。

Karsa
やっぱりずっと練習をしているので、友達と遊びに行ったりする時間がないんですよね。それで、練習の待ち時間や家にいるときはアニメをよく見ています。

Karsa選手の練習室の席

――それから、Betty選手の「独特の生活リズム」というのもよく分からないのですが。

Betty
えっ、何ですかね、それ。僕が書いたものではないので、僕にもよく分かりません(笑)。

――では、皆さんがなぜプロゲーマーになったのか聞かせていただけますか。

MMD
僕は、ずっとゲームを続けられるぐらいゲームが大好きだったんです。それでいろんなチームからお誘いを受けたんですが、家から一番近いFlash Wolvesに入りました。

Karsa
単純にゲームが面白いから、ですね。

Betty
僕も同じです!好きなことを仕事にできるチャンスは、そうないですから。

Maple
もちろんゲームが面白いのもありましたけど、プロゲーマーになったのは自分の能力をどこまで高めることができるのか試してみたかったからですね。

SwordArT
僕はTaipei Assassins(TPA)がワールドチャンピオンになったのをきっかけにLoLを始めました。自分にもプロゲーマーになれる能力があるんじゃないかなと思って、チャレンジしたのがきっかけです。

――国内海外問わず、ライバルや目標としている選手はいますか。

MMD
たくさんいます!Smeb選手(KT Rolster)とかZiv選手(ahq)とか。彼らは本当にすごいTopレーナーなので、機会があったら彼らからアドバイスを聞きたいですね。

Karsa
ライバルはahqのMountain選手です。同じLMSで戦っているのでよく対戦しますが、彼の実力の高さをひしひしと感じています。彼との対決は、毎回プレッシャーですね。

Maple
目標はFaker選手(SK Telecom T1)ですね。彼はメタに関係なく、どんな試合でもコンディションを保っているのがすごいです。とくにレーン戦での立ち回りが素晴らしいですね。国際大会では、毎回彼と戦ってみたいなと思っています。

Betty
目標としている選手はたくさんいますね。Deft選手(KT Rolster)とかBang選手(SK Telecom T1)とか一流のADCからは学ぶことが多いです。彼らはレーン上での細かい動きが多く、狙うべき相手に対しての処理能力がとても高いと思います。そういう一流選手たちとたくさん戦ってみたいです。

SwordArT
SKTのWolf選手ですね。彼はなんだかとてもリラックスした感じでプレイしているように見えるんですけど、ひとつひとつのコントロールが素晴らしいと思います。

――「LMS」のSpringでは見事1位でファイナル直行を決めましたが、振り返っていかがですか。

MMD
僕自身は、去年と比べて少しずつ進歩していると思います。印象に残っているのは、HKE戦で僕のカミールがMaplesnowのトゥイッチを倒した場面です。

Karsa
良くもなく悪くもない、普通のシーズンだったなという感じです。うちのチームが順調にSpringを勝ち進んでしまったからか、印象に残っている試合はとくにないですね。

Maple
まずまずといった感じでしたね。今シーズンはコンディションも維持できて、崩れることがありませんでした。ただその分、僕も特別に印象に残ることはないシーズンだった気がします。

Betty
自分としては、ADCの役割がうまく発揮できたと思います。やるべきことは全部やり通せた気がしますし、徐々に進歩していってますね。

SwordArT
僕は今シーズン、非常に良かったとは言えないですね。細かい部分に気を遣えなかったし、わけがわからないまま捕まってデッドしてしまったことが何回もあったので、多くの改善が必要だなと思っています。

――ではSteakコーチにお聞きしたいのですが、今年から「World Championship(WCS)」に出場できるLMSの枠が3チームに増えたことについて、どう感じていますか。

Steakコーチ
正直我々には、あまり影響のないことだと思います。なぜならうちのチームは、以前の2枠のままでも十分WCS出場を果たせる自信を持っていますから。でもLMSに出場している中堅チームにとっては、これは大きなモチベーションアップにつながるでしょう。それが、LMSの競技レベルや環境整備の向上に良い影響をもたらしてくれたらと願っています。また、より多くの台湾チームが世界進出するチャンスを得られるのは非常に良いことだと思います。

――「WCS」と言えば、Season2以降は台湾がトップに立てていませんが、それについてはどうご覧になっていますか。

Windsコーチ
Season2以降は韓国が急成長を遂げたことで、各地域との差が広がり始めたと思います。つまりこれは我々台湾だけの問題ではなく、全世界と韓国との差だと思っています。この差をいかに埋めていくかが、世界中のチームの目標になっていると言えるでしょう。

――普段は海外の試合もご覧になりますか。

Steakコーチ
NAとEUは時差があってリアルタイムで観戦することができないので、ほぼ録画で見ます。LPLとLCKはリアルタイムで見ていますが、やはりLCK中心になりますね。NAやEUのチームは彼ら独自の考えを持ち、臨機応変に対応する能力に優れていると感じます。奇策もよく見られますよね。中国はキルゲームによって有利を得ようという傾向が強く、各レーンでスノーボールしていく感じですね。総合的にはやはりLCKが最強だと思います。自分たちにとって一番良い状況下でイニシエートする判断ができるだけでなく、スノーボールしてゲームをキャリーすることもできますからね。LJLについてはこれといった研究はしていないのが正直なところですが、ハイライトなどで良いシーンがあれば選手たちに共有することもありますよ。

――そういえば、皆さんはチームの旅行で日本に来たことがありましたよね。日本の印象はいかがでしたか。

MMD
僕の大好きな食べ物が日本にはたくさんあります。たとえばサーモンの刺身とか、ラーメンとか。

Karsa
秋葉原はもう全部がすごいです!引退したら住みたいぐらい……冗談です(笑)。

Maple
僕も秋葉原のゲームセンターで遊びましたよ。アーケードゲームは台湾よりも進んでいる感じで、音ゲーが楽しかったです。

Betty
僕は日本語が好きです。喋れませんし何を言っているのかも分かりませんが、アニメを見ているとイントネーションが面白いなと思います。

SwordArT
僕はつけ麺が大好きで、台湾にもつけ麺のお店がたくさんあるのでよく行きます。

Steakコーチ
日本は本当に食べ物がおいしいですよね。コンビニのものでも台湾よりかなりおいしいので、何度も行きました。

Windsコーチ
私もやっぱり日本といえば食べ物ですね。カレーとかうな重とか、大好きです。

――では最後に、今後の目標と日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

MMD
僕は、ゲームの理解度をもっと高めていけるように頑張りたいと思います。

Karsa
試合で自分の全力を注ぎ、チームメイトとともに良い成績をおさめたいです。

Maple
去年サンフランシスコへ行ったとき、日本のファンの人たちが僕のところに来て写真を撮らせてほしいと言ってきたのがとても印象に残っています。海外にファンがいるというのはこういう感じなんだなと思いました。

Betty
日本のファンの皆さんに応援していただき、とても感謝しています。たとえ小さな試合であっても、すべての試合において良いプレイがしたいです。

SwordArT
日本大好きです!今年は世界大会で優勝することを目標に頑張りますので、応援よろしくお願いします。

Steakコーチ
日本にもうちのチームを応援してくださっている方々がいて、とても嬉しいです。ファンの皆さん、いつも応援ありがとうございます。そしてこれからも応援よろしくお願いします。我々の今年の目標は、去年より良い一年にすることです。

Windsコーチ
今年は、世界大会で毎回ベスト4以上に入れるよう頑張りたいと思います。応援してくださっているファンの皆さん、ありがとうございます!

 

強さの秘訣、ここにあり?オフィス一体型の練習室で団結力UP

インタビュー終了後、かつて『StarCraft2』のアマチュアプレイヤーとして日本で活動していたこともあるマネージャーの4Leaf氏が、練習室を案内しつつチームの紹介をしてくれた。彼によると、Flash Wolvesの前身はYoe IRONMANで、2013年に今のチーム名に変更したが運営企業はずっとWANIN INTERNATIONALとのこと。最初のころはLoLチームの成績が良くなかったものの、2015年あたりからだんだんと頭角を現しはじめたそうだ。

練習室は高層オフィスビル内にあるのだが、オフィスと一体になったつくりでとにかく広い。このほかにもオフィスの奥にはみんなで休憩できるテーブルがあり、この日も選手たちがそこに集まって昼食をとっていた。インタビューのときは少し緊張した面持ちだったが、食事のときは皆でワイワイ楽しそうにしていたのが印象的だ。ちなみに普段選手たちは昼前までに出社し、練習は深夜0時ごろまで続くという。

練習室の仕切りはすべてガラス張りになっており、オフィスから内部の様子が一目瞭然だ。しかしドアを閉めてしまえば、なかにいる選手たちの声はほとんど聞こえない。オフィスで働くスタッフたちにとっては、一般の企業と大差ない環境である。一方、選手たちの立場では、スタッフの人たちがチームを支えるために一生懸命働いている様子を常に目の当たりにすることになる。チームに関わる全員が同じ場所に集まって一致団結している、といった印象を受けた。彼らの強さの秘訣は、そんなところにもあるのかもしれない。

 

世界最強の壁を乗り越えるために

LMSの会場Garena e-Sports Stadium内プレスルームにて優勝インタビュー

先日の記事でお伝えしたとおり、このインタビューの3日後に彼らは「LMS」ファイナルでahq e-Sports Clubを倒して優勝し、「2017 Mid Season Invitational(MSI)」出場権を獲得した。試合終了後のインタビューでは、「今回は攻撃的なプレイを試みた。やるべきことがきちんとできたし、コミュニケーションも途切れなかった」と話していたメンバーたち。質問がMSIに及ぶと、「中国や韓国のチームのことより、今はプレイインのチームとの戦いのことだけを考えたい」と慎重な姿勢を見せていた。そのMSIでは順当に勝ちを重ねていったものの、ベスト4で世界最強チームSK Telecom T1と当たり、敗北。しかし公式Facebookには、「チャンピオンSKTに挑むのは簡単ではないが我々はまだ諦めない」という文章がファンに向けて発信された。彼らの挑戦は、まだまだ続く――。

Hiromi Mizunaga
Hiromi Mizunaga

韓国在住経験5年。在韓中の2006年ごろeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後2009年ごろから本格的に「スイニャン」の名でライター活動を開始。さまざまなWEBメディアで取材、執筆活動を行うほか、語学力を活かして国際大会の引率通訳やeスポーツ特番の翻訳字幕なども手がけている。自らはゲームをほとんどプレイせず、プロゲーマーの試合を楽しむ生粋の観戦勢。

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