e-Sports専用競技場はどのようにファンを楽しませるのか?「2016 League of Legends KeSPA CUP」会場レポート

「今日はどのe-Sportsスポーツ大会を観に行こうかな」。韓国へ行くたびに、私が抱える贅沢な悩みである。そのぐらい韓国ではオフラインで行われているe-Sports大会が多い。今回、私は「WESG(World Electronic Sports Games)」という国際大会の通訳として韓国へ渡った。

「今日はどのe-Sportsスポーツ大会を観に行こうかな」。

韓国へ行くたびに、私が抱える贅沢な悩みである。そのぐらい韓国ではオフラインで行われているe-Sports大会が多い。

今回、私は「WESG(World Electronic Sports Games)」という国際大会の通訳として韓国へ渡った。この大会は、アジア各国の代表が集まって世界大会への出場権をかけて戦うというものだった。ゲームタイトルは『StarCraft2』『Hearthstone』『Dota2』『Counter-Strike:Global Offensive』の4種目。計4日間、昼頃から始まって夜遅くに終わるという非常にハードなタイムテーブルである。それでも日本代表の試合がない日を見計らって、少しだけ『League of Legends(以下、LoL)』の大会を観に行くことができた。

 

e-Sports専用競技場「NEXON ARENA」

『LoL』の大会会場となったのは、e-Sports専用競技場である「NEXON ARENA」だ。K-POPの「Gangnam Style」で一躍有名になった江南(カンナム)という繁華街にあり、 地下鉄9号線の新論峴(シンノニョン)駅が最寄り駅だが地下鉄2号線の江南(カンナム)駅からでも徒歩圏内だ。金浦(キンポ)空港駅からは急行で約30分、一本でいけるのも嬉しい。アクセスしやすい立地にある。

会場は、地下の2階分が吹き抜けになっている。観客席は1階と2階にあり、スクリーンはちょうど1階と2階の中間ぐらいの高さだ。選手たちが座る競技席は1階の観客席の目の前にあり、訪れた観客は常に選手たちの様子を見ることができる。放送席は観客席のちょうど裏手にあり、このときは韓国語放送と英語放送が隣り合わせで同時進行されていた。ちなみに会場に流れるのは、もちろん韓国語放送のほうの実況解説である。

左が英語放送席、左が韓国語放送席。韓国はキャスター1名解説者2名体制で放送するのが一般的だ。
左が英語放送席、右が韓国語放送席。韓国はキャスター1名解説者2名体制で放送するのが一般的だ。

チケットはネットでの事前購入制だが、余れば当日券も発売するという仕組みだ。有料と言ってもファン層は学生が多いため、一番高い席でも4000ウォン(約400円)で観戦できる。会場を埋め尽くすファン層は9割が10代から20代の若い女性で、試合中は常に黄色い歓声が飛ぶ。ペンライトや応援ボードなどを掲げていたり、大きなカメラを持ってきたりしているファンも多い。

 

短期トーナメント「2016 League of Legends KeSPA CUP」

2016 League of Legends KeSPA CUP」とは、韓国e-Sports協会(KeSPA)が主催しSPO TVが運営する韓国内の短期トーナメント戦である。

試合中のMVP。大会スローガンである「Here We Stand / 今、ここに」という文字が競技席に映し出されている。
試合中のMVP。大会スローガンである「Here We Stand / 今、ここに」という文字が競技席に映し出されている。

今年で2回目を迎えるこの大会には、韓国リーグの2部リーグにあたる「2016 LoL Challengers Korea Summer」入賞2チームと、「第8回大統領杯アマチュアe-Sports大会(KeG)」入賞2チーム、そして「LCK(2016 LOL Champions Korea Summer)」に出場した10チームが参加した。『LoL』の世界大会である「WCS(World Championship)」がすでに終了した後となる11月に行われたが、韓国の選手たちにとってはこの「KeSPA CUP」が1年を締めくくる大会となる。

WCS優勝チームであるSK Telecom T1。この日MVPを倒してベスト4進出を決めた。
WCS優勝チームであるSK Telecom T1。この日MVPを倒してベスト4進出を決めた。

ちょうど私が滞在しているあいだは、ほぼ毎日試合が行われていたのだが、忙しくて2回しか観に行くことができなかった。1日目に私が仕事を終えて会場に駆けつけたときは、1試合目のESC Ever対CJ Entusが終わったばかりというところだった。そのためこの日は2試合目のKeG Seoul対KONGDOO MONSTERのみを観戦。帰国直前にもう一度観に行った日は、最初の試合がSK Telecom T1対MVPだったが、他の仕事のため途中で抜けたりしたので、結局このときも2試合目のROX Tigers対JinAir Greenwingsしか最後まで観られなかった。

KONGDOOは相手がアマチュアチームだったこともあり、さすがの強さを見せつけ2-0のストレート勝ちだったが、ROXとJinAirはプロチーム同士らしい一進一退の白熱した戦いを見せつけた。結局ROXが持ち前の強さを発揮し3戦目を制して勝ち上がったが、全体的に見応えのある試合だったと思う。ちなみに11月中にこのトーナメントは終了しているが、最終的にROXが優勝、KONGDOOが準優勝となったのだから、結果的に私の観戦運は非常に良かったと言える。

セッティング中のJinAir Greenwingsの競技席の様子。MOBAやRTSの試合は防音のため、このようなブースに入るのが普通だ。
セッティング中のJinAir Greenwingsの競技席の様子。MOBAやRTSの試合は防音のため、このようなブースに入るのが普通だ。

試合終了後にはインタビューが行われる。先に女性インタビュアーによる監督やコーチのインタビューが行われ、その後、放送席で解説者による選手インタビューという順番だ。1試合目の場合はここで一旦放送が中断され、インターバルに入る。その間に抽選会が行われ、当選者にはスポンサーとなっているPAPA JOHN’Sというチェーン店のピザがふるまわれていた。ちなみに今回の大会はこのピザチェーン店の他に、KeK tvというeスポーツ専門のスマートフォン用アプリケーションを展開する企業と、XENICSというゲーミングデバイスメーカーがスポンサーになっていた。

 

放送終了後はメディア向けインタビューとファンミーティング

放送が終わると敗北チームはそのまま帰宅するが、勝利チームにはまだ仕事が残っている。プレスルームにいる各メディアの記者たちからリクエストのあった選手が呼ばれ、メディア向けのインタビューを行うのである。その間プレスルームの前の広場では、勝利チームによるファンミーティングを実施。観客席にいたファンも、続々とこの場所に集まってくる。ただし、敗北チームを応援していたファンはがっかりした様子で帰宅の途についていった。 このファンミーティングが韓国e-Sportsのオフライン大会の目玉のひとつと言っても過言ではないのだが、これについてはまたの機会に詳しくご紹介できればと考えている。

このメディア向けインタビューを行うタイミングで、私は運良く2回とも選手にインタビューをさせていただくことができた。飛び込みで時間も短かったためミニインタビューとなったが、その模様は次回お届けするのでぜひ楽しみにしていただきたい。

Hiromi Mizunaga
Hiromi Mizunaga

韓国在住経験5年。在韓中の2006年ごろeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後2009年ごろから本格的に「スイニャン」の名でライター活動を開始。さまざまなWEBメディアで取材、執筆活動を行うほか、語学力を活かして国際大会の引率通訳やeスポーツ特番の翻訳字幕なども手がけている。自らはゲームをほとんどプレイせず、プロゲーマーの試合を楽しむ生粋の観戦勢。

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