うさぎ人間と鳥人間が暮らす町で運び屋は不思議な依頼を受ける。2DドットADV『THE TRIP FOR OTHERS』 プレイレポート
一見するとピクセルアートのかわいらしいグラフィックで出来たシンプルなアドベンチャーゲームに見えた。しかし試遊してみるとまったく印象は変わり、意外にありそうでなかった文脈を持ったアドベンチャーゲームだと感心してしまう作品だった。今回はそんな意外なアプローチを取っている『THE TRIP FOR OTHERS』のプレイレポートをお届けする。
『THE TRIP FOR OTHERS』はポイント&クリックアドベンチャーゲームだ。うさぎと鳥の人間たちが共存して暮らす町を舞台に、プレイヤーはひとりの運び屋うさぎ「キルヒム」となり、奇妙な依頼を引き受ける。
今回の試遊デモでは、ホテルの一室に泊まりながら運び屋の奇妙な仕事の一端を垣間見えることができた。運び屋はレストランでメニューを注文し、完成するまでの間に周りの客の会話を盗み聞き、依頼に関係する情報を探ることができる。注文した料理によって盗み聞くことができる時間は変わり、必要な情報を手早く集めなければならない。仕事で使う所持金は食費などで減っていき、お金が足りなくなると、運び屋は簡単なバイトで稼がなければならなくなる。
客たちの会話の中でヒントとなる情報を得て、次にどんな行動を取れば先に進めるのかを探っていくのだが、さまざまなキャラクターが話す会話内容も聞き入ってしまうし、この街にどんなことが起きて、どんな人々が住んでいるのかをうかがい知れる点も『THE TRIP FOR OTHERS』の魅力だ。
グラフィックは一見かわいらしい印象だが、比較的ラフに描かれていることや、テキストの内容がどことなくシニカルであることも含めて、近年のヒット作『Undertale』を思い起こさせる また、テキストウィンドウとフォントの使い方は、『ドラゴンクエスト』シリーズや『MOTHER』シリーズに近い。
筆者が注目したのは先述した著名なRPGのスタイルが、海外のアドベンチャーゲームで有名なポイント&クリックアドベンチャーの形式で生かされている点である。日本国内のアドベンチャーゲームでは、海外におけるルーカス・アーツやシエラ・オンラインを代表とする、マウスを使ったポイント&クリックによるグラフィックアドベンチャーのデザインはそれほど普及しなかった。しかし現在ではスマートフォンやタブレット端末の普及、また国内でのPCゲームの認知度向上により、タッチパネルやマウスを使ったポイント&クリックの土壌は出来上がっていると筆者は考える。そんな中、『THE TRIP FOR OTHERS』はありそうでなかった『MOTHER』や『Undertale』のようなキュートさやウィットをポイント&クリックアドベンチャーに仕立て上げている点が面白い。
『THE TRIP FOR OTHERS』はPC/andloidでのリリースを予定。製作過程をアップしたブログはこちらから。