物理演算×落ち物パズル『TopplePOP』開発者ミニインタビュー。オーストラリアから送る『ぷよぷよ』へのラブレター

本作の特徴や影響を受けた作品、今後のアップデート予定や開発者の経歴など、さまざまな話を聞いた。

Arkimaは2025年2月6日、『TopplePOP: Bungee Blockbusters』を早期アクセス配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)。2026年にはNintendo Switch向けにもリリースするという。

本作は、同じ色のブロックを4つ繋げて消していく、1から4人で遊べる対戦型の落ち物パズルだ。
しかし、本作では通常の落ち物パズルとは異なり、ピースを直接操作しない。代わりに伸び縮みするバンジーロープに繋がれたキャラクターを動かし、彼らにピースを置かせていくシステムとなっている。

このたび弊誌では東京ゲームショウ2025において、本作の開発者に話を伺う機会に恵まれた。
そこで、本作の特徴や影響を受けた作品、今後のアップデート予定や開発者の経歴など、さまざまな話を聞いた。

──自己紹介をしてください。

Dan Graf氏(以下、「Graf氏」):
オーストラリアのシドニーにあるインディーゲームスタジオ、ArkimA Gamesのディレクターを務めているDan Grafといいます。現在はArkimA Gamesの3人で『TopplePOP: Bungee Blockbusters(以下、「TopplePOP」)』というゲームを開発中です。

『TopplePOP』は、東京ゲームショウ2025のSELECTED INDIE 80に選出され、SENSE OF WONDER NIGHT 2025では1300作品の中から8組のファイナリストの1つに選ばれました。

──『TopplePOP』以前のキャリアを教えてください。

Graf氏:
子供の頃からテレビゲーム、なかでも日本のゲームをよく遊んで育ちました。大人になったらゲーム制作を仕事にするのが夢でしたが、当時のオーストラリアには大きなゲーム産業がありませんでした。
そこで、代わりに進んだのが映画制作の道です。映画やストーリーに関わる仕事はとにかく楽しかったですね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』にも携わらせていただきました。

とはいえ、インディーゲームを作りたい思いはずっとあったので、最初は趣味としてゲーム制作を始めました。多くのゲームジャムに参加し、後に『TopplePOP』を一緒に作ることになる友人とも出会いました。

──『TopplePOP』について教えてください。ゲームシステムが独特ですよね。

Graf氏:
『TopplePOP』は『ぷよぷよ』や『ドクターマリオ』のような落ち物パズルゲームです。本作の大きな特徴は、落ちるピースそのものは動かせない点です。代わりに操作できるのは、バンジーロープに吊るされたキャラクター。バンジーの物理演算と重力を利用して、うまく彼らが持っているピースを落とす必要があります。

『TopplePOP』ではピースがグリッド状に動かないので、経験者でも少し慣れが必要なゲームシステムかもしれません。ですが、だからこそオンライン対戦ではより深い理解とスキルが物を言うのです。

元となったのはゲームジャムで出会った友人が作ったプロトタイプですね。物理エンジンのBox2Dで試行錯誤して作られたゲームだったのですが、これがまさにマッチ4パズルと物理演算を組み合わせたものだったんです。しかし、アイデアこそは面白かったものの、いざ遊んでみると操作が難しすぎる。まるで『QWOP』のようなフラストレーション満載でした。

そこで私たちはこのプロトタイプを遊びやすく、間口の広い(そしてイライラしない……)ゲームに作り変えることを考えました。これが10年後『TopplePOP』に進化するわけです。

──『TopplePOP』に影響を与えた作品を教えてください。

Graf氏:
なんといっても、『ぷよぷよ』です。子供の頃に遊んだ日本のゲーム、その一つが『ぷよぷよ』でした。私は日本語が読めないので、最初は遊び方すら分からなかったのですが、ひたすら練習を重ねてルールを覚えていきました。プレイするうちに『ぷよぷよ』にどんどんハマっていき、次第に友達と『ぷよぷよ』を遊ぶようになったんです。今思えば貴重な機会でしたね。

また、『TopplePOP』で一番頭を悩ませたのは、物理演算を用いたゲームプレイと遊びやすさの両立です。
そのバランスを考えるうえで、『Rocket League』は非常に参考になりました。『Rocket League』は車でサッカーをするゲームですよね。そして車の操作はアクセルに1ボタン、操作にスティック1本と、非常にシンプルで遊びやすい。『TopplePOP』はそうしたシンプルさを意識し、空中の挙動をなるべく簡略化しました。

最終的に目指したのは誰でも遊べる間口の広さと、トッププロが見せるような空中挙動の奥深さを両立すること。つまり、万人に愛されるファミリーゲームでありながら、パズルピースを操る技術にeSports級の奥深さを持たせるのが目標だったんです。

──本作の評判はいかがでしょうか。どこの国のプレイ人口が多いですか?

Graf氏:
ローンチの際はSteamストア側でバグが起きてしまい、初動は厳しい状態が続きました。とはいえ、注目が高まってきているのは感じます。ユーザー間では本作が認知されつつあり、YouTubeのインフルエンサーや配信者にも『TopplePOP』を楽しんでいただけています。

国別のプレイ人口ですが、最近までは大半が北米とカナダのユーザーでした。とはいえ、『TopplePOP』は英語以外にも中国語(簡体字)、日本語、韓国語、にローカライズされていて、アジア圏のユーザーも増えつつあります。対応言語は今後増やしていきたいと思っています。

パズルゲームがアジアで根強い人気を保っているのが、対応言語を決めた大きな理由の一つです。ですが、幼いころインスピレーションを受けたのがアジア市場のゲームですから、そこに私たちのゲームを広めたいからという気持ちもあります。

現在『TopplePOP』は日本のユーザーにも遊ばれていて、今回のTGS出展をきっかけに日本ユーザーが増えることを期待しています。しかし今、それ以上に本作を日本へ届ける機会をいただけたことを大変幸運に思っています。日本の作品である『ぷよぷよ』が私たちの原点ですから。

また、本作はBig FestやG Starといった韓国のゲーム展示会にも出展したので、そのおかげか韓国にもファンがいます。

──早期アクセスゲームとして今後アップデートの予定があると思います。カジュアルな遊びとeSports、どちらかに注力する予定はありますか?

Graf氏:
最終的にはカジュアルなゲーマーとハードコアなゲーマー、どちらも楽しめるアップデートをしていきたいと考えています。まずはキャラクターや衣装の追加ですね。

その後は、パーティーゲームとして楽しくするための特殊なブロックやルール、「ミューテーター」を増やしていきたいです。eSportsの激しさに疲れた時、あるいは家族でクレイジーなパーティーゲームを楽しみたい時……そんな時に「味変」として入れる要素です。

例えばプレイの邪魔になる天候や、ブロックの種類をゲームに追加できます。天候の場合は風でブロックが押し流されたり、雷でコンボが中断される。追加ブロックは特殊効果付きのもので、トゲブロック、氷ブロック、爆発ブロック、粘着ブロックなどがあります。厄介なものが多いですが、上手く利用すれば逆に特殊効果を活用できるところが面白いんです。

現在早期アクセスでリリースしているので、おかげでコミュニティにさまざまなことが聞けます。今は「もっとパーティーを!」と言われてますから、言われたとおりパーティーを開きつつ、うまくバランスを取っているところです(笑)。

──ありがとうございました。

『TopplePOP』はPC(Steam)向けに早期アクセス版が配信中だ。

AUTOMATON JP
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