基本プレイ無料ヴァンパイアRPG『シルバー・アンド・ブラッド』は、「見たことある」を本作ならではアレンジでいっぱい盛りの手ほどき系優等生。ソシャゲやる系筆者感想

MoontonはAndroid端末向けの新作RPG『シルバー・アンド・ブラッド』を2025年内にリリース予定。本稿では本作の先行プレイ感想をお届けする。

Moontonは3月28日から4月14日の期間限定で、Android端末向けの新作RPG『シルバー・アンド・ブラッド』(以下、シルブラ)の限定課金クローズドテスト<満月テスト>を行った。正式な配信日は2025年内の予定だ。本作はゴシック風ダークファンタジーRPGと銘打っており、吸血鬼と教会の対立構造、蔓延する謎の疫病と、その病が広げる動く死者と獣たちといった、重厚なストーリーが豪華演出で展開される力作だ。今回は、そんな『シルブラ』を正式リリースに先立ってプレイした体験記をお送りする。

2012年の『パズル・アンド・ドラゴンズ』登場以降、「札束で殴り合う」と称されたゲームは鳴りを潜め、いわゆるガチャを課金アイテムの中心に据えたタイトルが次々と生まれてきた。どう見てもパズドラのクローンでしかないものが雨後の筍のごとく登場しては消えていった中で、『モンスターストライク』や『グランブルーファンタジー』など、後に長期間サービスを続けることになるゲームも登場することになる。ほかにも多くのゲームが作られ、一時はソシャゲバブルと呼ばれるほど、業界は活気に満ちていた。

ところが、である。多くのゲームに触れたプレイヤーの目が日々肥えていくのは自然の成り行きだった。要求されるクオリティは上がっていく一方。結果、新規のソシャゲを作る予算は増大し、今や新しいソシャゲを作るのは10億円単位を賭けた博打のようになっている。ソシャゲというシステムそのものへの飽きもあるのかもしれない。もはや低予算でガチャというシステムの旨味を吸える余地はどこにもなく、本気で作ったゲームによる伸るか反るかの大勝負しかない。『シルブラ』はそんな中で殴り込みをかける新規タイトルだ。今の時代で本気で作られるタイトルがいかなるものか、この目で確かめる機会をいただけて嬉しく思っている。

さて、プレイ体験記を綴るにあたり、筆者のこれまでのソシャゲ歴を一部明かしておこう。少し長くなってしまったので、次の見出しまで読み飛ばしていただいても構わない。初めて触れたのは『パズル・アンド・ドラゴンズ』。サービス開始から数日経過していたタイミングだったと思う。カコカコという軽快なサウンドのパズルを揃えていたものである。『ロード・トゥ・ドラゴン』。キャラクターの背景設定が充実しており、全力の演出でもって幕引きをした名作だった。『グランブルーファンタジー』。バトル進行に合わせて変化していく音楽が好きで、オーケストラを聴きに行ったりもした。『メギド72』。これまでのすべてを遊べるオフライン版という形で思い出を残してくれた、最後までプレイヤーに寄り添ったタイトルだった。

……この調子で全部書いていたらキリがない。ほかにプレイしたのは『デレステ』『ミリシタ』『チェンクロ』『マギレコ』『艦これ』『アズールレーン』『刀剣乱舞』『ブルアカ』『ウマ娘』などなど。もちろんこれで全部ではない。知る人の少なそうなところだと、詰将棋とソシャゲを融合させた『つめつめロード』なども遊んだことがある。つまるところ根っからのソシャゲどっぷり人間というわけである。ようやく本題、そんな筆者によるプレイ体験記の始まりだ。

主人公、死す

ゲームをスタートすると、いきなりストーリーが始まる。物語の主人公は、「黒血病」なる不治の病に冒された青年ノア。通常、黒血病になった人間は正気を失ってしまい、命を落としてからも死体のまま動き続けるのだが、ノアはかなり黒血病が進行しているにも関わらず正気を保っている異例の存在である。教会の幹部の男はノアを異端者として捕らえようとし、教会の護送馬車を襲撃してノア救出を図った吸血鬼の少女エンプーサは、ノアが吸血鬼にとって重要な存在「月の子」なのだという。さながらノア争奪戦の様相を呈した末に、ノアは教会に捕まり、火刑に処されてしまう。

かなりざっくりとした紹介だが、こうしたストーリーが展開される間、3Dモデルのキャラクターたちによる会話スキット、2Dアニメーションムービー、戦闘中のスキットなど、チュートリアルも交えつつ滑らかにゲームが進行していく。昨今はストーリーを好きなタイミングで読めるようにする配慮のためか、ゲームとしてのクエスト進行とストーリー閲覧を分離したタイトルも多く存在しているが、『シルブラ』はストーリーや世界観を重視しているのだろう、チュートリアル要素をストーリー展開に混ぜ込んで、ストーリーを楽しんでいるうちにシステムを覚えるといった塩梅になっている。

その後、ノアは吸血鬼として復活を遂げる。人間が吸血鬼と呼ぶ存在「血族」は、血の中に眠る記憶から肉体を再構成し、自らの眷属とできるのだ。ノアが教会に捕縛される寸前、エンプーサはノアの血をわずかながら回収していたために、ノアはエンプーサの眷属として復活を遂げたというわけである。しかし回収した血の量が少なかったためか復活が完全ではなかったようで、他者の記憶が混ざってしまったという。実は目覚めのときにプレイヤー名を尋ねられるのだが、その混ざってしまった記憶がプレイヤーということになっているようだ。主人公の名前がノアだったので、ノアの方舟をモチーフとした過去の名作ゲームの主人公から拝借してプレイヤー名は「ケン」としておいた。

ノア自身も吸血鬼となったことで、血から眷属を呼び出すことが可能となっている。これがいわゆるガチャなのだが、暗くあやしい炎が揺らめく儀式の部屋で、血の海から引き上げられる棺から眷属が出てくる演出は実にダークで素晴らしい。

ダークファンタジーアーカイブ

さて、問題のゲームプレイ、とりわけバトルに関してだが、私がこれまでにプレイしてきた中でもっとも近いと感じたのは『ブルーアーカイブ』だった。基本的にオート進行のバトルであり、敵味方ともにもっとも近い敵を狙って通常攻撃を続ける。全キャラクター共通のリソースが時間経過で回復していき、それを消費してスキルを発動可能。スキルは画面右下の3つのスロットに表示されており、最初の3つは戦闘メンバーの中からランダムで選ばれる。ここらへんは『ブルアカ』に似ている。。

もっとも違うのは、戦闘開始前に陣形を編集可能であることだ。好きなバトルメンバーを任意のマス目に配置することができ、敵のターゲットが味方の誰に向かうのかは赤いラインで表示される。後衛キャラが変に前に出すぎて狙われてしまうようなことはなく、しっかりと適材適所で運用できるためバトルは極めて快適である。主人公のノアは吸血鬼らしくHP吸収が可能な前衛アタッカーといった性能で、アタッカーでありながらしぶとく立ち回ってくれる。もちろん、ふざけて後衛キャラを最前線に立たせるなんてこともできてしまうし、陣形に不備があると突進攻撃で後ろを取られるなんてこともある。

また、マップの構造はステージによって異なっている。基本的には敵と正面から向かい合うステージが多いが、横に広く敵が分散していて前衛一人では攻撃を受けきれないステージや、挟撃されるステージ、守るべきゲストキャラを護衛するステージなど、さまざまなパターンが存在する。ステージによっては、スキルで攻撃すると破壊できるオブジェクトなどのギミックも存在する。圧倒的な力を奮うボスに対して、ステージに存在する巨大な構造物を崩落させて攻撃する、なんてことも可能だ。もちろん、そのためには遠距離攻撃できるスキルの使い手を編成しておかねばならない。ステージ構造や敵戦力の変化と、それに対応した人選と陣形設定。ステージごとに味わいが変わる、飽きさせない作りだ。

ほかにも、キャラクターごとに異なる月齢のマーク「月相」が付いている。画面左下には「月相」が3つあり、これに対応したキャラクターのスキルを使用するとマークが点灯。3つとも点灯させると特別な効果が発動する。現時点で筆者が確認したのは10秒間の強力なバフ+全員のスキル使用コストを1回1削減という効果のものだけだが、単純にスキルの効果だけでなく「月相」も考慮したほうが良い状況も多々あり、戦術の幅が広がるというわけだ。

筆者としては陣形の要素が特にお気に入りである。やわらかいキャラクターがなぜか必要もないのに遮蔽物を使おうとして勝手に前に出て、狙われ、勝手にやられるなんてことは発生しない。高レアリティキャラのスキルもアニメーションでかっこよく、それでいて短くスッキリとしたカットイン演出となっている。しかもデフォルトで1日1回再生の設定だ。う〜ん、快適。

あっ、これ○○で見たことある!

そのほか、育成システムや各種クエスト、課金要素などは、さまざまなソシャゲから良いとこ取りした欲張りセットといった趣だ。およそソシャゲのシステムとして思いつくようなものはだいたい存在し、どれも『シルブラ』風の味付けになっている。馴染みがあるシステムなのに世界観に溶け込んでいるため、「あっ、○○で見たあのシステムか」となる場面が何回もあった。

序盤に開放される育成要素としては、キャラクターレベル、スキルレベル、装備、絆レベルなどがある。キャラクターのレアリティはSSR/SR/Rの3種が確認できた。ガチャでダブったキャラクターはレベル上限突破の素材に変換されるが、SSRは3段階、SRは2段階の上限突破が可能。デフォルトのレベル上限は80だが、1段階突破するたびに上限が40上がるため、上限突破は強さに大きく影響する可能性がある。理想を追い求めるならレベル200のSSRを揃えることになるが、現実的には上限突破できたSRを中心に運用することになりそうだ。もう一つ育成要素はあるようだが、解禁はかなり進めた後となるため未確認である。完全な推測だが、専用装備か、自由に付け替え可能なパッシブスキルあたりだろうか。

ちなみにキャラクターのレベル上限とは別のレベルキャップも存在しているようだ。レベル40のキャラクターを5人育成しなければ、それ以上レベルは上げられないのだ。最低限のバトルメンバーを揃えてもらうための配慮なのだろう。とりあえずガチャで出たSSR2人に全部の育成リソースを突っ込もうとしていた筆者は、少ししぶしぶではあるが、メインストーリーの主要なキャラクター3名も育成することにした。そのおかげもあってか多少陣形が大雑把になっても、誰も倒れることなくゲームを進行できている。

クエストはストーリーの本筋となるメインクエストのほかに、期間限定のイベントクエストや育成素材を獲得できるクエストなどが存在している。複数提示されるバフを選択しながら連続したステージを攻略していくローグライト的なクエストや、3回の挑戦までに倒しきれば成功のボスチャレンジのようなものもある。キャラクターを派遣する遠征にあたるもの、時間経過でリソースが溜まっていき定期的に回収するものなどもある。とはいえ、戦闘結果を一瞬で確認できる「クイック戦闘」のような時間短縮要素もあるため、慣れてしまえば日課としてはそれほど重くはならないだろう。

課金要素にはいわゆるガチャ石にあたるアイテムが値段別に購入できるほか、初回限定のお得なレートで購入できるもの、継続的に効果を発揮する月額パスにあたるもの、特定のクエストクリアなどの条件を達成した後に期間限定で購入できるものなどが確認できた。ショップ画面には定期的に補充される無料アイテムも並んでおり、課金アイテムを購入するつもりがなくても足を運ぶほうが得するようになっている。

チュートリアル丁寧すぎない?

ソシャゲとしてのシステムは充実しており、世界観もストーリーも魅力的という印象だが、一つだけ気になる点があった。チュートリアルがとにかく長いのだ。スクリーンショットを撮りながらストーリーもしっかり読んだためというのもあるだろうが、自由にメニューに触れられるまでにざっと1〜2時間はかかる印象だ。筆者はチュートリアルはいっさいなくても構わない、わからないものはわからないなりに実際に触れて理解したいタイプのゲーマーなので、序盤の進行はかなり不自由に感じられた。現状の『シルブラ』はまだテスト段階であるため、メニューの解放タイミングなどの改善はされるかもしれない。

とはいえ、チュートリアルの充実は悪いことばかりでもない。ゴシックなダークファンタジーと聞いて、これまでソシャゲなるものに手を出してこなかったプレイヤーでも迷わない作りなのは確かだ。いかんせん親切すぎて冗長なのでは?と思わなくもないが、メニュー画面でしばらく操作をせずに待っていると、次にタッチすべき場所を教えてくれる仕組みまで搭載されている。

アートもキャラクターも魅力的

ちなみにメニュー画面でしばらく操作せずにいた理由は、その美しさを堪能していたからである。デフォルトの設定では、城の一室と思しき絢爛な空間で、ノアをはじめとしたメインストーリーのキャラクターたちがくつろいでいる風景になっている。この部屋にいる人物はストーリー進行によって変化するようになっている芸の細かさだ。もちろん設定変更で好きなキャラクターを表示することもできるし、テスト版でも開催されている期間限定イベントではイベント報酬としてメニュー画面背景を獲得可能だ。こうした背景イラストをコレクションするのも楽しみの一つとなりそうだ。

メインストーリーの充実は言わずもがな、イベントストーリーでも演出は華やかで、力が入っている。キャラクターたちには皆それぞれにバックストーリーが設定されていて、ノアの眷属となる前の半生については絆レベルを上げることで少しずつ読むことが可能となっていた。絆レベルを上げる方法は複数あるようだが、中でも印象的だったのは1日1回開催できる「会議」である。任意のキャラクター5人を集めて、特定の議題について話し合い、ノアが最終的な決定を下す。その内容次第でキャラクターたちの絆が上がるというものだ。

試しに開催した会議の議題は「図書館の蔵書について」。5人のうち3人は蔵書を増やして欲しいとはっきりと意見を述べてくれたが、1人は肘をついて意味深にニヤニヤと笑みを浮かべているだけだし、1人は考えをまとめて口にするのが苦手な様子。ともあれ、3人が増やして欲しいということなので、蔵書を増やす方針に決定した。幸いにも、ニヤニヤしていた男も蔵書追加には賛成で、意見を口にできなかった女の子も「自分の本当の気持ちに気づけた」と嬉しそうな素振り。大成功である。とはいえ、日々話し合いを重ねるうちに、意見が割れることもあるだろう。意に沿わぬ決定を下したときのリアクションもあると思うと、毎日の開催が楽しみになる要素だ。

これが今の時代のソーシャルゲーム

『シルブラ』はまだクローズドテストの段階ながら、過去作を参考にしつつ丁寧に改善を重ね、全力の演出で重厚な世界観にプレイヤーを惹き込む、魅力ある作品だった。ボイスのついていない部分のローカライズや、チュートリアルのテンポなど、現時点では荒削りな部分も見られたが、完成を楽しみに待ちたいゲームだ。声優陣も豪華で、PVからはシリアスな演技の子安武人さんの声が聞こえるし、先のくだりのニヤニヤしていた男は自信過剰な方向性の鳥海浩輔さんだ。なんとも味わい深い。

『シルバー・アンド・ブラッド』の配信予定日は2025年内とのこと。本稿を読んで興味を持たれた方は、続報を楽しみにお待ちいただきたい。クローズドテストのセーブデータは引き継がれないため、筆者が今回出会った眷属たちとはいったんお別れである。とはいえ、今回プレイして触れた世界観やキャラクターたちは、「私」の中の記憶として刻まれている。いつか来る再会の時には、今回の思い出も蘇ることだろう。

タイトル:シルバー・アンド・ブラッド
ジャンル:本格ゴシック・ヴァンパイアRPG
価格:基本プレイ無料(ゲーム内課金あり)
配信プラットフォーム:Android/iOS
公式X:https://x.com/SiruburaJP
公式サイト:https://silverandblood.moonton.com/
事前登録はこちら:https://silverandblood.moonton.com/pre/
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Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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