『モンスターハンターワイルズ』は“リアル路線”を追求する、『ワールド』の正統進化系だった。さらに快適化した狩猟を体験した先行プレイ感想


発売を来年に控えた『モンスターハンター』シリーズ最新作『モンスターハンターワイルズ』。旧作の売れ行きが上がるなど、期待が高まり続けている本作ではあるが、このたびデモ版を先行してプレイする機会に恵まれたため、現時点で判明している作品の内容を紹介していきたいと思う。

『モンスターハンターワイルズ』は『モンスターハンター』シリーズ最新作。発売日は2025年を予定している。価格は未定。対応プラットフォームはPC(Steam)/PlayStation5/Xbox Series X|S、となっている。プレイヤーは、強大なモンスターの狩猟を生業とするハンターとして禁足地の調査に向かい、その世界と人々との関わりを解き明かしていく。

進化したビジュアルと、世界の実在感に驚く


体験会が始まって視界にまず飛び込んできたのは、今回のデモ版にて使用するキャラクターおよびオトモアイルーのクリエイト画面だ。さすがに体験会においては用意されているプリセットを組み合わせるだけであったが、旧作から更にリアルになったキャラクターのビジュアルには驚かされる。肌の質感や、衣類越しに伝わる筋肉の造形美。オトモアイルーのフサっとした毛並みや瞳のきらめき。カプコンが誇る「RE ENGINE」の力が遺憾なく発揮されていると言えよう。

外見を選んだら、ゲームは既に公開されている映像シーンへと移行する。主人公が上司に当たる人物から任務を拝命する場面。主人公が肉声でもって自然に受け答えをしている。筆者としてはココにも驚かされた。これまでのシリーズにおいて、主人公には自我がない……とまでは言わないが、黙々とクエストをこなし続けるヤバいヤツという位置づけが筆者の中にあったからだ。今作ではちゃんと一人の人間になれるだろう。毎度説明を受けるだけだった重要なモンスターを討伐するための会議にも、自分の意見を持って参加できるはずだ。ちなみに、口数はそこまで多くない。「主人公というキャラクター」が確立されるほどのセリフ量はなく、自分を投影しやすい程度に収まっており、「リアルな世界」としての不自然さをなくすための工夫の1つという印象である。オトモアイルーも喋るが、こちらはネコ語に変更可能だ。

映像中に登場するさまざまなNPCたちもまた、揃いも揃ってリアルな造形である。髪の一本一本や、スキンケアが厳しいであろう肌の質感など、実在性が増している。材質による違いを細かく表現する装備品たちの美しさは言わずもがな。本シリーズはモンスターの描写にとどまらない「リアルな世界」を描くことに力を注いでいるのだと、改めて思い知らされる。


ゲームは映像シーンからシームレスにアクションへと移り変わる。フックスリンガーのチュートリアルも兼ねた追走劇だ。プレイヤーは本作の乗用動物「セクレト」に跨り、沙海竜「バーラハーラ」の群れを退けながら対象を追いかける。バーラハーラたちは砂の海に現れた津波のようにプレイヤーへ迫りくるが、ここで役に立つのがフックスリンガーである。近くを飛び回るノイオスに似た翼竜へ照準を合わせ、スリンガーを当てれば「スリンガー音爆弾」を入手することができる。本作におけるスリンガーの弾は調合を必要とせず、その場で入手可能なものがあるようだ。音爆弾を適宜当てながら、対象を追いかけるプレイヤー。この他にもフィールドギミックの起動や、楔虫での移動など、スリンガーの操作感や機能は『モンスターハンターワールド:アイスボーン』時代から直感的になっているものの、大きく変わっていないようである。「セクレト」による移動は自動で目的地に連れて行ってくれる親切仕様。騎乗中にスリンガーや一部アイテムを使うことになっても、手元がもたつくということはなく、複雑な地形もへっちゃらである。

バーラハーラの群れの先には、待ちに待った狩猟の時間。纏蛙「チャタカブラ」を狩ることになった。その前にベースキャンプで武器を選ぶのだが、何を持ち出すか非常に悩ましい。全部使ってみたい。しかし時間が無い。筆者はとりあえず手に馴染んでいる「スラッシュアックス」を担いで現場に急行した。操作感自体は『モンスターハンターライズ』シリーズに近いが、ずしりと感じる重さや質感は、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』時代のそれを引き継いでいる。


今作におけるスラッシュアックスの大きな特徴として、斧モードと剣モードにそれぞれ、俗に言うカウンター技である「相殺」アクションが用意されている。モンスターの攻撃に合わせてカウンター技をぶつけることにより、攻撃を防ぐだけでなく、さらなる技に派生する。コマンド入力に下準備が必要だった「属性充填カウンター」を使いやすくした形であり、防御手段に乏しかったスラッシュアックスとしては、立ち回りの柔軟性がさらに増して非常にありがたい。

ここに本作の要素である「傷口」の仕様が合わさることで、従来の持ち味である、変形機構を活かした攻撃の引き出しの多さがより際立っている。本作ではモンスターにもともと備わっている弱点部位以外にも、同じ部位を攻撃することで「傷口」という弱点を作ることができる。さらに継続して攻撃すると「傷口破壊」を起こし、大ダメージを与えひるませる。スラッシュアックスは斧のリーチでさまざまな場所に傷口をつくり、剣のラッシュで「傷口」を破壊しやすい。持ち前のステップとカウンター技によって張り付きがしやすくなってもいる。

一方で、また異なる新要素「集中モード」と「集中弱点攻撃」に関しては上手く使うことができなかった。「集中モード」は弱点や傷口をハイライトし、狙いやすくする状態であり、「集中弱点攻撃」は定点攻撃を行う新技である。上手く当てれば傷口を一度で破壊可能だ。「集中モード」時はカメラが半ロックオンとも呼べる固定状態になるため、特殊なカメラの操作感に慣れる必要があり、筆者はこれまでのシリーズでロックオン機能を使ってこなかったことも合わせて、限られた試遊時間のなかでは活用することが難しかった。

「チャタカブラ」自体は、とにかく舌を使ったリーチのある攻撃が特徴である。そしてベロンっとするたびに画面に向かって飛ぶヨダレがすごい。「RE ENGINE」の力に少しビビる。基本的にモーションは素直であり、途中で腕を強化して振りかぶってくるが、新要素である「相殺」アクションのおやつである。特に苦戦することもなく、新しい大技を試し打ちしながらフィニッシュ。単発でも使えるし、属性解放突きから派生することもできる。零距離解放突きと上手く使い分けていきたいところだ。ちなみに、通信プレイを行っていないときに救難信号を打つと、作中に登場するNPCが駆けつけてくれる。『モンスターハンターライズ』シリーズにおける盟勇システムに近い仕様となっているようだ。

「ドシャグマ」狩りに悪戦苦闘


次に筆者が取り組んだのは、闢獣「ドシャグマ」の狩猟である。デモ版では対象のモンスターに攻撃を何度か当てた時点からクエストがスタートする仕組みになっており、「セクレト」の存在と合わせて、狩猟対象が見つからずに時間をロスするといった従来シリーズの問題が解決されているように思えた(製品版でもこの仕様が採用されるかは不明)。そのため、筆者も余裕を持って準備を行うことができた。

まず決めるのは持ち込む武器だ。本作では2本の武器をクエストに持ち込むことができ、「セクレト」騎乗時に持ち替えることが可能。シンプルに別種の武器を持ち込むのも良いし、弱点属性と状態異常を意識した武器2本にするのも良いだろう。筆者はさきほど使用したスラッシュアックスと、お気に入りの武器種であるガンランスを持ち込むことに決めた。本作のガンランスは従来からある「砲撃タイプ」のほかに、「砲撃力」という項目が設定されており、今回使用したガンランスは、通常タイプの「砲撃力:ふつう」である。

武器を決めたら防具も決めよう。デモ版ではいくつか防具のシリーズが用意されており、おそらく「ドシャグマ」由来の防具もあったが、筆者はバーラハーラ由来であろう防具を装備した。鱗由来の光沢が美しく、発動しているボマーと砥石使用高速化のスキルがありがたい。最後は食事である。本作は使った食材がそのまま食事シーンに反映されるようで、肉とキノコを放りこんだら、ハンターが美味そうに脂が滴る肉とキノコをもしゃもしゃ食べている。仕事中なのに腹が減る……こちらは水を1口でがまんしつつ、準備万端。「セクレト」に跨り、「隔ての砂原」を駆けていく。道中では『モンスターハンター:ワールド』と同様に、導蟲が採集ポイントをハイライトしてくれるが、生物の痕跡を集める必要は無い。

狩猟対象である「ドシャグマ」を発見し接近する筆者。ブルドックに熊やライオンをかけ合わせたような巨大な体躯を誇るモンスターだ。そして「ドシャグマ」は群れで生活する生物であり、狩猟対象の個体を群れから引き剥がす必要がある。シリーズおなじみ「こやし玉」の出番である。デモ版では「スリンガー大こやし玉」という、従来のそれより巨大な煙を撒き散らすアイテムが用意されていた。美麗になったビジュアルのお陰で、臭い煙のエフェクトもパワーアップ。画面を越えてこちらまで臭いが伝わってくるかのような勢いがある。


逃げる「ドシャグマ」を追いかけ、狩猟を開始する筆者。フルバーストのループコンボってどうやるんだっけ……竜杭砲につながる派生コマンドを忘れた……など記憶の引き出しをひたすらに開け閉めしながら戦っていく。本作のガンランスに関する新要素としては、まず小回りの強化が挙げられる。ステップしながら薙ぎ払い→竜杭砲への派生など、モンスターに張り付く立ち回りがさらにしやすくなっている。特定の攻撃に合わせて盾を構えれば、PVで見られた「鍔迫り合い」が発生。ガンランスの場合は、牙を剥くドシャグマの顔面にフルバーストを叩き込むという内容である。ガンランスの象徴たる砲撃周りに関しては、まず竜撃砲の使用回数が視覚化されている。従来であれば、「いま竜撃砲が使えるのか」に関して、武器のモデルを見て判断するしかなかった。しかし本作では、竜撃砲の使用回数が弾薬型のアイコンによって可視化され、わかりやすくなっている。竜撃砲の弾薬は使用後に時間経過で復活し、2回分のストックが可能だ。そして溜め砲撃に関しては、通常型のガンランスでも段階的な溜めができるようになっている。総じて順当な強化がなされている印象だ。

「乗り攻撃」を行ったり、フィールドギミックを活用したり、適宜「スラッシュアックス」に武器を入れ替えながら「ドシャグマ」と対峙する筆者。その間にも目まぐるしく世界の天候が変わっていく。本作では時間経過によって、「荒廃期」→「異常気象」→「豊穣期」という形でフィールドに変化が訪れる。地形自体が変わるわけではないが、生物に関しては影響があるという。なかでも異常気象の内容は対象のフィールドによって異なる。デモ版で訪れた「隔ての砂原」では、正体不明の生物の出現と共に、砂と雷が空に舞う嵐が発生していた(おそらく「煌雷竜レ・ダウ」によるものではないだろうか)。天から落ちる雷は敵味方問わずダメージを与えるため、狩猟に役立つことだろう。

そして相変わらず「集中モード」を使いこなせず、竜杭砲で突撃するカッコいい「集中弱点攻撃」もぜんぜん上手く当てられない筆者。それでも「ドシャグマ」を追い詰めることに成功し、睡眠中に大型タル爆弾を当てる頃には、荒野に「豊穣期」が訪れていた。晴れやかな天気を背景に、狩猟達成である。


現時点における筆者の『モンスターハンターワイルズ』の総合インプレッションとしては、『モンスターハンター:ワールド』をよりリッチに、便利にする形で、「リアル路線」を極めて行く作品という印象である。それは「RE ENGINE」によるビジュアルの強化だったり、可能な限りシームレスにゲームを展開することを通じた、世界の実在感と周回の高速化の両立だったり。『モンスターハンターワイルズ』は武器のコマンド入力に関して抜本的な変化はないものの、理念の追求という観点から完成度を着実に高めていったゲームなのだと感じられた。これは言い換えると、『モンスターハンターライズ』とはまったく方向性が異なる作品であるということだ(「セクレト」の存在など、一部シリーズの要素が形を変えて継承されてはいる)。該当シリーズから本作をプレイ予定のユーザーは注意してほしい。

『モンスターハンターワイルズ』はPC(Steam)/PlayStation5/Xbox Series X|S 向けに2025年発売予定だ。