スクエニSRPG『トライアングルストラテジー』VR版は「動いて遊ぶ」楽しさが上乗せ。“おもちゃ感覚”で動かす遊びと、未来感ある便利さと

スクウェア・エニックスは11月1日、『トライアングルストラテジー』Meta Quest版を発売予定。本稿では先行プレイの内容に基づき、本作Quest版について紹介していく。

スクウェア・エニックスは11月1日、『トライアングルストラテジー』Meta Quest(以下、Quest)版を発売予定。対応デバイスはQuest Pro/Quest 2/Quest 3/Quest 3S。今回弊誌は、スクウェア・エニックスより同作の先行プレイの機会をいただいた。本稿では先行プレイの内容に基づき、本作Quest版について紹介していく。なおプレイにあたってはQuest 3を使用している。

Quest版の特徴について説明する前に、まずは『トライアングルストラテジー』について紹介しておこう。本作オリジナル版は2022年3月にNintendo Switch向けに発売されたタクティクスRPGだ。のちにPC(Steam)でも発売。三国による戦乱の広がる大陸「ノゼリア」を舞台に、さまざまな人物の視点から群像劇として物語が描かれていく。

Nintendo Switch版


戦略ゲームをVRで遊ぶ意味

本作の戦闘はグリッド制のフィールドにてユニット同士が戦うターン制バトルとして展開。ユニットごとの行動順で敵味方のターンが入り乱れるほか、高低差やユニットの向きなどが戦略に関わるシステムを採用されている。戦闘パートのほかにも豊富なイベントパートがボイス付きで用意されているほか、マップ上を探索したり人々の話を聞いて回ったりできるRPGパートが存在する点も特徴となっている。


Quest版ではそんな『トライアングルストラテジー』がVRゲーム化。VR(MR)ヘッドセットMeta Questにて、プレイヤー自身の頭を動かして見まわす視点で本作をプレイできる。ただ、VRゲーム化したとはいえ、元はタクティクスRPG。プレイする前の筆者は、躍動的な操作感も売りのVRデバイスであえて戦略シミュレーション系のゲームをプレイする意味があるのかどうかに疑いも抱いていた。「ボードゲーム風の楽しみはありそう」といった漠然とした予想はあったものの、Questでわざわざ遊ぶほどの持ち味になっているかどうかは半信半疑であった。

しかしプレイを通して、そうした筆者の予想は見事に外れていたと気付かされた。本作Quest版ではボードゲームともひと味違う“動いて遊ぶ”楽しみが加わっているのだ。しかも動いて遊べることは、VRデバイスであえてプレイしたくなる持ち味になっていると感じた。


遊びに「動き」が加わる

どのようなところに動いて遊ぶ楽しみがあるのかを示す前に、まずは本作Quest版の仕様を紹介していこう。特徴的な点として、本作Quest版では戦闘パートやRPGパートのフィールドがボードゲームのような“盤面”として表現される。プレイヤーは盤面を掴むようにして、回転させたり目の前に引き寄せて拡大したりしながら操作が可能だ。HD-2Dとしてジオラマ風の3Dグラフィックで表現されたフィールドに近づいてまじまじと眺められるのもQuest版の持ち味だ。

*Quest版ではオリジナル版の被写界深度エフェクトがなくなり、クリアなグラフィック表現となっている

また戦闘パートでの操作方法もQuest用コントローラー向けに最適化。なかでもユニットの移動時などにグリッドを選択する際には、モーションコントロールにて直感的に指定が可能となっている(ボタン操作にも切り替え可能)。このほか左手を“捻る”ことで、敵味方ユニットの行動順などを確認できる仕組みも用意されている。

そのため本作Quest版では都度盤面を手を使って動かしたり、モーションコントローラーでユニットを動かしたりと、思いのほか手首あるいは腕を動かして遊ぶことになる。ここが、タクティクスRPGの短所ともいえる「操作自体はちまちまとしたカーソル移動」といった点を補っていると感じた。玩具を手に取って遊ぶようにくるくると盤面を動かすワクワク感や、慣れれば手首のスナップでさっとグリッドを指定できるユニット移動など、操作の楽しみや快適さがプラスされている。さながらSF作品のワンシーンのように采配を振るう楽しみも感じられた。

このほか先述のとおり、Quest版の本作では盤面を引き寄せることができる。オリジナル版では高めの視点で広く見渡していたところを、低い視点で間近に眺めながらプレイすることも可能。低い視点ではすべてのユニットを視界に収められなくなりうるが、筆者としてはあえてこの低い視点でプレイするのが好みであった。


というのも、敵味方が入り乱れて行動順が巡ってくる本作では、フィールドのあちこちでユニットが代わる代わる“出番”を迎えることになる。そのため低い視点では「出番のユニットの方を振り向いて見る」という、オリジナル版では必要なかった操作が体の動きとして時おり加わるわけだ。VRゲームの主流といえる「プレイヤーキャラの視点」ではない俯瞰視点の本作でも、意外な没入感を感じられるところだった。一方で盤面を遠ざければ、オリジナル版に近い高めの視点で、首をきょろきょろせずにプレイすることも可能となっている。

ちなみに本作では「プレイヤーキャラの視点」ではないゆえに、“視点がゲーム内で動く”こともない。3D酔いがかなり起こりにくい視点スタイルといえるだろう。現に筆者はプレイヤーキャラが視点ごと動くタイプのゲームでは、たとえ角度スナップで視点を回転させる仕組みが用意されていても、もれなく数分遊ぶだけで3D酔いが始まるような人間だ。そんな筆者でも、本作のプレイを通してまったく3D酔いすることはなかった。そのため本作はVRが苦手な人や敬遠している人にこそおすすめしたい1作でもある。


『トライアングルストラテジー』も含め、タクティクスRPGや戦略シミュレーションといったジャンルは、没入感を売りにするVRゲームとは縁遠く思えるかもしれない。筆者も当初は本作Quest版についてVRゲーム化の恩恵がちゃんとあるのかどうかには半信半疑であった。一方でプレイを通して、VRと戦略シミュレーション系ゲームには予想外に親和性があることを実感している。『トライアングルストラテジー』Quest版は傑作のVR移植という以上に、戦略シミュレーション系ゲームでも「体を動かす楽しみと没入感」というVRゲームの持ち味を味わえることを示す代表例となるだろう。

『トライアングルストラテジー』Meta Quest版は、Quest Pro/Quest 2/Quest 3/Quest 3S向けに日本時間11月1日午前2時に発売予定だ。Nintendo Switch版は発売中。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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