『鳴潮』と京阪電車コラボが“ゲームと現実をつなぐ”イベントだった。Ver2.8のストーリーをベースにした演出の数々と、千咲の過去の無念を晴らし未来へ送り出す京都セレモニー

KURO GAMESの手がける『鳴潮』と京阪電車によるコラボとして、「~京の紅に、鳴り響く潮~『鳴潮』×京阪」と題したキャンペーンが開催中だ。今回は現実の京都を舞台にしたキャンペーンとなっており、『鳴潮』のVer2.8で実装された千咲(ちさ)を大々的にフィーチャーしたラッピング電車の運行対象の路線を回ることで景品がもらえるスタンプラリーなどが行われている。

弊誌は、『鳴潮』と京阪電車によるコラボを記念したセレモニーに参加した。セレモニーでは公式コスプレイヤーが登場しコラボ記念のテープカットが行われたほか、着ぐるみの千咲が特別車掌に就任することも発表。本稿では、当日に撮影した写真を交えながらセレモニーの模様をお伝えしたい。

千咲を乗せたコラボ列車が到着

今回のコラボでは、千咲がフィーチャーされている。彼女ほど秋の京都に似合うキャラクターもそうはいないだろう。千咲の衣装は日本の伝統的な学生服を彷彿とさせるほか、赤い瞳は深まる秋で紅葉する京都と不思議なほど調和している。実際に坂本比叡山口駅を訪れると木々はすっかり紅葉しており、『鳴潮』のVer2.8で新たな仲間となった千咲を祝福する舞台として、秋の京都は本当にふさわしい場所だと感じられた。駅のホームも千咲を迎える準備が整い、コラボ列車の到着を待つ。

そうこうするうちに、コラボ列車がやってきた。赤い色合いはほかの列車と一線を画す印象を与えながらも、上品で知的な千咲の人となりに符合する落ち着いたものとなっている。到着した列車から千咲が降りてきて、駅全体から祝福を受ける。ゲームでの礼儀正しい千咲の振る舞いを振り返りつつ、こういう場では緊張してしまうような真面目な人物であったことも思い出す。

千咲を京都に招待することは喜ばしいことだが、緊張させてしまうのも忍びない。そう懸念していたが、「漂泊者」こと主人公も千咲と一緒に列車に乗っていたことに安心した。千咲はひとりでも能力を発揮し、胸に秘めた決意をもとに高みを目指せる存在だ。しかし、その気高さと引き換えに孤独にさせていい存在でもない。千咲の仲間であり、理解者でもある漂泊者と一緒に京都に来ることに意味がある。今回のイベントの粋な演出には最大限の称賛を送りたい。

なぜかふくれっ面の着ぐるみ千咲が活躍のセレモニー

着ぐるみの千咲も駅にやってきた。千咲が2人いることになってしまうが、『鳴潮』のオフラインイベントといえば着ぐるみなので細かいことはいいだろう。そういえば『鳴潮』の作中では、千咲を模した巨大なパネルが登場した。そのときは驚いて困惑していた千咲だったが、それを飾り付けとして受け入れるという度量の広さも見せていたことを思い出す。

千咲がゲームで見せるクールな表情とは裏腹に、着ぐるみはなぜかふくれっ面だったのもおもしろい。そんな彼女をなだめるかのように、着ぐるみの千咲が特別車掌に就任することがまず発表された。生身の千咲よりも先に祝福されることになったので、着ぐるみの千咲もご満悦だったようだ。

3人がそろったことで、イベントはコラボを記念したテープカットへと進行していく。ここでも千咲は、自身がこのイベントにふさわしいところを証明してみせた。千咲のモチーフ武器である「曇斬」は状況に応じて変形するが、はさみを連想させる形状が通常時の大きな特徴となっている。着ぐるみの千咲は自身のモチーフ武器を掲げることで、セレモニーを彩ったのだ。

列車の先頭に取り付けられるヘッドマークもお披露目。車掌として意気揚々の千咲が印象的なヘッドマークとなっている。普段は冷静な印象の強い千咲だが、車掌を任せられた際には積極的に仕事をしてくれそうな実直さも備えている。可能性にあふれる千咲がたどり着くかもしれない未来の1つとして、車掌になる彼女の姿を見られるのは光栄なことだった。

外装、内装、そして心意気までもが『鳴潮』仕様

コラボ列車は、全面的に『鳴潮』仕様となっている。列車の外装には千咲と漂泊者が大きく描かれており、そのインパクトは絶大。漂泊者の相棒であるアブも描かれている。イベントでは千咲と漂泊者の2人がアブを称えるかのような仕草を見せてくれた。『鳴潮』のVer2.8では一時的に漂泊者と離れ離れになってしまったアブだが、本作のマスコットとしての存在感は示すことができたといえるだろう。

コラボ列車の内装も『鳴潮』のVer2.8をフィーチャーしたもので、中吊り広告も本イベントのキービジュアルとなっている。本イベントでは千咲と漂泊者の2人が列車内部を案内してくれた。『鳴潮』のVer2.8をクリアしているプレイヤーにとって、2人が電車に乗り込む姿を目にするのは感慨深いものがある。千咲は優れた能力をもつために、周囲から異端の存在として扱われる人生を送ってきた。作中での彼女には自由に電車に乗ることをためらうシーンも存在し、悔しい思いをしたプレイヤーも少なくないはずだ。

そうした無念を払拭するかのような2人の振る舞いは尊いもので、千咲の長年にわたる戦いが報われたような気がした。このように、『鳴潮』のVer2.8をクリアしたプレイヤーの記憶を呼び覚ますような演出はすばらしいというほかない。

車内には、『鳴潮』のVer2.8の舞台である穂波市のマスコット的存在・ナミポンのぬいぐるみも置かれていた。漂泊者とアブが相棒関係を築いているように、千咲とナミポンも相棒のような存在となっている。そうした関係性を念頭に置くと、千咲がナミポンを抱えて座っているというのも想いが込み上げてくるというものだ。千咲、漂泊者、ナミポンが電車に乗っている様子は、3人が戦い抜いて訪れた平和を満喫しているかのような雰囲気を醸し出す。コラボ列車は印象的なビジュアルだけでなく、ゲームのストーリーをもとにプレイヤーが見たかった景色を見せてくれた。

束の間の別れに悲しみながらも健気な着ぐるみの千咲

千咲と漂泊者が穏やかに過ごす様子をいつまでも見ていたかったが、2人は未来を見据えるキャラクターだ。次に向かうべきところが存在し、やるべきこともある。そんな2人の出発が迫り、コラボ列車が坂本比叡山口駅を出発する時間となった。千咲と漂泊者がこれから向かう場所は同じところかもしれないし、それぞれ別の場所に向かうのかもしれない。しかし、それは決して別れではない。仮に一時的にそうなったとしても、いずれまた交わる道をお互いが歩むだけだ。

着ぐるみの千咲は名残惜しそうだったが、我々とともに千咲と漂泊者をホームから見送ることになった。寂しさを2人に印象付けないように明るく振る舞っていたが、乗車口が閉まって列車が駅を離れることになるとがっくりと肩を落とし、内心を隠せない様子だった。しかし、そこから立ち直るのも早かった。すぐに調子を取り戻し、特別車掌としてホームにたどり着いた新たな乗客を迎え入れる。たとえ着ぐるみであっても、千咲は千咲だった。その瞳には可能性に満ちた未来を歩む決意があらわれている

セレモニーの様子をまとめた公式動画も公開中

コラボ記念セレモニーは、見目麗しいコラボ列車のビジュアルだけでなく、『鳴潮』のVer2.8をクリアしたプレイヤーの感情を刺激するイベントだった。その感動が本稿で少しでも伝われば幸いだ。『鳴潮』公式YouTubeチャンネルでは、セレモニーの様子をまとめた動画が公開されているので興味がある場合はそちらも視聴しよう。

『鳴潮』と京阪電車によるコラボは、スタンプラリーが12月15日まで開催中。ラッピング電車は2026年1月31日まで運行中だ。それぞれの詳細については、コラボ特設サイトをチェックしてほしい。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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