天を衝くLEDチューブ、見た目はとっつきにくいアート、遊べば爽快なアーケード。TGS2016『Line Wobbler』プレイレポート

東京ゲームショウ2016(以下、TGS2016)のインディーゲームブースでひときわ光っていたのが『Line Wobbler』である。作品がブースの中におさまっておらず、LEDのチューブが天井に向かって伸びているのだから。

東京ゲームショウ2016(以下、TGS2016)のインディーゲームブースを回っていて、文字通りひときわ光り、目立っていたゲームが本作『Line Wobbler』である。なにせ作品がブースの中におさまっておらず、LEDのチューブが天井に向かって伸びているのだ。遠くからは夜の街の電光掲示板のように鮮やかに明滅しており、ブースに近づくまでどんなゲームなのか実態がつかめず、会場で異彩を放っていた。

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『Line Wobbler』の第一印象は既存のゲームの枠組みを壊すアート的なアプローチの作品だった。それはゲームというもののあり方を問いただすコンセプトが重要で、操作性や勝敗といったゲーム性が重要ではないためそれほど練られていないものだ。インディーゲームブースを貫く長いLEDチューブの光は、遠目にはまともに遊べるものとは思えず、「2Dや3Dのゲームがあるなら1Dのゲームはどうか?」と問いただすコンセプトが重要になる作品ではないかと思い込んでいた。

ところが実際にゲームを遊んでみると印象が真逆に変わった。バネのようなスティックを握りしめ、ゲームプレイを始めた瞬間、一転して考えを新たにした。これはゲームのあり方を問いただす試みのアートでもあり、そして十分に遊べるアーケードゲームでもあるのだ。


本作を製作したRobin Baumgarten 氏の公式のプレイ動画。公開する場所によってLEDチューブをジグザクに配置したりとバリエーションがある。

というのも、想像以上に爽快感や緊張感のあるゲームプレイを実現できていたからだ。基本的なルールはシンプル。自キャラである緑の光をLEDチューブの一番上まで到達させることが目的で、途中の赤い光の敵を倒したり溶岩を回避したりしながら頂上を目指す。スティックを前に倒すと上に移動でき、後ろに倒せば戻ることができ、一本の線の中を自由に移動できる。スティックを横に弾けば、攻撃ができる。敵を倒すとその勢いで一気に上に移動するのだ。

意外に操作に手間取り、敵にやられてしまい何回かミスしながらコツをつかんでいく。バネのようなスティックを連続して弾き、道に点在している赤い敵を連続で倒していくとそのまま一気に上昇して頂上までたどり着く。その瞬間に頂上から滝が流れるように光の演出がはじまり、鮮やかな光がLEDチューブを満たした。このクリアの爽快感は予想外だった。バネのようなスティックを弾いたりして遊ぶその感覚は、ゲームセンターにあった特殊な筐体のゲームを遊んだときに近いのだ。

見た目のインパクトに加え、バネのスティックによる挙動も含め実際のゲームデザインが優れていた本作は、弊誌でもお伝えしたようにTGS2016のビジネスデーの最後に開催された「センス・オブ・ワンダーナイト2016」でBest Game Design Awardをはじめ多数の賞を受賞した。TGS2016ではVRが大きくフィーチャーされたこともあり、既存のゲームの定義を問いただしたり、変えたりすると同時に新たなゲーム性や新たな体験を見つけようとする試みが見受けられたと思う。『Line Wobbler』はその代表的なものだったと感じた。

Hajime Kasai
Hajime Kasai

ブログ「GAME SCOPE SIZE」を運営。その他のメディアにも寄稿しています。

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