『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』先行プレイ感想。アクションとストラテジーを融合させた遊びは、現代のニーズに合致した豊かな体験を生んでいる

 

『モンスターハンター』シリーズや、『バイオハザード』シリーズ、『ストリートファイター6』など、大型シリーズタイトルの売れ行きが近年目覚ましいカプコンだが、完全オリジナルタイトルの開発にも力を入れていることはご存知だろうか。このたび、シミュレーションと戦闘アクションを掛け合わせた新作『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』が発売される。このたび一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、現時点で判明している作品の内容を紹介していきたいと思う。

『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』はカプコンが開発している「神楽戦略活劇」ゲームだ。発売日は2024年7月19日。PC/PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S/Xbox Oneに対応している。本作は『深世海 Into the Depths』の開発チームが手掛けていることで知られており、RE ENGINEによって描かれる、オリジナルな日本の土着信仰をモチーフとしたビジュアルが大きな特徴となっている。

戦闘アクション×RTSの新感覚

試遊を開始して最初に筆者がプレイすることになったのは、ステージ1。いわゆるチュートリアル用のステージだ。本作は数あるリアルタイムシミュレーションの中でも、フィールドにユニットを配置し、なだれ込んで来る敵から対象を守り抜く「タワーディフェンス」形式を主な遊びとして採用している。それでいて、ゲームプレイが「リアルタイム」であることに体験の重きを置いている。

基本的なゲームルールとしては、護衛対象である巫女「世代(よしろ)」を鳥居(敵が湧き出てくる門)の前まで誘導し、浄化することができればステージクリアとなる。つまり、ゲームが進むほど護衛対象が敵陣に近づくため、敵がフィールドにあまり分散せず、戦況は激化する。ゆえに、「世代」の移動速度を踏まえたユニットのリアルタイムな配置転換が非常に重要な仕様となっている。それでいて、1ステージ内で使役できるユニット(村人)の総数は限られているのだから面白い。村人は専用のリソースを消費することで、その時点で開放されている職業を自由に与え、途中で変更することが可能。例えばステージ前半は対空中戦用の職業を多く配置し、後半になったら敵を引き付ける職分を積極採用するなど、柔軟な対応が肝要となる。リソースは敵を倒したり、時間経過で出現するフィールドのオブジェクトをプレイヤーが破壊するなどして補給できる。


また、ステージは準備時間である昼間パートと、敵の侵攻時間である夜間パートで構成されており、一定時間で切り替わる。ユニットを使役するには予め昼の間にステージ内を散策し、彼らを救出しておかなければならない。ユニットの救出及び、そして「世代」の移動指示は昼間しかできない。

こうしたリアルタイムの忙しなさを加速するのが、プレイヤーの操作キャラクターである護人「宗(そう)」だ。「宗」は村人救出などギミックの対処を担当するほか、攻撃及び防御の戦闘アクションが可能。ユニットでは処理しきれない敵に対処したり、ユニットを護るべく敵を誘導したりといった臨機応変さが求められる。村人を救出して職を与え、戦闘中の対応を前提としながら「世代」を進行させる。村人を配置するのを忘れずに。夜になったら敵の侵攻ルートに自分の戦略が合致しているかを確認しつつ、抑えきれないルートを自分が「宗」を操作して食い止める。筆者はこうしたゲームに慣れているため、遊んだステージが序盤というのもあり楽々クリア。華やかな浄化の儀式を見届けたら、ボスステージへ進んでいく。


その前に、職業の強化を行うため、さきほどのステージにて敵の脅威から救った村を訪れることにした。ここでは、ステージの攻略報酬を用い、職業の能力を強化することができるほか、破壊された村の設備の復旧ができる。復旧には救出した村民を指定の人数ぶん割り当てたのち、ステージをクリアすることで完了する。いわゆる周回要素となっている。報酬として職業の強化素材や宗の装備を獲得できるため、積極的に挑戦していきたいところだ。

準備を整えたらボスステージへ。内容としては「世代」めがけて随時侵攻してくるザコに対処しつつ、巨大なボスを討伐することになる。試遊した限りでは、ボスステージはフィールドの構造がシンプルな傾向にあったが、そのぶん地形を活かした時間稼ぎをすることができない。ゆえに、どの敵を誰が担当するのかという采配が非常に重要となる。また、ボスは皆その巨体で範囲攻撃を繰り出してくるため、安易に村人を固めておくと一網打尽にされてしまう。一方で、攻撃を加えて専用のゲージを削り切ると一定時間行動不動となり、チャンスタイムが訪れる。囲んで速攻をかけるのか、「世代」を護ることに集中するのか、通常ステージとはまた異なる形で、臨機応変な対応が求められる(ボスへの集中攻撃と、世代の周囲に集合するという指示の切り替えはワンボタンで可能となっている)。本作はユニットの体力回復に関して回数の制限があることを踏まえつつ、戦略を構築していきたいところだ。とはいえ、序盤も序盤ということもあり、最初のボスステージはさくっとクリア。報酬として、失われた仮面=新たな職業「弓取り」を手に入れた。対空要員である。


ということはすなわち、次のステージ2では空を飛ぶ敵が登場するということだ。早速挑戦してみると、彼らは地形を無視してくるため、簡単に防衛網を突破されてしまう。では対空要員を厚くした戦線を構築したいが、ユニットの数に上限があるため必然的に地上戦に穴が開く。そこをプレイヤーが「宗」を操作することで埋めていく。なるほど面白い。「宗」のアクションは非常に小気味よく、動かしていて爽快感がある。まとめて敵を攻撃できる必殺技や、周囲のユニットの能力を一時的に向上させる技もある。「宗」は対空と地上戦、どちらも担当できるが、プレイヤーが動かさねばならないぶん、敵の対処能力はプレイヤーの腕前に左右される。アクションゲームのプレイスキル込みの戦略を構築する、というのはタワーディフェンスゲームでは新鮮で面白い。今回は2面構成となっており、2回ほど浄化を行う必要があったものの、無事クリア。ボス戦へ突入だ。

今回のボス戦は巨大なかまいたち。空中を浮遊している且つ、攻撃範囲が広いため、陣形を組むのがなかなかに難しい。ジリ貧になる前に勝負を決めたいところだが、飛行するザコも対処しなければならない。初見ということで苦戦してしまい、「宗」を倒されてしまった。「宗」は村人と異なり、倒されても行動不能にはならず一定時間経過後に復活する。この間、攻撃はもちろん、村人に指示を出すことができなくなる。あくまで復活するのなら、回復リソースを村人に全部注げば……と筆者は考えたのだが、指示を出せない、「宗」で敵の注意を引けないという状況があまりにも辛い。戦線はいとも簡単に崩壊し、「世代」の体力が尽きた。はじめてのゲームオーバーである。結果を反省しつつ、戦略を見直す。ボスは浮いているため、地上ユニットでは干渉できない。一方で、対空可能な弓取りはある程度なら地上戦もできる。ならば弓取りメインで戦おう。空いている地上戦は全部自分が宗を使って対処すれば良い。筆者は戦闘アクションに慣れている。割り切った作戦が功を奏したのか、激戦の末かまいたちの討伐に成功した。

戦略要素も奥深く、マネジメントが重要な攻略

そして迎えたのはステージ3。洞窟が舞台ということでフィールド全体が暗闇で覆われており、灯籠を灯して敵を視認可能な状態にしないと村人が攻撃できない、というギミックに対処する必要がある。灯籠を灯すには村人に戦線から離れて一定時間働いてもらわなければならないため、やたらめったら適当に明かりを灯していると、それだけで戦線が崩壊する。また、村人を救出するにあたって複数人の村人を派遣する必要があるギミックも散見され、状況把握とタイムマネジメントが重要なステージという印象を受けた。そこで筆者は戦力を集中させる部分を明確化。このステージからは敵の侵攻を遅延させる職業「修験者」を使うことが可能となっており、手が回らない部分は「修験者」の遅延能力と「宗」の組み合わせで対処した。このステージではタイムマネジメントが大変なぶん、そのリターンとして指示可能な村人が多く、段取りを意識することができれば強固な戦線を構築することが可能。難しすぎない良い難易度だった。

ボスステージでは巨大な「百足女郎」を討伐することになる。とにかくデカいため、村人をまとめていると突進で一網打尽にされるが、まとめないと大量のザコに対処できない。また、灯籠のギミックがある。一方で、攻撃が通りやすい「弱点」とみられる部位が存在している。悩んだすえ、筆者は「宗」をボスの囮とすることに決定。普段は自分がボスを引き付け弱点をちまちま叩き、ボスが「世代」に接近したときに、護衛担当の村人を宗の力で強化、一斉攻撃をしかける。結果、無事クリアできた。

筆者はある程度アクションゲームに慣れていたため、上記戦術を採用したが、とうぜん人によっては異なる戦術を使うことになるだろう。そういった攻略手段の幅広さが本作の魅力の1つである。ほかにもスコアアタック的な要素や、ステージによってはギミックを解除することでもらえる報酬があったりなどが確認できた。プレイスキルの上達を通じてこのゲームの楽しみは広がっていくのだろう。

意外と時間が余ったため、もう1つステージを遊ぶことにした。残っていたラインナップは「村人のみで戦闘する特殊ステージ」「四方八方から敵がくる海上戦」「浄化する鳥居が2箇所以上になる高難易度ステージ」の計3つ。筆者は「海上戦」のステージをチョイスした。複数の舟を連結させた足場の上で戦い続け、「世代」が目標地点までたどり着くことができればクリアとなる。ここでは敵を引き付ける「角力」や、中型の敵に効率よく対処できる「槍使い」など新しい職業が見られたほか、「宗」が弓攻撃を取得しており、楽に対空攻撃をすることが可能となっていた(それまではジャンプ斬りだった)。これまでは敵の出現位置が固定されていたのもあり、陣形が組みやすかったが、今回はそうではない。足場となっている舟に人数のバランスよく村人を配置。あとは「宗」が駆け回ってなんとかする。毎度のことだが、今回はさらに大変そうだ。


実際大変であり、定期的に巨大な「ひらふ貝」が現れ、足場となる舟を鎮めようと攻撃してくる。そこに防衛設備である大砲を上手くぶつけていくのがセオリーである。だがいかんせん四方から敵が迫るため、段取りよく事を進めていくのが難しい。東から迫る飛行敵を対処したら南から迫る群れにとりあえず「角力」を置いて対処、西で大砲を使ったら中央に戻り……あっ、舟が一隻沈んでいく……何度も挑戦し敵が出現するタイムラインを把握することが攻略への近道となりそうだ。ここでタイムアップ。筆者の試遊体験は幕を閉じた。

良いとこどりのバラエティ豊かな体験に

現時点における筆者のインプレッションとしては、用意されている体験のバラエティが非常に豊かな作品である、という印象を受けた。特徴的なビジュアルの鑑賞体験にはじまり、ゲームのメインとなる「タワーディフェンス」では、基本的な地形に合わせたユニットの運用のみならず、段取りを意識しながらギミックの対処を求められる部分があったり、ボス戦を中心に、まるで戦闘アクションゲームのような体験を提供する部分もある。今日まで「タワーディフェンス」ゲームは数多く登場しているが、ここまでバラエティ豊かな内容を形成している作品はそうない。

そして、この内容の成立にはプレイヤーキャラクター「宗」の存在が大きい。ユニットが持つ欠点の穴埋めから、攻略の主軸まで、何でも担当できる。この何でもできる「宗」のコンセプトそのものが、すぐにわかりやすい面白さを提供しなければならないという世風に合致しており、面白さが分かるまで時間がかかるというシミュレーションゲームにつきものな弱点をカバーしている。ゲームに飽きさせないよう体験のバラエティを設けていることもあわせて、実に現代的な「タワーディフェンス」ゲームであると言えるだろう。


同開発チームが手掛けた『深世海 Into the Depths』もまた、古典的な2Dの浮遊アクションを現代的な形にブラッシュアップした点が作品における特徴の1つとなっている。今、王道ではないゲームジャンルを開発し続けるこのカプコン開発チームの活躍が、今回どういった形で実を結ぶのか、筆者としては非常に注目している。

『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』は2024年7月19日に発売予定だ。PC/PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S/Xbox Oneに対応している。