絶望の学園防衛ゲーム『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』体験版をプレイし、マスコットキャラ「SIREI」への想いが止まらない。ダンディー毒吐き理不尽司令官(CV大塚芳忠)
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アニプレックスは、『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』の体験版をSteamにて2月19日に配信する。弊誌は今回、体験版を先行プレイする機会をいただいたため、本稿ではゲームプレイを通じて得たインプレッションをお届けしよう。なお、体験版の範囲内について“衝撃的なネタバレ”が含まれるため注意してほしい。回避したい場合は、体験版を先にプレイすることをおすすめする。
『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』は、最終防衛学園に集められた15人の学生たちが100日間の防衛戦争を繰り広げる、“極限×絶望”のアドベンチャーだ。本作の主人公・澄野拓海は、平凡な家庭で生まれ育った極普通の高校生だ。彼は家族や幼馴染のカルアと共に、東京団地での平凡な日常を過ごしていた。しかしある日、正体不明の襲撃者が出現。町が燃え盛り、化け物が襲い来る中、澄野拓海は司令官を自称するマスコットSIREIから我駆力刀(がくりょくとう)を受け取り、カルアを守るために言われるまま心臓へ突き立てるのだった。澄野拓海が目を覚ますと、消えない炎に包まれた最終防衛学園へやってきていた。主人公も含めた15人の学生たちは、特別防衛隊として学園を守ることになる。15人の学生たちが異能の力「我駆力」を駆使して正体不明の敵「侵校生」と戦う、100日間の防衛戦争が幕を開ける。
本作は『ダンガンロンパ』シリーズを手がけた小高和剛氏率いるトゥーキョーゲームスが企画を担当。販売はアニプレックス、開発はメディア・ビジョンが担当している。また、『極限脱出』シリーズや『Ever17』を手がけた打越鋼太郎氏との初タッグ作品である。そのほか、『ダンガンロンパ』シリーズでおなじみの小松崎類氏がキャラクターデザイン、高田雅史氏が音楽を手がけるなどそうそうたるメンバーが開発陣に名を連ねている。
人類など知ったことか!俺は「SIREI」のために学園を守り抜く!
本作の体験版では、プロローグから7日目終了までプレイ可能だ。製品版へのセーブデータの引き継ぎに対応しており筆者のプレイ時間は約5時間。その中でさまざまな要素を体験できるが、まずは7日目までの流れとともに、謎のマスコット「SIREI」の魅力をお届けしたい。なお、7日目まででも“衝撃的なネタバレ”が含まれるため注意してほしい。
プレイ開始すると、天井がドーム状に囲まれ人口光で昼夜が切り替わる「東京団地」が美麗なカットシーンで描かれる。たまに警報が鳴ればシェルターへ避難するという決まりがあること以外は平凡な団地だ。その日は登校中に警報が鳴り、はぐれてしまった幼馴染を探しに廃校へ。そこでSIREIとの初遭遇を果たすのだ。脳と心臓が透けた白くて丸い体に、ハットと蝶ネクタイという個性的な外見のSIREIは、見た目に合わない渋い声と紳士的な口調で「キミは選ばれた」「刀を心臓にブスリ」など理不尽な要求をしてくる。何だこいつと思わずにはいられないが、その思いはすぐに覆されることになる。
再会した幼馴染とともにSIREIから逃げると正体不明の化け物が街を襲撃。幼馴染が危機に瀕したとき、またもやSIREIが登場する。ちなみにここまでは主にカットシーンとなっており、ここからの会話は主に一枚絵にテキストが表示されるスタイルで進行する。「アニメやゲームの世界じゃない」「貴重なヒロイン枠のピンチ」などメタ発言をしながら、SIREIは情緒不安定と言えるほど喜怒哀楽が激しく、立ち絵がコロコロと変わっていく。見ていて飽きることがない。刀を心臓に刺せば戦える力を得られると言われ、「戦う」「戦わない」のスタイリッシュな選択肢が出現。「戦わない」を選んでみると、「もうやんなくていいよ!電源切って、あっちいけバカ」と怒られてしまいゲームオーバーに。思わず笑ってしまった。ダンディーなのに感情豊かで、抜群のユーモアを交えて理不尽な要求をしてくるSIREIに魅了されてしまったのだ。
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そのまま選択肢へと戻り、「戦う」を選ぶと本作の戦闘となるSRPGパートだ。戦闘システムについては後述する。戦闘を終えるとSIREIに学園への転校を命じられ、謎の空間へ引き込まれてしまう。どこかの教室の机で目覚めると、主人公含めて10人の学生がいるものの幼馴染の姿はなく安否不明。どの学生も強烈な個性を放っており、そのなかでもデスゲーム大好き病み系女子の飴宮怠美(アメミヤ ダルミ)、心優しいヤンキー厄師寺猛丸(ヤクシジ タケマル)、ミステリアスで棘のある雫原比留子(シズハラ ヒルコ)は体験版で一緒に戦うことになる関わりの多いキャラクターだ。
自己紹介を終えると軽快な音楽とともにお待ちかねSIREIの登場だ。司令官であること、学生の体内に爆弾が埋め込まれていること、東京団地の外にある「最終防衛学園」であること、「消えない炎」に囲まれていること、敵を虐殺する「特別防衛隊」に選ばれたこと、などを相変わらず感情豊かにユーモアを交えながら説明してくれる。そうしていると敵が攻めてきたので4人で戦闘へ。
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戦いに向かう際にSIREIは「ジェノサイドパーティーの開幕だよ!」と喝を入れてくれる。ユーモア溢れるSIREIでも敵に対しては残忍で恐ろしい一面もあるのだ。戦いの中で、正体不明の敵を「侵攻生」と呼ぶこと、学園の「ある物」を奪われれば人類滅亡といったことも教えられる。そうしていると襲ってきた大型の「部隊長」に怠美が一人飛び出して死んでしまう。なんとなく誰も死なないと思い込んでいたので筆者は動揺した。しかし、すぐにドローンで死体が回収され、SIREIが「安心して」とのこと。SIREIが言うのなら安心なのだろうと筆者に笑みがこぼれる。残されたメンバーで部隊長を撃破して戻ると、なんと怠美が復活。どうやら消えない炎の範囲内ではドローンにより回収されて不死身らしい。
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まだまだ分からないことだらけなので説明と食事を兼ねた祝勝会を開いてくれる。戦った者は何でも、戦わざる者にも乾パンが振る舞われ、SIREIの慈悲深さも垣間みえる場面だ。食事を終えると、侵攻生から人類滅亡に繋がる「ある物」を守るために、100日間の防衛を命じられることに。その後は元の生活に戻れるらしい。それ以上の説明は全員が戦う気にならないと教えないと言い放ち、「ウンコして寝る」と去ってしまった。SIREIのユーモアは下ネタ、メタネタ、おやじギャグ、ノリツッコミなど多岐に渡り、その度に表情も変わるため一挙手一投足が見逃せない。
2日目は、学園内の施設紹介だ。これまでと同じようにSIREIのユーモアを楽しみながら学園内を回ろう。しかし、3日目からなぜかSIREIは現れなくなってしまう。SIREIというムードメーカーがいないと物足りなくなってしまい、筆者はSIREIに取り憑かれてしまったようだ。5日目までは自由行動により、仲間と会話してステータスアップや、探索により素材の収集をしよう。6日目にとある事件が発生し、SIREIのハットに付いたエンブレムの欠片が見つかる。7日目にエンブレムが見つかった場所へ探索へ向かうことに。そして、付近にあるポリバケツの中にはSIREIのバラバラ遺体が。あまりの衝撃に筆者は呆然とする。学生には体内爆弾があるため犯人は侵攻生と思われ、怒りが沸いてくる。
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最後にSIREI不在のなかで襲ってきた侵攻生を撃退して体験版は終了する。本作の世界設定やストーリーはあまりにも謎だらけだ。東京団地とは、最終防衛学園とは、侵攻生とは、学園の「ある物」とは何なのか。そしてSIREIの目的とは、SIREIを殺した犯人、SIREIは復活するのかなど、少なくとも筆者は人類のためではなく、ダンディーなのに感情豊かで抜群のユーモアと残忍性と慈悲深さを合わせ持つSIREIのために戦うことを決意したのだった。
「死」すらも利用する戦略性の高い戦闘パート
本作の戦闘パートであるSRPGパートは「死」すらも利用する斬新かつ戦略性の高いシステムに仕上がっている。基本的に学園を守るための防衛戦であり、状況によっては単に殲滅が目的の場合もある。進行に応じて段階的に要素が解禁されていき、7日目の戦闘システムの紹介となる。
SRPGパートは、見下ろし視点でマス目状で表現されたフィールドにて、味方ターンと敵ターンが交互に切り替わって戦うという一見シンプルな作りだ。キャラクターを選択、技を選択、場所を選択、向きを選択という流れで敵を攻撃すると、APと呼ばれるリソースを消費。APがあれば同じキャラクターが何度も行動可能だが、一度行動したキャラクターは疲労状態となって1マスしか移動できなくなる。キャラクターにはそれぞれ特異科目という固有能力があり、倒した敵の数だけターン中の攻撃力アップなど、複数回行動が有利になる仕様も。また、強敵を倒すとAP+1といった要素もあり、これだけでも戦略性の高いシステムとなっている。
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本作では味方の人数の数倍もの敵が押し寄せてくるのも特徴だ。それに対して、味方の技はそれぞれ形の異なる範囲攻撃となっており、大量の雑魚をサクサクとせん滅することができる。そうして、VOLTAGEゲージが溜まると範囲も広く強力な必殺技、もしくは戦闘中の永続強化が可能となる。それらを活用しても、ボスはHPが多く広範囲の反撃能力をもち、さらには高火力な攻撃を仕掛けてくるため強力だ。しかし、瀕死になったキャラクターは、文字通り「死」と引き換えに必殺技を放つことが可能。しかも、味方の死亡回数は「ナイスDEATH」としてカウントされ、獲得報酬がアップするという要素もある。「死」が推奨されている斬新なシステムにより、状況によってさまざまな戦術がとれるだろう。もちろん死亡したキャラクターは戦闘後に復活するので安心だ。
体験版ではボスが出現する歯応えのある戦闘は2回のみ、「死」を利用するシステムはラストのみであったため筆者は物足りなく感じてしまった。製品版ではさまざまなシチュエーションで強力なボスとの戦いが楽しめることだろう。ちなみに、本作はプレイ開始時にストーリー重視の難易度も選択でき、仮に全滅してもVOLTAGE最大で再戦できる救済要素もあるため、SRPGが苦手な人も楽しめるはずだ。
真価を体験できなかった数々の要素
体験版ではアドベンチャーパートとSRPGパートのほかにも、さまざまな要素が登場するものの真価を体験できない。たとえば、すごろくのようなマップを探索するパートでは、素材を収集できるものの使い道が不明だ。戦闘後に入手するBPの使い道も不明であり、会話によって上がる「成績」と呼ばれるステータスも何に影響を及ぼすのか分からない。学園内には解放されてない施設が多数あり、まだ見ぬ学生たちの存在や、技や装備などの成長要素にも期待が膨らむ。また本作はマルチエンディングが謳われており、重要な選択肢も複数登場するものと思われる。体験版では最初の一回のみであったが、製品版ではプレイヤーそれぞれが異なるストーリーを体験できるだろう。
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本作はアドベンチャーゲームであり、SRPGでもあり、そのほかさまざまな要素も登場し、世界観やストーリーも異彩を放っている。しかしながら、これらの要素の魅力を伝えきるのは難しい。ならば筆者は一言でこう伝えよう。「SIREIのためにプレイせよ」と。体験版の7日目を終える頃には、SIREIの魅力に取り憑かれ、侵攻性に対して復讐心も芽生えるはずだ。SIREIのために戦うのだ。
『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』はNintendo Switch/PC(Steam)向けに、4月24日発売予定。通常版の価格は税込7700円。デジタルデラックスエディションは税込9900円となっており、デジタルアートブックやデジタルサウンドトラックが付属。また一部店舗向けには店舗特典やグッズ付き限定セットも存在。予約特典として、小高和剛氏監修の書き下ろし小説も用意されている。