クール系お姉さんの変顔が凄い『アーティス インパクト』、可愛い動物の造形に癖を感じる『モノノケの国』、ずっとヘンな状況が続くADV『Apopia』。ハピネットの「心に引っかかる」ゲーム試遊感想
パブリッシャーのHappinet(ハピネット)は、3月20日と21日に開催されたインディーゲームイベント「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2026」(以下、TIGS2026)にて『アーティス インパクト』『モノノケの国』『Apopia: スイート・ナイトメア』の3作品を出展した。本稿では、TIGS2026にて3作品を試遊してわかった個性を掘り下げて紹介する。

パブリッシャーのHappinet(ハピネット)は、3月20日と21日に開催されたインディーゲームイベント「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2026」(以下、TIGS2026)にて『アーティス インパクト』『モノノケの国』『Apopia: スイート・ナイトメア』の3作品を出展した。
Happinetのブースで触れたこの3作品は、ぱっと見の印象こそ親しみやすかった。終末世界を往くRPG、妖怪と戦う和風アクション、トゥーン調のアドベンチャー。いずれも入り口はわかりやすいが、実際に遊んでみると、どの作品も第一印象とは違う不愉快ではない“引っかかり”が心に残る。
重厚なSF世界を、濃密なドット絵とギャグ漫画的なノリで進む『アーティス インパクト』。柴犬やモノノケたちの愛らしさに目を引かれつつ、ボス戦の切ない展開が意外な『モノノケの国』。そして、ずっと妙な出来事が続くのに不思議とくどくない『Apopia: スイート・ナイトメア』。それぞれのタイトルが、可愛さや親しみやすさを入口にしながら、それぞれ別方向の個性をしっかり持っていることが感じられた。

本稿では、TIGS2026にて3作品を試遊してわかった個性を掘り下げて紹介する。
ギャグっぽいテンポ、凝ったドット絵の熱量が高い『アーティス インパクト』
まず体験したのは『アーティス インパクト』。暴走したAIに支配された3000年後の地球を舞台に、レジスタンス「A-Lith」の新人エージェントであるアカネと、小型AIロボットの相棒ボットが、世界に隠された秘密や記憶の断片を追っていくRPGだ。手描きのピクセルアートと滑らかなアニメーションが特徴で、メインとなる冒険とは別に、家の拡張や装飾などができるハウジング要素のほか、アルバイト、お風呂、エクササイズ、料理といった日常生活を送るライフシム要素も存在する。現在はPC(Steam)向けに発売中で、2026年内に日本語に対応したNintendo Switch版がHappinetより発売予定だ。
AIに抵抗する終末世界と聞くと、どうしても重苦しい物語を想像する。ところが実際に遊んでみると、本作の空気感はかなり軽い。アカネはクールな見た目に反して、文句を垂れたり上司にビビったり、焦って変顔を見せたりと、とぼけた一面も持つ。対するボットは冷静なツッコミ役だが、時々メタな角度から話に口を挟んでくる。終末ものにありがちな悲壮感はなく、ギャグ漫画のようなテンポで物語が転がっていくのが最初の驚きだった。

その空気を象徴していたのが、ダンジョンの途中で見つけたチタン製のドアだ。いかにも何かありそうな物々しいドアを前に、アカネはなぜか「チタンは生体適合性がある」などとうんちくを披露し、異様な執着を見せる。会話中はドアにほおずりするアニメーションまで用意されている。一方のボットは、この奥にはどうせ隠しボスがいるからやめておけと、ロボットとは思えないメタ発言で引き留める。会話の雰囲気が妙に日本のライトノベルやアニメっぽいのだ。少なくとも試遊の範囲ではノリはかなり親しみやすく、日本人なら馴染みやすいであろう空気で満たされていた。

もうひとつ強く惹かれたのは、画面の中のものを全部触りたくなる細かなドット絵の演出だ。扉や自動販売機などにインタラクトでき、手元を拡大した吹き出しに詳細なアニメーションが描かれるという凝った演出が入る。ゴミ箱や小物に触れてもきちんと反応する動きは気持ちよく、ひとつひとつ確かめながら歩きたくなる。ドット絵は本来、記号的で省略の美学を持つ表現だが、本作は吹き出しと拡大演出によって、ドットの良さを損なわないまま詳細な情景描写に成功している。さらに漫画的なコマ割りのイラストや、デフォルメされた顔アイコンが挿入されることもあり、シンプルな画面に見えて密度は高い。情報を詰め込みすぎて画面が少し散らかって見える瞬間すらあるのだが、「できることは全部入れたい」という開発者の熱量が全面に押し出されていた。

戦闘はシンプルなコマンド式で、攻撃・アーツ(スキル)・防御・アイテムから選択する仕組み。攻撃アニメーションは気持ちよく、雑魚戦をこなすぶんには楽しいが、試遊の範囲では特別なシステムがあるわけではなく、限られた時間の中でRPGとしての深みを捉えることはできなかった。とはいえ、会話劇とドット絵による演出の妙は十分伝わったので、本編では戦闘や成長要素がどこまで噛み合ってくるのかを見たくなった。翻訳も軽快なテンポを崩さない良質なものとなっており、製品版でその熱量を存分に感じられるのが楽しみだ。

デカくてピュアなモノノケに癒される『モノノケの国』
次に試遊したのは『モノノケの国』だ。唯一の家族である仔犬ムサシを失った少年タイキが、犬柱として蘇ったムサシにかけられた呪いを祓うため、「モノノケの国」で神具を集める旅に出るアクションアドベンチャーである。神話と妖怪が息づく異世界を舞台に、少年と仔犬の旅が描かれ、道中では奇妙で不思議なモノノケたちとも出会っていく。PC(Steam)向けに2026年秋発売予定だ。
本作でまず目を引いたのは、ムサシやモノノケたちの存在感だった。ムサシは主人公に常に追従しており、戦闘中もひっきりなしに走り回る。こちらが泳げば健気に犬かきでついてきて、その姿を見ているだけでも楽しい。ちょこんとしたデザインも相まって、製品版で用意されているというムサシとのふれあい要素にも自然と期待が高まる。

村で出会う獣人「モノノケ」たちのデザインも印象深い。白毛や三毛など色彩豊かな猫たちは、かなり現実の動物寄りの造形を盛り込みつつ、デフォルメが効いていて親しみやすい。ぴょこぴょこと動くカエルは見ているだけで和むし、キツネは少し怪訝そうな顔でこちらを警戒してくる。どのキャラクターも表情や仕草が豊かで、どこか純朴だ。その一方で、主人公のタイキより大柄な者が多く、体つきにはしっかり獣らしさもある。この迫力と純粋さの同居が、本作のモノノケたちをより愛らしく見せていた。

アクション部分の感触も良い。祈祷に使う大麻(おおぬさ)で敵を祓う通常攻撃にはしっかりヒット感があり、長押しで複数の敵を狙うマルチショット、竜巻のような回転攻撃、巨大なハンマーで叩きつけるようなスキルなど、見た目以上に攻撃の手札がある。相手の攻撃に合わせて防御すればパリィも可能だ。判定は比較的やさしめで、自動で反撃まで繋がるので気持ちがいい。試遊範囲では難易度は高くなく、強敵に挑む歯ごたえのような感覚はそこまで強くないが、アクションの手触りのよさがそれを補っている。そのうえでムサシがずっと視界の端でちょこまか動いているので、戦っている最中ですら空気が殺伐としない。『がんばれゴエモン』のような、丸みのある和風アクションの系譜だ。

ただ、本作でいちばん記憶に残ったのは、戦闘そのものよりもボス戦の後味だった。ステージ終盤に登場した大鬼「酒呑童子」は巨大で、いかにも悪役らしいセリフを吐く強敵だ。ところが体力を削るごとに回想が差し込まれ、酒に逃げるに至った悲しい過去や、戦いながら葛藤している様子が少しずつ見えてくる。最後は子ども時代にかえった酒呑童子が「浄化」されるというかたちで空へ消えていき、戦いが終わる。ただ倒すのではなく、祓い、浄化する。そんな決着の付け方が、本作の昔話めいた手触りをよく表していた。
その後に触れた村パートでは、穏やかな村でのんびり過ごすことができた。地平線が近く、緩やかに湾曲して見える演出が、こぢんまりとした箱庭感を強めている。村人の頼みを聞いたり、魚を釣ったり、青空教室のような穏やかな光景を横目に歩いたりと、全体に流れる空気はやさしい。試遊では村パートで何を積み重ねていくのかは見えない部分もあったが、ときおりアイテムを拾えるなどRPG的な広がりも感じさせた。ムサシとモノノケたちの愛らしさ、そして敵を祓い、浄化へと導くおとぎ話めいた手触りの魅力は、短い試遊でも十分伝わってきた。

ずっと奇妙、だけどうるさすぎない『Apopia: スイート・ナイトメア』
最後に体験したのは『Apopia: スイート・ナイトメア』。本作は少女マイが家に帰るため、ユーモアあふれるファンタジー世界と、心の内面に踏み込むダークな世界を行き来するアドベンチャーゲームだ。ネコやウサギといった動物たちと出会い、パズルやミニゲームをこなしながら、家族に秘められた真実を解き明かしていく。PC(Steam)向けに発売中。
本作でまず印象に残ったのは、ずっと妙なことが起こり続けるのに、不思議と混乱したりくどく感じたりしないところだ。冒頭から、かわいいコウモリに少しずつかじられながら洞窟を進み、ピンク色の喋る猫を追いかけることになる。道中では、壊れた自販機の中にあるレイピアを落としたり、“喋るバラ”の中から情熱的な一本を探したりと、状況だけ見るとかなり変だ。それでも遊んでいると案外すんなり受け入れられる。

その理由のひとつは、会話の運びが素直だからだろう。世界や出来事は十分おかしいのに、キャラクターたちはその中でちゃんと話を前に進めてくれる。奇妙さをセリフでまで表現せず、表情や状況で見せる作りになっていて、そのバランスが心地いい。「変なのに親しみやすい」空気は、本作ならではの持ち味だと感じた。
本作の奇抜さは演出にも活かされている。プロローグでは、母を追いかける場面で一瞬だけ黒い世界が差し込み、空気が急に変わる瞬間がある。アイスクリーム型の家が並ぶ、いかにもファンタジー然とした背景の奥には、いつの間にか荒廃した電柱が立っている。可愛らしい世界に見えて、どこか綻びがある。徐々に、『Apopia』の世界がただ面白おかしい夢ではないことがわかってくる。

本作公式の説明では主人公マイの内面や記憶に関わるダークな展開も特徴だとされるが、試遊の範囲では決定的なシーンは確認できなかった。冒頭の説明は少なく、それもあってプレイ序盤時点では感情移入のとっかかりが薄いように感じた。それでも、奇妙さと不穏さがじわじわ混ざっていく空気づくりは印象的だった。この奇妙な世界が、マイの心理描写でどう崩れていくのか気になるところだ。

親しみやすさの奥に、それぞれ違う「引っかかり」がある
『アーティス インパクト』『モノノケの国』『Apopia: スイート・ナイトメア』の試遊を通して感じたのは、いずれの作品も親しみやすい見た目の奥に心を掴む「フック」がある、ということだ。
『アーティス インパクト』は、終末SFと熱の入ったドット絵を、軽妙な会話劇で繋ぎ合わせている。『モノノケの国』は、柴犬や獣人モノノケたちの愛らしさの先に、昔話の切ない感触を盛り込んでいる。『Apopia: スイート・ナイトメア』は可愛い世界の中で、シュールさと不穏な空気の境目を行ったり来たりする。どれもわかりやすい特徴を持ちながら、実際に触れてみると、それぞれ別のかたちで心惹かれる「引っかかり」を残していく。

短い試遊時間では各作品の全体像までは掴み切れなかった一方で、「この作品は何を面白さとしているのか」は、どの作品からも十分に伝わってきた。第一印象どおりの特徴も備えながら、後味はそれぞれ違う。TIGS2026のHappinetブースで触れた3本は、そんな個性の出方がしっかり印象に残るラインナップだった。
『アーティス インパクト』Nintendo Switch版は2026年、日本語表示対応で発売予定。PC(Steam)版は発売中だ(そちらは日本語未対応)。『モノノケの国』はPC(Steam)向けに2026年発売予定。『Apopia: スイート・ナイトメア』はPC(Steam)向けに発売中。
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