『Fate/Grand Order』フェスで「10年間続く運営型ゲームの凄み」を見る。ゲームを超えた“リアル体験”の力強さ
「Fate/Grand Order Fes. 2025 ~10th Anniversary~」の取材を通して、10周年を迎えた『Fate/Grand Order』の”体験”がもつ強みを考えていく。

『Fate/Grand Order』(以下、FGO)は2025年で10周年を迎えた。TYPE-MOONファンの筆者としては、成人向けビジュアルノベルに端を発する『Fate』シリーズから展開された本作が10年も続くとはサービス開始当初は考えてもみなかった。しかし今ではアプリが3100万ダウンロードを突破し、2024年のリアルイベントには2日間で過去最多の約3万人が来場と、押しも押されぬ巨大なタイトルになっている。
今回「Fate/Grand Order Fes. 2025 ~10th Anniversary~」(以下、FGOフェス)に取材参加することができたため、本稿では8月2日に体験したイベントの紹介とあわせ、『FGO』がこの10年でなにを成し遂げたのかについて考えていきたい。
FGOフェス2025テーマは「理想郷」
2025年のFGOフェスは「Avalon Grandium(GrandとKingdomを掛け合わせた造語)」をコンセプトに、「理想郷」を体現したような王国がモチーフのアトラクションや催しが開催。エリア分けがあり、Live2D×洋館をテーマにサーヴァントと過ごす「アヴァロンズ・シャトー」、城下町をイメージした「FGOクイズ」などが楽しめる「キャッスルタウン・カルデア」、闘技場モチーフにプレイヤーのリアルとゲームの実力を測る「コロシアム・マウンテン」。
そして「森」を体感するショーを味わう幻想的なエリア「ミステリアス・フォレスト」、10年間で描かれたアートや衣装が展示された「メモリアルギャラリー」の全5エリアに分かれている。さらにエリア同士をつなぐ通路も「カーニバルストリート」、物販も「オリエンタルバザール」として装飾が施されて盛況だ。

私は「メモリアルギャラリー」が印象深かったが、理由としては主人公・藤丸立香の物語を文字通り追体験する空間になっていたからだ。歴代「FGOフェス」のキービジュアル、概念礼装やイベントイメージアートが展示。100騎以上のサーヴァントの描き下ろしイラストがスタンディで配置され、QRコードで聞ける録り下ろしボイスはFGO公式LINEのスタンプラリーと連動。最新宝具として、「希望築く人理の盾(ロード・カルデアス)」が堂々と飾られ、本編シナリオにも重なる過去から積み上げてきた「10年の集大成」がダイレクトに伝わった。

また、10周年という節目で2024年以上の来場者が見込まれるためか、全体的に昨年(サバフェス再現コーナーなど)と比べ、宝具など大きな展示物が点在するような形で通路が広く取られており、立ち止まっても邪魔になりにくい工夫がされていたように思う。
ステージイベントのスタッフトークでは、開発スタッフ安生真氏が「マシュ・キリエライト〔パラディーン〕」「インドラ」の設定資料を披露。「FGOフェス」に台風9号が直撃しそうだったものの逸れたのは、天候や空を司る「インドラ」の加護だろうかと笑いを誘っていた。
ステージでは2025年夏の水着イベントにおける男性サーヴァントの霊衣が発表されどよめきが起こったが、特にテスカトリポカ発表と声優・三上哲氏のサプライズ登場にはもはや悲鳴も発生。そして目玉となる水着パッションリップのイラスト自体は、2024年夏公開だったため実に1年越しの実装となる。その可愛らしさへの反応や「奏章Ⅲ」での活躍も相まって、「やっときたか……」と会場が揺れるような安堵の歓声があがったのは、いちプレイヤーとして感慨深いものがあった。
また10年間におけるサーヴァントの年別総出撃回数ランキングの統計も明かされ、全員薄々感づいていた近年の「アルトリア・キャスター」の活躍が明示化。その後もユーザーアンケートを元にしたデータバトルが開催されるなど、第2部終章の配信時期発表がされたこともあり、総括や終わりを通した“振り返り”として、華々しさと儚さを感じさせるシーンが多かったのが印象的だった。

『FGO』が10年間で成し遂げたものとは
『FGO』がこの10年間成し遂げたことは、展示で示されるようなゲームという枠を超えた「コンテンツ化」としての深化だ。それはキャラクターを徐々に増やしたり、定期的にイベントを開催したりするだけではなく、ユーザーの体験を拡張する多岐にわたる取り組みによって支えられてきた。

例をあげると、本編で描かれる重厚なストーリーや個性豊かなサーヴァントたちは、様々なメディアミックスへと昇華。アニメ、舞台、映画をはじめ、本イベントでもフィーチャーされているサーヴァントたちの日常を描いた「ますますマンガで分かる!Fate/Grand Order」、「Fate/Grand Order 藤丸立香はわからない」のようなギャグ漫画も人気だ。こうした多角的な展開は、ユーザーの『FGO』への関心を常に引きつけ、ゲーム内外でキャラクターを味わえる機会を生み出している。「メモリアルギャラリー」で各キャラクターの限定音声を聞こうと、推しのパネルを探す行為はその証左ではないか。
また何より「FGOフェス」は、ゲームの世界観を現実に投影する催しだろう。それは『FGO』が単なるデジタルコンテンツではなく、ユーザーに「体験の共有」を提供していると言える。まさしく「アヴァロンズ・シャトー」や「キャッスルタウン・カルデア」などは、設定をモチーフにデザインされており、アトラクションを巡るだけでゲームに足を踏み入れたかのような感覚を味わうことができた。この生身とデジタルが交差する様相は、昨年のレポートでも記載したがオンラインでは味わえない感覚だ。
筆者としては、『FGO』が10周年を迎えられたのは、シナリオやキャラクターが良いといったゲームとしての面白さだけに起因するものだけではないと考えている。多角的なメディアミックスや「FGOフェス」に代表されるリアルイベントを通じて形成されてきた、ゲーム世界を現実の体験へと拡張したコミュニティ。この強力な基盤こそが本作を支え続けており、今回のコンセプトである「Avalon Grandium」、いわゆる「理想郷」や「王国」だろう。10年という一区切りを迎え、これまでを振り返った本作が今後どのような新たな体験をユーザーに提供していくのかこれからも追っていきたい。
『Fate/Grand Order』はiOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。