ついに発表された「EVO Japan」 日本で開催する経緯と展望とは?

今回は、8月15日から18日までに幕張メッセで開催される「東京ゲームショウ2016」のビジネスデーにて開かれた「実行委員会設立にともなうプレス説明会」のレポートを掲載。日本で開催するに至った経緯とは、そして展望はいったいどのようになるのだろうか。

アメリカで毎年開催されている世界最大規模の対戦格闘ゲーム大会「Evolution Championship Series(以下:EVO)」。1995年の初開催以降、選出されるゲームとともに参加者は増加し、今年は1万5千人ものプレイヤー動員を記録した。

日本においては株式会社エンターブレインによる「闘劇」が国内最大級の盛り上がりを誇っていたが、諸般の事情により2012年に閉幕。その後は株式会社タイトーよるメーカー主導の「闘神祭」や、ニコニコ動画で知られるniconicoが運営する「闘会議」、TOPANGAのチャリティーカップなどが対戦格闘ゲーム大会の場と機会になっている。2015年には「日本eスポーツ協会」が設立されたこともあり、日本においてもプロゲーマーの地盤や礎ができあがりつつある。

そんな中、今年の7月19日にラスベガスのマンダレイ・ベイ イベントセンターで行なわれたEVOの本戦決勝日にて、EVOビジネス デペロップメント プロデューサーを務めるマークマンことマーク・ジュリオ氏と、バンダイナムコエンターテイメントの原田勝弘氏(『鉄拳』シリーズ プロデューサー)、カプコンの小野義徳氏(CS開発統括副統括)がステージ上に登場し、日本で「EVO Japan」を開催すること発表。しかしその詳細については伏せられたままだった。

今回は、9月15日から18日までに幕張メッセで開催される「東京ゲームショウ2016」のビジネスデーにて開かれた「<EVO Japan>実行委員会設立にともなうプレス説明会」のレポートを掲載。日本で開催するに至った経緯とは、そして展望はいったいどのようになるのだろうか。

 

「オリジナルのEVOと変わらないものを」主催者と実行委員によるコメント

今回のプレス発表会の初めに、EVOを運営する親会社「Triple Perfect,Inc」のジョーイ”ミスターウィザード”クエイラー氏とマーク”マークマン”フリオ氏が壇上に登場。「日本と日本の文化にEVOを持ってくることができたのを嬉しく思っています。EVOは格闘ゲームのお祭りみたいなものなのでみなさんに楽しく参加してもらえることを望んでいます」とジョーイ氏は話し、一方のマーク氏からは「ここ何年も日本のプレイヤーにはEVOに参加するためだけにラスベガスに来ていただいてます。格闘ゲームのコミュニティが作り上げたエナジーと情熱を日本でも同じように作りたいと思っています。各社のお力をいただきながら歴史に残るイベントになると確信しています」とそれぞれコメント。

ジョーイ"ミスターウィザード"クエイラー氏(右)とマーク"マークマン"フリオ氏(左)
ジョーイ”ミスターウィザード”クエイラー氏(右)とマーク”マークマン”フリオ氏(左)

特にジョーイ氏は20年前に新宿で目の当たりにした対戦格闘ゲーム大会を見たことをきっかけに「EVO」を開催し、対戦格闘ゲーム発祥の地である日本でもなんとか開催したいという夢を持ち続けていたという。しかし、本人たちの熱意や思いだけでは「EVO Japan」の開催までには至ることはできないだろう。そこで名乗りを上げたのは日本の会社であることが今回のプレス発表会で明らかになった。

 

なぜいま日本で開催することになったのか?

「EVO Japan」の実行委員会には、ゲームメディア「4Gamer」を運営するAetas株式会社と、その親会社である株式会社ハーツユナイテッドグループ、そして松竹ブロードキャスティング株式会社の三社から連なっている。以下、各社の担当者によるコメントを掲載。

岡田和久氏(EVO Japan実行委員会/Aetes株式会社 代表取締役社長兼4Gamer編集部 編集長):
「メディアとして長年追いかけてきたEVOというビッグイベントが日本で開催されるだけではなく、自分が関わることになるとは夢にも思っていませんでした。EVOはゲーム大会といっても予選があるわけではなく、ウメハラやジャスティンといったトッププレイヤーと一般プレイヤーが同じ所に集まってフラットな環境でガチ対戦できるのが特徴です。また、参加選手、観客、ネット配信でのリスナーの数字を見ると世界のゲームプレイヤー全体に支持されている大会です。対戦格闘ゲームというジャンルは日本発祥とはいえども、EVOのような大会やイベントをについては世界が一歩抜きん出ています。”4Gamer“としてEVOを招致することで格ゲーシーンだけではなくゲーム業界全体に盛り上がりのフックになればいいなと思っています」
松本壮志氏(EVO Japan実行委員会/株式会社ハーツユナイテッドグループ 取締役 COO):
「当社は主にゲーム分野においてデバッグ、テスティングをしており、三千から四千人のデバッガーがおります。ゲームに対しての思いが強く、日本のゲームを愛するプレイヤーの創意が詰まっています。また、4Gamerを通じてEVOを普及させることができると思っておりますし、日本の大会の成功を祈っています」
井田寛氏(EVO Japan実行委員会/松竹ブロードキャスティング株式会社 代表取締役社長):
「弊社は衛星放送やVODサービス、オリジナル映画の制作や配給、監督によるワークショップ、落語会などを展開しております。私たちのミッションとしてはEVO Japanを成功に導くことです。まずはひとりでも多くの方々にEVO Japanを知ってもらう、見てもらう、楽しんでもらう……そのためには放送、配信を中心にあらゆるメディアを駆使して届けることが重要です。国内だけにとどまらず世界に対してもEVO Japanを発信していきたいと思っている日本においてはゲーム大会というとコアユーザーのためど思われているが、EVO Japanを日本のエンターテイメントイベントに確立しながら少しでも多くの人に楽しんでいただき、業界の活性化、裾野の広がりになれば幸いです。成功に向けて全力で尽力していきます」
岡崎哲也氏(松竹株式会社 常務取締役):
「近ごろではe-sportsなどでも目にするようになったこともあり、EVO Japanの開催をとても楽しみにしています。EVOは20年にわたって対戦格闘ゲームを進化、発展させたことで世界的なイベントに仕上げられました。プレイヤーの神がかったテクニック、真剣な眼差し、オーディエンスの熱狂……ラスベガスがいかにエキサイティングな街であるかという様相を呈しています。松竹グループは全力を上げてEVO Japanに協力いたします」

つまりAetas株式会社と株式会社ハーツユナイテッドグループが「4Gamer」でこれまでに敢行した取材を通じて「EVO」を誘致したという経緯である。ジョーイ氏とマーク氏にとってはまさに念願叶った瞬間でもあるといえるだろう。

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【UPDATE 2016/9/16 22:45】 記事初版にてハーツユナイテッドグループ松本壮志氏の役職を「取締役CEO」と記載しておりましたが、正しくは「取締役COO」でした。訂正しお詫び申し上げます。

Takuya Kudo
Takuya Kudo

1989年生まれ。UNDERSELL ltd.所属。ビデオゲームとピンボールをこよなく愛するゲームライター。新旧問わない温故知新のゲーム精神をモットーに、時代によって変化していくゲームセンターの「いま」を見つめています。

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